第19回日本環境会議(JEC)が東京で3月31日、川崎で4月1日開催された。
今回は「環境破壊から環境再生の世紀めざして」の全体テーマのもと、第1日目は東京・虎の門の虎ノ門パストラルでJEC20周年シンポジウムが行われ、淡路剛久・立教大学教授の「20世紀から21世紀へ−環境権の思想と展望」と題する基調講演、Kim Jung・ソウル大学環境大学院教授の「持続可能な発展のための科学の責任と課題」と題するゲスト講演に続き、寺西俊一・一橋大学教授をコーディネーターに植田和弘・京都大学教授ら5人のパネリストによるパネル討論「21世紀の環境問題をめぐって」が行われた。
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第2日目は川崎市の川崎市立労働会館で二つの分科会に分かれて報告や討議が行われた。
第1分科会は「人権・環境・福祉のまちづくり−破壊から再生の世紀へ−」をテーマに、中村剛治郎・横浜国立大学教授と塩崎賢明・神戸大学教授を座長に、寺西俊一・一橋大学教授が基調報告を行い、続いて@水俣(水俣市・吉本哲裕氏)A神通川流域(イタイイタイ病弁護団・山本直俊氏)B西淀川(あおぞら財団・傘木宏夫氏)C川崎(法政大学・永井進氏)D嘉手納(嘉手納爆音訴訟関係団体)Eまちづくり新時代(東京大学・西村幸夫氏)の6地区の代表による各地報告が行われ、宮本憲一・立命館大学教授がまとめを行った。
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第2分科会は「ダムと公共事業−建設から廃止の世紀へ−」をテーマに、宇井純・沖縄大学教授と山田明・名古屋市立大学教授を座長に、岡本雅美・日本大学教授が基調報告し、韓国を含む内外各地区の代表が各地報告を行った後、緊急報告として「吉野川第一堰」について姫野雅義・第十堰住民投票の会代表世話人が近況報告し、「三番瀬を中心に」と題して岩垂寿喜男・元環境庁長官が特別報告を行い、宇井純氏がそれまでの総括を行い、最後に礒野弥生・東京経済大学教授がまとめを行った。
第2分科会の報告をダイジェストする。
〈基調報告〉
▼ 水の需要量の伸び止まりをダム推進者は知らない?
岡本雅美氏(日本大学生物資源学部)
- "森林あればダム不要"はあり得ない。両者は相互補完物だ。
- オイルショック以降、水の需要増は止まった。そのことをダムを造りたい人は分かっていないのではないか。
- 利水の面から言えば「ダムは無駄とは言わないが、便益と引き合わない」ことは事実だ。いまや「ダムを造らないで、どうするか」の考え方に変わってきた。
〈各地報告〉
▼いまや"むだなダム"に多額の税金使うべきではない
思川開発:藤原 進氏(思川開発事業を考える流域の会)
- 思川ダム計画は36年前の1964年に栃木県が計画した。地元は当初、絶対反対してきたが、30年たって運動に疲れ、6年前に絶対反対の旗を降ろし、補償交渉に入り、少しずつ動き出している。
- 基本構想が発表された1964年頃は首都圏の水需要の増加に対応するというもので、総額も209億円だった。しかし、94年に事業目的も投資額も大幅変更され、総事業費は2520億円といわれ、完成までには借入金の利子などを含めて5000億円を超すものと見られるに至っている。
- 水没予定地はこの36年間ダム計画に振り回され、人間関係も壊れ、子供達は将来に見切りをつけて家を出て行き、過疎化に拍車がかかっている。
- 明らかに不要のダムになっている。そういうものにこの財政難の折に多額の税金を使うことは許せない。今後も反対運動を支援して行きたい。
▼もはや不要な計画。水没予定地の住民の損失を公的に負担すべきだ
八ッ場ダム:島津暉之氏(東京の水を考える会)
- 建設に毎年大きな予算が組まれ、工事専用道路などの関連事業が着々進められているが、この計画には多くの問題点がある。生活破壊、自然破壊、水質悪化、土砂堆積、過大な開発水量などだ。
