G8環境サミット開催中の4月8日、ロシアを除く7カ国およびECの政策担当者と環境問題に取り組むNGO5団体代表による懇談会が大津市の琵琶湖ホテルで開かれた。柳本卓治環境総務政務次官のホスト、一方井誠二環境庁企画課長の進行により、約1時間半にわたって行われたこの懇談会にはG8側から13名、NG0側から海外から参加した2名を含む15名が出席した。国内でNGO関係者が各国政府と公式に意見交換したのは初めて。
懇談会における各発言の要旨は次の通り。
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【主催者】
▼NGOとの協力なしに環境問題論じられない
〈柳本卓治/環境総括政務次官〉
- 21世紀を展望しつつ環境問題を論じる場合、NGOの活動に期待するところ大だ。
NGOとともに歩むことが環境問題を前進させる決め手とも考える。その意味でもきょうのこの会合は意義深い。
- 各国の環境大臣もNGOと協力する意義については深く認識している。積極的な議論を期待したい。
【NGO側コメント@】
▼2001年に国際ワークショップ開催したい
〈森脇君雄/(財)公害地域再生センター理事長〉
- 環境の再生は市民の力だけでも、行政や企業だけでも成功しない。三者が同じ方向で力を出し合わないといけない。
- 地球環境問題はどこか遠くの場所で起きているのではない。世界各地の経験や教訓をお互いに学び合うことが大切で、明2001年に国際ワークショップをやろうと呼びかけたい。
▼21世紀は「水」問題が最重要課題になる
〈藤井絢子/滋賀県環境生活協同組合理事長〉
- ここ琵琶湖では1977年に赤潮が発生したのを契機に、我々NGOが環境再生のために、合成洗剤に代わる石鹸の使用、廃食油の回収、再生可能なエネルギー、化石燃料代替のバイオディーゼルフュエルの展開など様々な活動を行政に依存しないで展開してきた。
- 21世紀は水問題が食糧問題以上に人類の最重要問題になろう。G8環境大臣会合でもこのことが共通認識になることを願っている。とくにアジアや開発途上国の水問題は深刻だ。G8と行政、NGO、企業が連携して解決の道を探りたい。
【G8側コメント@】
▼目的は共有。京都議定書2002年には発効すべき
〈K.ザッハ/ドイツ環境・自然保護・原子力安全省国際協力・地球条約・気候変動課長〉
- ドイツ政府のNGOに対する関心は大だ。良く認識し、キーパートナーと位置付けている。
- 湖についてはドイツにも良い手本がある。周辺の全地域住民と国民−政府が一緒に問題を考え、対応している。
- 気候変動の目的は共有している。2002年に発効すべきだ。国内対策を事前に示すべきだと考えている。
- COP6には様々なメカニズム作りとそれを遵守することが必要で、NGOに評価してほしい。
▼再生可能なエネルギー問題を重要視したい
〈F.スルメス/EC環境総局国際局長〉
- 早く議定書を批准すべきで、それに全力を傾けたいと考えている。それには各国が自国内でクリアーする努力が必要だ。
- 再生可能なエネルギーが重要だ。発展途上国も先進国も経済成長=汚染はいけない。
- 今後はありとあらゆるレベルで話し合う必要がある。
▼広域化している大気汚染に新たな形の国際協力が必要
〈W.ニッツア/アメリカ環境保護庁長官室気候変動政策担当特別アドバイザー〉
- アメリカではNGOのプレッシャーがあってEPAが生まれたようなものだ。環境面での情報は非常に重要だ。環境団体が様々に活用している。
- アメリカでは"ブライン・フィールス"というインセンティブを与えて汚染した地域の再生を図る手立てを講じているが、これは日本の方が先に進んでいる。
- 問題意識としては、子供たちの死亡率の最大要因が水の汚染にある点が目先の最重要課題と考えている。とくにアメリカ、カナダの五大湖周辺やメキシコなど広域にわたるPOPs(残留性有機汚染物質)や重金属などによる大気汚染が水質汚濁の最重要な発生源になっており、新しい形の国際協力が必要と考える。
- 気候変動についてはCOP3を発効させたいが、議会との政治的問題を抱えていることも事実だ。その意味ではNGOに強く働きかけて欲しい。NGOは国内対策のための政治的役割を果たすと言えよう。
- 燃料電池問題の開発・実用化も電力発電の面でメリットが大きいと考える。
