 |
|
「水俣フォーラム」の第21回水俣セミナーが1999年12月15日、東京・渋谷区の環境
パートナーシップオフィスで開かれた。この日の講師は谷洋一・アジアと水俣を結ぶ会事務局長、
演題は「アジアの環境汚染と水俣病」。谷氏は1984年に同会を、87年に「ベトナムに検診車を送る会」を、
91年に「リサイクルせっけん協会」を相次いで結成したり、これまで10数回に及ぶインド・ボパール事件の現地調査をはじめ、
水俣におけるアジア民衆環境会議の開催(1986年)、ベトナム・ドンタップ省の枯葉剤の被害調査など幅広い活動を行っている。
96年6月には水俣病を風化させないために、共同作業所「ほたるの家」も設立している。
約60人の聴衆が熱心に耳を傾けた。
|
◇
谷氏は講演の冒頭、この日大阪で行われた「水俣病関西訴訟」を傍聴してきた感想として「改めて(水俣病を)分かっていない専門家と関係者の無責任さと責任の重大さを痛感した」と指摘、これらはベトナム戦争に使われたダイオキシン−枯葉剤、インドのボパール事件にも共通すると述べた。
逃げ腰のUCC、インド最高裁は免責認めず
講演では、1984年12月2日に米ユニオン・カーバイド社(UCC)のボパール農薬工場から漏れたイソチアン酸メチル(MIC)の
ガス漏れ事件が15年目の節目を迎え、現地で様々なイベントが行われた状況をスライドを使いながら紹介した。
このボパール事件は、化学工場における史上最悪の惨事と位置づけられているが、谷氏によると、死亡は事故当時2500人、
現在は1万数千人といわれ、被害者総数は100万人にのぼるという大惨事。UCCは600億円の賠償金で免責しようとしたが、
被害者らの抗議活動でインド最高裁はこれを認めず、現在刑事訴訟中で、死亡者にはたった30万円しか支払われていないという。
この事故の特徴は、漏れたのがガスのため、その時の風向きによる運不運もあり、
工場内労働者の死亡はゼロで、むしろ周辺地域の風下の住民が被害を受けた点にある。
アメリカでは、この事件が契機となって、TRI(有害物質排出目録)が成立した。日本では間もなく施行されるPRTR(環境汚染物質排出・移動登録)につながる。ただ、そのUCCと枯葉剤の原料ダイオキシンを製造したダウ・ケミカルが合併することになり、"ボパールとダイオキシンの合体"はなにかを暗示するものがあるとも指摘した。
規制の甘い国に顕著になってきた"移動性公害"
テーマを「アジアの環境汚染」に移すと、次のような環境汚染が現在表面化しているとして、実例を上げた。
- インドネシア=ジャカルタ湾:80年頃から水銀を含む重金属汚染が表面化。子どもたちに影響が出て、胎児性になっている。但し、水俣病ではない。
- マレーシア=ブキメラ村:旧三菱化成のレアアースの合弁会社の不法投棄問題は終わ
っていない。工場は撤退したが、廃棄物はまだそのままにされており、地域住民は日
本に引取れと主張している。
- フィリピン=ミンダナオ金鉱山:金鉱山の採掘工程中に使用する水銀が問題化。大量の廃棄物も問題に。
- タイ=チャオプラヤ川:旭硝子のソーダ工場が73年に告発された。
- 中国=松花江の水俣病:吉林のソ連技術によるアセトアルデヒド工程で、新潟・阿賀野川の状況に近い。
- 韓国=温山病:重化学コンビナート地帯でカドミのイタイイタイ病に似た症状が出ている。原因不明のまま住民は立ち退いている。
- インド=マブール、ナグダなど各地:カセイソーダ工場の廃液が問題。水質の測定、分析技術が未熟のため改めて調査が必要。
- カンボジア=シアヌークビル:台湾からの廃棄物3000トンに4000ppmの水銀が含まれていた。抗議で台湾側が回収。
しかし残土に高濃度の水銀がまだある。
これらの事例に日系企業も無関係ではなく、進出する前にきちんとした環境問題に対する姿勢が固まっていたかは疑問だ。
また、特徴的なのは"移動性公害"とも呼ぶべき環境汚染が出てきていることで、たとえば韓国からフィリピンへ、シンガポールからタイへというふうに、規制の甘いところへドンドン持っていかれ、捨てられてるのが現実だ。
加害者がもつ"真の教訓"を生かさなければ解決しない
「アジアに水俣の教訓を伝える」ことが重要になってきているとの指摘も行われた。すなわち、真の教訓は加害者が持っているのではないか。それが生かされなければ問題は解決しないとし、賠償は出発点に過ぎず、日本の戦争責任同様、けじめをつけなければいつまでたっても日本の国際的評価は低いままであろう。
その意味で、アジアから見た日本や水俣について、改めて考えるべきで、少なくとも一般の人たちと知識層の日本への見方は異なる。
"デベロップメント"は、人間的に豊かであるべきで、必ずしも経済発展が結びつかなくても良いと思う。この発想は日本の企業にもまったく
ないわけではないが、この10年アジアの人たちと付き合って感じたことだ。
そして最後に、氏自身を含めて水俣病がもっている問題点はまだ十分に把握しきれていない。若い人たちの参加も求めてよりキチッとつかんで欲しい、とまとめた。
=水俣フォーラム、第2回「水俣病記念講演会」4月29日に開催=
水俣フォーラムは当面のセミナー予定について次のように明らかにした。その中で、第2回「水俣病記念講演会」は4月29日・有楽町朝日ホールでの開催が決まった。
| 【第22回セミナー】 |
2000年1月19日(水) |
土本典昭監督と共に新作「回想・川本輝夫」を観る |
| 【第23回セミナー】 |
2000年2月16日(水) |
大治浩之輔記者と共に報道番組「埋もれた報告」を観る |
| 【第24回セミナー】 |
2000年3月7日(火) |
映画「医学としての水俣病 臨床・疫学編」上映会 |
| 【第2回「水俣病記念講演会」】 |
2000年4月29日(祝) 14:30〜18:00 |
講演=緒方正人(水俣病患者・漁師)、柳田邦男(ノンフィクション作家)、原田正純(精神神経科医師) |
* 問合せ先*
●水俣フォーラム
〒150−0002
東京都渋谷区渋谷2−19−17 グローリア渋谷初穂・足立ビル1001
Tel 03−5485−6107 Fax 03−5485−6639
●アジアと水俣を結ぶ会(谷 洋一氏)
〒867−0000 熊本県芦比郡津奈木町福浜3627-39
Tel 0966−78−4127 Fax 0966−78−4173
|