- 計画上の最大の受水者は東京都であったが、都の水道用水は71年から横ばいとなっており、最近は減少傾向を示している。
- 完成予定年度は2006年だが、遅れるのはよくあることでかりに2010年度としても首都圏の水需要のピークは2010年であり、ピークが過ぎた頃に完成してどれほどの意味があるのだろうか。
- このダムは利水・治水両面で必要性が希薄だ。その上、財政負担もきわめて大きい。都は1000億円を超える負担を強いられる。そういう計画には都民としても反対する必要がある。返上運動を進め、水没予定地の人たちが受けた経済的・精神的損失を国や都道府県が負担すべきだ。
▼ダム計画の代案として"遊水池まるごと博物館"構想進めたい
渡良瀬遊水池:高松健比古氏(渡良瀬川流域住民協議会)
- 渡良瀬遊水池は関東地方北部、栃木県足尾の山地を水源とする渡良瀬川が利根川に合流する直前に位置し、4県2市4町にまたがる広さ3300ヘクタールの日本最大の遊水地。人は住んではいないが、昔、田中正造が鉱毒問題で闘った歴史的な地であり、全国第2位のヨシ原だ。
- 明治時代以来、延々と大規模な公共事業が行われてきたためもあって"開発"という言葉には慣れてしまっている。しかし、栄養塩類を多量に含むため貯水すると藻類が異常増殖し、水質が悪化することは自明の理。現に、87年に完成した第一貯水池の水は、90年夏の利根川渇水の時に"応援放流"され利根川経由で江戸川に流入し、埼玉・千葉・東京東部の水道水を猛烈にかび臭くし、苦情が発生した。以後この貯水池の水は他のダムの水不足の時に使えなくなった"実績"をもっている。
- そして浮上してきたのが第ニ貯水池構想だが、自然破壊も著しく、強い反対運動もあって、建設省は97年2月に計画の中断を正式決定し、現在に至っている。一時的にせよこの種の大規模公共計画が中断した数少ないケースだ。
- 住民協議会は、将来ともダムを建設させないために、その代案として、遊水池まるごと博物館構想である"エコミュージアム・プラン"を提示し、実現へ向けて動いている。
▼完成してしまったが、二重投資・自然破壊は明らか
相模大堰・宮が瀬ダム:氏家雅仁氏(相模川キャンプインシンポジウム)
- 相模大堰という巨大な公共事業は98年に暫定的な給水を開始したが、これにより既存の施設が遊休化してしまうという、まさに二重投資の典型で、建設費用は4610億円、上流の宮が瀬ダムと合わせると8580億円という巨額になり、このほとんどは国の補助金と企業団の発行する債権でまかない、そのつけは納税者、水道利用者に押し付けられる。
- 一方、建設された場所の自然が大きく失われ、中には絶滅種も含まれている。これはもはや取り返しがつかない。
- すでにできてしまったが、このような例は今後全国的に繰り返される危険性がある。他人ごとと思わないでほしい。また、具体的にはどちらか1ヵ所は予備とし、普段は開けておくことを提唱している。
▼ 建設の大義名分ことごとく失われる
川辺川ダム:森 徳和氏(川辺川利水事業反対訴訟弁護団)
- 五木村の43%が湖底になる川辺川ダム計画は、洪水調整・流水の正常な機能の維持・かんがい・発電とされているが、ダム本来の目的としては洪水調整とかんがいにある。
- しかし、この2点とも、建設省自身が想定流水量を見直したり、かんがい計画を変更したりして、当初計画の根拠の薄さを示しており、大義名分を失っている。
- その上、熊本県も平成12年度以降、財政再建団体に転落する見通しで、そういう状況下でのダム建設は本体工事の1歩手前にあるが、抜本的な見直しこそ大事なことを訴えたい。
▼初の計画中止だが、多分に選挙対策。今後も注視する
韓国・東江ダム:李 時載氏(韓国カトリック大学)
- 東江(トンガン)ダムは、ソウルから20キロ上流の南漢江に造ろうとした計画で、総貯水量は7億トン、水没面積は約22万平方キロ、水没世帯は500、総設備費は約1000億円である。
