swave logo (←home)
cover




元新潟水俣病訴訟弁護団長が30年を回想

坂東克彦弁護士、『新潟水俣病の三十年』を出版
次世代にさらなる「問い続け」を託して




『新潟水俣病の三十年』

著者・坂東克彦さんは弁護士。元新潟水俣病弁護団長と言ったほうがピンとくる向きが多いかも。 1959年、26歳で資格を取り、63年地元・新潟で開業して3年目の65年以来、新潟・熊本水俣病事件に関わり、以後、一貫して被害者の立場・目線で闘ってきた。 そして、82年から95年までは新潟の未認定水俣病患者のための第二次訴訟弁護団長を務めてきたが、被害者側や弁護団が「事件を和解によって決着しようとしていることに納得できず」、 95年11月弁護団長を辞任し、以来、関係を断っているという。そして、4年余の歳月が流れた今、ある意味で冷静になって、これまでの来し方を振り返って、 「何を見、何を考え、何をしたのか、そして、その結果がどうなったかを、21世紀に生きる人たちに伝えたい」との思いでこの回想をまとめたという。



著は「第一部 新潟水俣病の30年」と「第二部 忘れえぬ人びと」の二部で構成されており、巻末に水俣病事件略年表がつけられているが、―ある弁護士の回想―の副題が付けられているように、著者の事件を通しての回想と、人を通しての回想でまとめられている。弁護士になった理由からはじまって、新潟水俣病との関わり、様々な人たちとの出会いや交流などが、著者でなくては書けない臨場感を含めて連綿と記されており、全体の印象としては著者の熱血漢ぶりを知る人たちには"冷静な記述"という読後感が残るのではないだろうか。

そして、この著でもっとも印象的なのは第二部の宇井純、ユージン・スミスをはじめとする「忘れえぬ人びと」であろう。中でも、水俣病の発見者の細川一(はじめ)・元チッソ水俣工場附属病院長との関わりや信頼関係を描いた部分は、改めて細川一氏の人格を浮き彫りにしていて出色である。



著者と直接お目にかかったのは、さきに開かれた「第5回水俣病事件研究会」での場であった。ハイライトとなった宮澤信雄元NHKアナウンサーの「『水俣病に関する社会学的研究会報告書』の批判的検討」の直後のフリートーキングの中で、舌鋒鋭く、同報告書のあり方やメンバーに名を連ねた原田正純、富樫貞夫氏ら4人の研究会メンバーに迫った迫力は、弁護団活動から5年経ったとは思えない情熱を周囲にまざまざと感じさせるものがあった。今回まとめた回想は、"その1"として、それこそ年齢も67歳、まだまだ燃え尽き症候群には早い。著の前後で記しているように、次世代に生きる人たちに伝える仕事にさらなる情熱を燃やし続けてほしいと思うのは筆者ばかりではないであろう。                               

【司 加人】




*発行所:日本放送出版協会(NHK出版)
〒150−8081 東京都渋谷区宇田川町41−1 Tel 03−3780−3321
A−5版 220ページ 1600円(本体)