【NGO側コメントA】
▼和解金を環境再生に役立てたいという動き出てきている
〈宗田好史/(財)公害地域再生センター専門委員〉
- 各地で公害訴訟が争われ、裁判の結果、和解金が支払われはじめている。
そういう中で、患者たちは「金よりも、失われた自然を取り戻したい」と、和解金を公害で疲弊した地域の再生のために使おうという動きになっている。
- 実際に公害患者とともに、そのような活動をはじめてみると、患者たちは公害で
苦しめられてきた体験をもっているから、環境の変化に敏感な弱い立場の草花や虫たちをいとおしむ
気持ちが強いことに気がついた。私たちは、公害患者たちの目線から学びつつある。
地域の中の小さな自然を発見し、活動を通じて育てていきたい。このような活動には、
かつて争った企業も協力してきているが、政府や行政にはない可能性を 秘めていると自負している。そういう点では欧米の皆さんの方が経験豊富なので教えて欲しい。
- 激しい公害病はおさまったが、小児ぜんそくやアトピーなどが目立って増えている。環境と健康は重大なテーマであり、長いスパンで取り組む必要がある。
▼水俣病患者として2度と繰り返さないよう世界に語り継ぎたい
〈橋口三郎/全国公害被害者総行動実行委員会代表委員・水俣病被害者全国連絡会幹事長〉
- 私は水俣病患者だが、96年5月に和解が成立して事件は解決したというものの、患者達の病気は一生治らない。
- 水俣病の発生時、市民と患者、企業の従業員は分裂し、大変な状況になった。しかし、今は一緒になって、水俣を再生しようと立ち上がっている。具体的には、水俣ではごみを21に分別している。また"もやい直し"といって患者と市民が一体になって水俣の再生に取り組んでいる。
- 私は、語り部として小学生以上に水俣病の悲惨さや色々なことを語っている。2度とこういう公害が起こらないように語り続けて行きたい。この病気のことを世界の人々に知っていただいて、このようなことを繰り返さないように呼びかけていきたい。
【G8側コメントA】
▼旧ソ連やドナウ河流域など汚染状況はドラスティックだ
〈V.アストラルディ/イタリア外務省G8サブシェルパ〉
- 私は毒性の専門家だが、いま先進国が置かれている状況を見ると、汚染は日々進んでおり、このままでは持続可能ではなくなる。
- 先進国だけでなく、旧ソ連の様々な地域でも見られるが、環境へのリスクの地図を見ると、
旧東欧や途上国の方が大きな問題が出ている。ドナウ河流域もドラスティックな状況だ。
- G8のこの会合はコミュニケは採択されようが妥協の産物となろう。イタリアは100点満点にはいかないだろうが、なんとかコミュニケはまとめたいと考えている。議定書の批准も必要だし、WTOのあり方のルールをどう変えていくかということも課題だ。
- いずれにしても、NGOの活動が力を与えてくれよう。誰しもが満足するということにはならないかもしれないが、プロセスはスタートする。
▼大規模水域の汚染に複数のセクターで対応
〈C.ホーガン/カナダ環境省国際関係部国際政策・協力課長〉
- カナダも五大湖で日本と同じような経験をしている。この10年以上、"エコシステム・イニシアティブ"という、複数のセクターが協力して大規模水域−五大湖やブリティッシュ・コロンビア州の西沿岸地区などでNGOとパートナーシップでやってきた。医療保健チームにも参加を求めており、ぜんそくなど弱い人への対応を図っている。
- 越境するPOPs問題はカナダにもあり、これらについてもNGOとともに対応している。
▼日本のNGOはもっと積極的に国際会議に参加を
〈S.マッケイブ/イギリス環境・運輸・地域省国際環境保護担当部長〉
- 日本のNGOはもっと積極的にこの種の国際会議や国連の他の会議などに参加すべきだ。それが他の地域との連携や輪を広げることにつながると思う。
- 我々の環境大臣は、努力していることをアッピールしてほしいと言っていた。
この問題は教育と啓蒙がなによりも大事だ。
- 「リオ+10」対応は、どの国も国家として持続可能な戦略を持つべきだし、また実行段階に入るべだと考える。色々難しい問題はあるが、2015年までに再生を目指したい。
- 持続可能な根拠やベースラインを打ち立てたい。21世紀は持続可能であると信じたい。