- 90年に洪水に見舞われたことで、時の盧泰愚大統領が建設を約束した。97年10月に建設計画が正式発表されたが、その年末から環境運動団体が反対運動を展開し、地域住民や関連地域の知事、マスコミ、学者などに反対の輪が広がった。
とくに観光地的になり、多くの人たちが現地を訪れ、川の汚染や自然破壊などの認識が浸透したことと、マスコミが特集することで全国的に反対ムードが広まった。
- その結果、政府は最終決定を2000年1月まで延期することにし、このほどついに中止を決めた。韓国においてこのように政府計画が挫折したのは初めてのことだ。
- この中止は韓国にとって画期的なことだが、実は政府が本当に環境のことを考えて中止にしたとは考えにくい。もっぱら選挙を控えた政治的配慮と言えよう。そういう意味で、この中止を手放しで喜ぶのでなく、今後を注視していく必要があると思っている。
〈緊急報告〉
▼ 徳島市の例が全国的な公共事業見直し機運につながる期待
吉野川第十堰:姫野雅義氏(第十堰住民投票の会代表世話人)
- 98年7月にダム審議会は「可動堰の建設計画は妥当である」との結論を出し、その後11月頃から住民運動が高まった。
- 住民運動というのは、地方自治法に基づいて行うが、実はやっかいなもので、もっとも注力した点は徳島市民27万人のうち21万人の有権者の多くがどうすれば住民投票に動くかということだった。市議会の定数は40なので、その過半の21の議員の賛成が必要で、それには3分の1以上の署名が必要となるので署名集めをする人は5000人いると想定した。
- そして、熱心な団体や政党ではダメで、いままでやらなかった人や若い人・主婦・よく分からない人たちに「いまが自分たちの故郷の将来を決めるチャンスだ」と呼びかけた。9月20日に手弁当の住民投票の会を作った。1500人が参加してくれた。有権者登録とか、必ず自筆で捺印が必要なので、手間はかかったが、じょじょに輪は広がった。
- そして議会は22対16で条例を否決し、住民投票は1月23日と決まった。しかし、投票率が50%を超えなければ開票もしないという前代未聞の条件だった。与党や体制側は棄権をPRした。そこで、選挙管理員会に代って投票をしましょうという運動をした。
- 幸い、投票率も賛成票もクリアーしたが、この1年半を省みると、市民の間に市民運動が評価されたことが大きいのではないかと思っている。そして、徳島の例が今後、公共事業の見直しのきっかけになることを期待している。
〈特別報告〉
▼ 東京湾のラムサール化や"リオ+10"の日本開催進めたい
三番瀬を中心に:岩垂寿喜男氏(元環境庁長官)
- 長官時代に三番瀬の埋立て計画に反対し、それがいま(の環境庁に)も引き継がれていることを喜ばしく思っている。
- 千葉県側は計画の縮小とか変更を示しているが、地下道はコストが高いので高架にしたいといってるが、実はコストはそう変わらないことが分かった。
- 東京湾全般を守る見地から、ラムサール条約の指定を目指したいと考えている。
- 愛知万博の敷地問題にも関わっているが、近々住宅・道路計画ともノーになりそうだ。
- 今後の提案としては、リオのサミットから10年、すなわち"リオ+10"をどこで開くかということで、私は中国が一押しだったが、それがダメならぜひ日本で開きたいと考えている。非常に大きな祭典だし、数万人が集まることから、東京・神奈川・千葉が一緒になって招致する必要がある。2002年はCOP3の条約化の年だし、条約発効の年・各国が批准する年にしたいものだ。
〈中間総括〉
▼より多い水が必要という議論や計画はまやかしだ
宇井純氏(沖縄大学教授)
- 今日の「水」問題は、島津氏の分析にある「水はあるだけ使って良い」が結論だ。明かに水は不足するという予測は変わっている、そういう視点で今後の水問題は考えるべきだ。
