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沖縄県立芸大が"新『魔笛』"に挑戦
小池教授の構成・演出は「沖縄」と重なる

=11月23日、沖縄市民会館で上演=





沖縄県立芸術大学音楽学部開設10周年を記念したモーツァルト作曲のオペラ『魔笛』が11月23日午後6時から沖縄市民会館で上演される。県立芸大のオペラ公演は96年に初めて『フィガロの結婚』を上演し、98年9月にこれをキプロス共和国で上演したのに次ぐもので、作品としては2作目になる。

しかし、今回の『魔笛』は基本はモーツァルトの原作によるものの、構成・演出を担当する 小池哲央教授の独創的なイメージが随所に散りばめられているという。たとえば、歌唱部分はドイツ語で演じられるが、台詞はウチナーグチ(沖縄の言葉・方言)の語りを中心に展開、 黒子としてマイムやモダンダンスの踊り手が登場したり、最近ヨーロッパで使われ始めている大型の最新映像投影装置を駆使した壮大なスケールと斬新な舞台作りはかつてない『魔笛』になると期待されており、いわば"新『魔笛』"は恐らく内外に大きな反響をよびそうだ。

約1年にわたって想を練ってきた小池教授は「オペラ『魔笛』の世界は宇宙の神話を使って生物の始源や人間の二面性などを暗示する。それはまた善と悪、光と闇という対比で考えられ、究極的には人間の理想像を問いたい。これらのテーマは基地問題や環境汚染問題で揺れる現在の沖縄と、 ニライカナイ思想に代表される未来の沖縄のイメージにも重なる。成功させたい」と意気込んでいる

スタッフ陣もユニークだ。指揮は前回の『フィガロ』も振った 大勝秀也。現在、スウェ−デンの第2の都市・マルメの市立歌劇場とキプロスのオペラソサエティーの音楽監督を務め、益々磨きがかかってきたという評価をとくにヨーロッパで得ている。舞台美術も、海外で高く評価されている小林優仁が巨大な宇宙樹であり、 子宮をイメージさせるセットを配し、大型映像装置を駆使してファンタスティックな空間を作り上げる。 もう一つ注目されるのは衣装デザインに首里高校2年生の 小池沙弥花を起用したことだ。コンピュータグラフィックの世界でその異才ぶりが注視されているセンスが新解釈の『魔笛』にどうマッチするのか興味深い。琉装も起用されているという。

キャストは、主役の一人・ザラストロ(高僧。小池演出では宇宙科学者=バス)を同学部助手の大城治、夜の女王(ソプラノ)を大学院生の桑原律子、パミーナ(夜の女王の娘=ソプラノ)を大学4年生の柳原由香、タミーノ(王子=テノール)を大学院生の古橋郷平、パパゲーノ(鳥刺し。小池演出ではヤンバルクイナ=バリトン)を卒業生の前川佳央、パパゲーナ(パパゲーノの恋人=ソプラノ)を研究生の平館直子が演じる。さらにどのように融合するのか興味深いのが沖縄芝居40年のキャリアをもつ役者・北村三郎が狂言回し的な語り役で出演する点。 ラジオで「ウチナーグチで聞く名作」シリーズなどに取り組んでいる蓄積された味が『魔笛』とどうなるのかきわめて興味しんしんだ。オペラの展開という点ではこれがカギを握るといえそうだ。 これらソロのほか、芸大オーケストラ、同合唱団、一般公募で構成した魔笛合唱団など160人以上のキャストになる。




《ミニルポ・練習を見る》

テンション上げる演出の小池教授

本番まで3週間あまりに迫った11月1日、練習風景を見る機会を得た。この日の練習は、各パートに分かれての練習だが、午後2時半から7時半までの5時間、小休止をとりながらもぶっ続けの練習は、演出者−出演者がかもし出す緊張感を漂わせていた。 なかでも、疲れぎみの?出演者を鼓舞するためか小池教授のテンションは上がり放しで、時には脚本を朗読し、時には歌い、自ら動きを示したり、オペラの演出とはかくありなんという感じであった

子役へ演技指導をする小池教授(左端)
そういう中で、出色だったのは二人の子役(劇中では童子役)への演技付け。小学校3年生と2年生の2人の女の子は学校を終えてた後の練習とあって多少疲れぎみ? なかなか集中できない。それをなだめすかして同じ目線での指導は、日頃、怒鳴り放しの小池レッスンとは打って変わって、猫なで声を出したり、あたかも孫に接している感じの演技指導はほほえましささえ感じさせた。

練習終了後、小池教授は「キャスト、スタッフの総力でようやく70%くらいのところまでこぎつけた。あと3週間という時間は必ずしも十分ではないが、かならずや感動を与えられるものに仕上げたい。多くの人々に見ていただきたい」と語った。


【誉 礼】





〈公演メモ〉

  • 主  催:沖縄県立芸術大学オペラ実行委員会
  • 共  催:沖縄市、琉球放送、沖縄タイムス
  • 特別協賛:りゅうぎんふれあいコンサートプレゼンツ
  • 協  力:日本航空
  • 公演期日:2000年11月23日(木)17:00開場、18:00開演
  • 会  場:沖縄市民会館大ホール
  • 入場料 :一般3800円、学生3000円(当日は500円増し)
  • 事務局 :実行委員会(п@098−882−5058  Fax 098−882−5033)
  • プレイガイド:リウボウ、沖縄三越などで前売り中



〈鑑賞メモ〉

● オペラ『魔笛』
モーツァルト35年の生涯の最終年にあたる1791年の作品。善と悪、昼=知の世界と、夜=情の世界の二つの対立する世界をクリストフ・M・ヴィーラントの童話『ルル、あるいは魔笛』をもとに展開させていく、不思議な魅力で鑑賞者をファンタスティックな世界へ導いていく。

台本は劇場支配人のE・シカネーダで、当時モーツァルトとシカネーダが加わっていた秘密結社フリーメイスンの理念や儀式等をストーリーに織り込んでいると言われる。 フリーメイスンは、18世紀のヨーロッパに広く活動を展開した秘密結社で、密教的な要素を持ち、自由・平等・博愛をモットーにした。

この年、いくつかの仕事をかかえていたモーツァルトが『魔笛』を完成させたのは上演の2日前だったとか。

目まぐるしい場面転換と、不可思議な人物が多数登場するが、復讐に燃える夜の女王のアリアは有名。登場人物のうち強いのは夜の女王と3人の侍女で、男はみな弱い。この頃、男は優雅で弱かったのではないか? なにやら、いまの世情と似通っているのではと言う見方もある。さらに、沖縄と似ているというがった?見方もある。




● ストーリー
夜を支配する夜の女王は、王子タミーノに娘パミーナが昼の国の悪人ザラストロに幽閉されているので助けてと懇願する。タミーノはザラストロの城に乗り込んで行くがザラストロは悪人ではなく、仁徳高い高僧であることを知る。パミーナとタミーノは愛し合うが、二人が結ばれるためには、試練を受けなければならぬと、ザラストロに宣告され、二人は苦しい試練を乗り越える。

一方、タミーノについてきたパパゲーノも、めでたくパパゲーナという伴侶を得る。夜の女王と3人の侍女、パミーナに言い寄った悪人のモノスタートスの5人が復讐にくるが、雷鳴閃光とともに一行は地獄に落ち、あたりは明るくなる。ザラストロの光明の徳をたたえる合唱のうちに幕が下りる。

【この項、発表資料より】