【NGO側コメントB】
▼COP6まで7ヵ月、日本政府の対応は遅い
〈浅岡美恵/気候ネットワーク代表〉
- 私たち日本の市民は京都議定書が将来世代にとって気候系を守るルールとして、1日も早く発効することを心から願っている。
- COP6まであと7ヵ月しかないのに、私たちから見れば日本政府はこれといった政策をとっていない。COP6を成功させるために、G8環境サミットで、それぞれの国内で批准に向けた排出削減と持続可能な発展に実効性のある対策をこれまで以上に確実に前進させることと、京都議定書を歴史的評価に耐えるものに完成させ、2002年には発効させるという強い政治的意思を確認し、交渉を加速することを期待している。
- ヨーロッパの人たちから見たら、日本の対応は遅れていると思う。プレッシャーをかけて欲しい。
▼NGOが支持するかどうかは共同声明にかかっている
〈J.モーガン/WWF(世界自然保護基金)気候変動政策担当〉
- より強力な議定書にしようとCOP6で決まると認識している。そして、我々NGOがサポートできるかどうかは明日の共同コミュニケで決まる。
- 地球温暖化や原子力発電などで抜け穴を残すな。
- COP6は迫っている。G8首脳の役割は極めて大事だ。
- アメリカ政府は産業界のコンセンサスが厳しいと言っているようだが、貴国の企業の中にもコミットするところが出てきている。現に、来るアースデイに数百万ドルの基金が提供されようとしているではないか。
▼NGOに耳を貸すのでなく、環境に耳を貸せ
〈S.フェラー/CAN(気候変動ネットワーク)東南アジアコーディネーター〉
- 以前は、環境問題は貧困問題と比例していたが、今はむだの多い消費と比例している。
- 強調したいことは、NGOに耳を貸すのではなく環境に耳を貸せということだ。
▼環境問題と労働組合は今や密接不離の関係にある
〈丸山建蔵/PSI日本加盟組合協議会(PSI−JC)運営委員〉
- 地球環境問題の改善はなんといっても先進国がイニシアティブをもっている。そのことをまず重ねて強調したい。
- 環境問題は技術革新や雇用問題などで今や労働組合と密接な関係にある。とりわけ、水管理や処理・供給、廃棄物の処分等で市場化が進んでいて、国や公共団体から取り外してしまうという状況が生じつつある。これでは清潔な水を商業化の下に汚染してしまうという危機意識をもっている。
▼議定書を生んだ地元として早期の発効を望む
〈戸田雄一郎/京都府企画環境部政策監〉
- 京都府と市を代表してこの場に出られたことに感謝する。
- 京都議定書は地球温暖化という人類最大の課題について、世界中の人たちの熱い思いと願いの中で、人類が知恵と勇気を結集した歴史的なものだと認識している。そして、議定書の発効は人類の、とりわけ子供たちの未来を約束する第一歩と考える。その議定書を生み出した京都は、議定書の発効をいまかいまかと期待している。
- G8のリーダーシップと見識に心から期待していることを申し上げたい。
【G8側コメントB】
▼議定書は整合性と分かりやすさが必要だ
〈F.スルメス/EC環境総局国際局長〉
- 環境ホルモン問題も健康というテーマから避けられないことだ。
- 「気候」という日本語は、我々にとって重要な言葉となった(笑い)。WWF代表のコメントにもあったが、中味のある議定書には整合性が大切だ。この問題の真の解決は信頼性を確保した議定書であり、途上国にも理解が得られるものでなければならない。そのためには、貧困との関係は認識する必要がある。気候変動と貧困は重要なキーワードだ。
- NGOは単なる環境保護団体ではない。そして、勢いを失って欲しくない。それによって議定書は批准できなくなる可能性もある。
- 我々は明らかにスピードアップが必要であり、また産業界は明確なルールを求めている。そして、ルールの中味が全員に分かりやすく、批准しやすいものである必要がある。
▼批准を議会に提案した。他の国々も見習って欲しい
〈J.P.アルベルティニ/フランス国土開発・環境大臣外交アドバイザー〉
- フランスもNGOとの協力は大事であり、不可欠だと思っている。国際会議でも必ずNGOと協力しており、NGOとの良好な関係はフランス政府の方針であり、義務だ。とくに、昨年11月から12月にかけてのシアトルでのWTOではNGOの意見を聞くことの大事さを経験した。