- 姫野報告を聞いて、昔の人の知恵ということにつくづく感心する。それは柔らかいものであり、自然に近いものだ。第十堰は壊れたら直せば良いのだ。なにも、巨額を投じてガチガチのもの、セメント詰めのものを造る必要はない。
- 昔の人といえば、田中正造の話が引用されたが、私は「帝国大学を出た学士どもは西欧の学問を知りもしないのに日本に当てはめて、我々を苦しめている」という彼の言葉を今噛み締めている。
- これからも下水道計画→水必要という議論が出てきたら、それはインチキ議論だから必ずあばく必要がある。
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〈まとめ〉
▼問題は"誰が決めるか"だ
礒野弥生氏(東京経済大学教授)
- 諸報告をまとめると、東京の水余りに代表されるように水事情が変わっていることと、自然保護への考え方が前面に出されてきたことが特徴的だ。
- そこで、21世紀に向けて考えるべき問題は山積しており、とりわけ公共事業に対する疑問が指摘されているが、問題は誰が、誰の手で決めて行くのかということではないか。これまでは行政が裁量権という名のもとに勝手に決めてきた。しかし、それで良いのか。仕組み作りが必要だ。確かに住民投票という手法もあるが、もっと真っ向から取り組むべきと考える。そのためには、情報がオープンにされることが肝要だ。
- それと同時に、中止された後のことも示されながらやっていくことが大切だ。立ち退
き対象の人がダム計画がなくなっても財政的にも精神的にもやっていけるような仕組
み作りと、自然の再生、どう自然と共生できるかがポイントだろう。
- 自然の丈に合わせた我々の生活設計が21世紀の環境作りではないだろうか。
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▼いま改めて問われる建設省の責任−第2分科会を傍聴して
各地の報告者の報告に誇張がないとすれば、公共事業の在り方は非常に問題だと言わざるを得ない。
とりわけ、建設省の責任は重い。一体、時代の流れというものをどう捉えているのだろうかと考えてしまう。
今回報告された国内のダム計画は揃って2、30年の年輪を刻んでいるにも関わらず、一部の手直しで"初志貫徹"しようとしている建設省という組織はある意味で恐ろしい。ますます住民・市民・NGOの動きは強く、かつ本質的なものになっていこう。それを助けているのが皮肉にも建設省と言って良い。国もほとんどの自治体も財政がパンクしつつある今日、早く抜本的に見直さないと、この国は大変になると身震いせざるを得ない、というのがこの日の感想であり、総括だ。
【司 加人】
▼環境権の確立、国際NGO目指すなどの20周年宣言を採決―全体会議
日本環境会議は4月1日、両分科会終了後の全体会議を開き、20周年宣言を採択した。要旨次の通り。
公害に対する闘いはますます強めなければならない。
環境破壊型開発のあり方をどう展観させるかが緊急の課題だ。
アジア各国・地域に日本の果たすべき責任の内容を明確にする必要がある。
日本は加害者・被害者構造に立つ加害者側の一部として、環境弱者に対する経済的な強者の立場に立つものとして、地球環境保全に積極的に取り組まなければならない。
―という認識を踏まえて次のことを提言する。
- 環境権の確立をはかるべきだ。
- 地方自治体は地域住民との協働のあり方を追求すべきだ。
- 国および自治体は環境再生のプランを作成し、実行する仕組みを住民参加のもとで構築すべきだ。
- アジア地域の環境NGO専門家のネットワークを適切な形で構築し、これを有効に使ってアジアの環境問題の解決に貢献すべきだ。日本環境会議も、将来的にはAPECなどの国際機関に政策提言できる国際NGOとなることを目指す。
*日本環境会議
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