- 「リオ+10」について触れたい。NGOおよび市民社会全体との協力は不可欠だ。しかも「北」の人たちだけでなく、「南」の人たちとのコミニュケーションが大切だ。
- 気候変動について我々の最新のニュースは、2日前に批准の法案を国会に提出した。これは非常に重要なことだ。他の国々も見習って欲しい。できるだけ早期に発効させてほしい。
- COP6ではみなで決意を示そう。そして、途上国にも呼びかけよう。
【NGO側コメントC】
▼途上国の同じ失敗を防ぐのは先進国の責任だ
〈太田映知/全国公害患者の会連合会事務局長〉
- 日本において公害被害者が多数発生したのは、開発政策の失敗と公害対策の不十分さと考える。
我々は、この25年政府や産業界に公害の根絶と被害者の救済を求めて行動し、一定前進してきた。
- これからの課題は、破壊された環境の再生と復元を図ることだ。とくに途上国では同じ失敗を
繰り返そうとしており、この責任の大部分は先進国にある。
- 昨年、私たちの代表はイタリアのラベンナを視察し、環境再生に成功しつつあることを確認したが、
同時に公害が対岸のアフリカ大陸に移転していることも聞いた。このような例は日本初め他の先進国に
も共通している。先進国からの直接投資などを環境面からキチンとチェックする体制をG8として整備する必要があると思うがどうか。
▼返還された基地跡地の汚染が強く懸念される
〈宇井純/沖縄環境ネットワーク世話人〉
- 今、最大の問題は環境問題だ。小さな島に大き過ぎる基地が存在している。その不平を抑えるために、日本政府は巨額の公共投資を行っている。しかし、そうして行われる公共投資が益々環境を破壊するという悪循環を繰り返している。
- 沖縄においては一部の基地が返還されることになっているが、すでに返還されている基地からはPCBとかカドミウムなどの有害物質が発見されている。すでに、冷戦が集結した後に同じような経験をもっているロシアやECの方々に伺いたい。返還された基地跡地にはどのような汚染があったのか、そしてそれらを解決する手段としてどのようなことが行われたのかを。
- ご承知のように、7月には沖縄でサミットが開催される。多くの人たちが沖縄にこられれるので、そこでも議論したいと考えている。
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▼懇談会を傍聴して―
残念だった"時間切れ"。聞きたかったG8側の生の反応
国際会議、それもG8というレベルのものだけに"分刻み"で進められることは仕方がない。しかも前の会議が長引き、押していただけにさらに厳しい進行をしなければならなかったのは理解できる。この種の国際会議では、異例に近い食事中もスピーチは行われたのだから…。
このような限られた条件は100%容認しても、最後の幕切れが残念だった。NGO側の最後の2代表が重要なポイントをG8側にぶつけ、直接意見を聞きたいと問いかけたが、間髪を入れずホストの閉会の言葉に切り換えてしまった。
終了後の記者会見での「良い前例になった」(宇井純先/沖縄環境ネットワーク世話人)というコメントに代表されるように、初めて実現したケースであり、準備を進めてきた関係者にとっては「感慨深いものがあった」(森脇君雄/あおずら財団理事長、藤井絢子/滋賀県環境生活協同組合理事長)という思いは理解できるものの、せっかくやったのだから、相手側の生のコメントをもっと聞きたかった―という思うのは欲張りすぎだろうか。
とはいえ、欧米に比べ発展途上にあるわが国のNGO活動であるだけに、今回の"実績"はこれからの本格的なNGO活動の出発との位置付けはあながち大げさな表現ではないだろう。要はこの種の積み重ねを今回の5団体だけでなく、全国津々浦々のNGOやNPOが継続していくことと、イギリス代表がいみじくも指摘したように、海外へより積極的に出て行くことを心がけていけば"経済(援助)だけの日本"のイメージを少しでも払拭できるのではないだろうか。
NGO活動およびNGOとの接触に慣れている欧米側の反応を冷静に見ると、「日本のNGOよもっと頑張れ」というエールが聞えてくる会議でもあった。
【司 加人】
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