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 学生の声
留学先でAPNEC6に参加して

宮城 大洋
(台湾大学環境工学修士課程在籍)




沖縄から台湾へ留学中の宮城大洋君は、留学先でAPNEC6の開催を知り、急遽参加した大学生。上達著しい台湾語を駆使して、日本から訪台した大学教授や学生たちと台湾関係者との橋渡しや交流をしたり、台湾での自らの活動状況をさりげなくPRしたり、会期中、昼夜をたがわず活躍。通訳や翻訳だけでなく、自らのコメントも発してもらった。





日本はアジアのためにも環境行政を確立して欲しい



―― 沖縄(琉球大学)から台湾(台湾大学)へ留学し、そろそろ"満期"を迎えるわけですが、台湾での留学生生活はどうですか? 

ジュゴンからゴミ処理まで"情報屋"ですと笑う
宮城:私は台湾大学で環境工学の修士課程に在籍しています。大学での専攻は電気電子工学だったので専攻が違う、そして海外の大学院と言う事で最初の頃はみんなについていけるのか不安で眠れませんでした。でも幸いなことに、いい先生やクラスメートに恵まれ何とかやってこれたという感じです。実は、環境工学の大学院の中で外国人学生は私一人だけです。先生方のほとんどはアメリカやヨーロッパの大学を卒業されていて、留学の苦しさを理解してくれているのか、とても可愛がってもらっています。甘くしてもらっているとも言えますが……(笑)。

入学した時には、まだ研究テーマは決まっていませんでした。それで台湾のジュゴンについて調べる事にしました。私は沖縄でジュゴンを原告に基地建設反対を訴える「自然の権利」運動のボランティアをしていた事もあって、ジュゴンを調べる事で台湾の人に沖縄の基地問題を知ってもらえればと思ったのです。調べてみると人類学科の資料室に日本統治時代に撮影されたジュゴンの16ミリフィルムや動物学科にジュゴンの標本など貴重な資料がありました。

台湾でのジュゴンはすでに絶滅しているので、ジュゴンが台湾にいた事を知っている人も少なく興味を持ってもらえましたよ。その時にはみんなから"ジュゴンの宮城"なんて言われていました(笑い)。

最近はごみ処理のLCA評価というテーマで研究をしています。また研究室の兼任助手として、台湾ごみ処理計画の政策環境影響評価や宜蘭県の循環型環境共生都市計画、環保科技園区(エコインダストリアルパーク)などの案件に関わっています。台湾の研究者の方やNGOの人に日本の状況を伝える"情報屋"の様な仕事です。留学生活は勉強不足を感じる毎日ですが、とても充実しています。


―― 今回、飛び入り的に台北から駆けつけ、に参加したわけですが、振り返って見てどんな感じを受けましたか? それと、参加した日本の大学生の中には、環境NGOの会議なのに派手ではないかという印象を持ったようですが、その辺も含めてどうですか。



APNEC6への参加は「有り難かった」に尽きる


宮城:自分の率直な感想は今回のAPNEC6はやっぱり「有り難かった」の一言ですね。いままで、こんなに大きな国際会議に参加した事はなかったので研究者の方々とお会いできた事にとても興奮しましたよ。さまざまな環境問題を、それに関わっている人達とお会いする事で身近な問題として捕らえる事ができ、自分の視野が広がったと思います。

また人脈が広がった事も大きな収穫でした。中山大学の夕食会の時にテーブルに一人で座っている人がいたので、思い切って声をかけてみたんですね。そしたら、ごみ問題に力を入れている看守台湾というNGOの研究員の方でした。それ以来、いまでも時々意見交換をしています。参加者それぞれが自分と同じように身近に問題を感じ、人脈を広げていったと思います。それが、きっと今後の環境問題を解決する大きな力になるでしょう。その点はとても評価できるのではないでしょうか。

しかし課題はあると思います。最終日の視察の合間に台湾から参加している人達に今回のNGO会議について簡単な 聞き取り調査を行いました。台湾からの参加者が少なかった理由として事前の宣伝が無かった事、参加費が高い、使用言語が英語だった事が挙げられ、1日だけでも参加できるようにする事、中国語のセッションも設ける事などの意見がありました。また全体を通しての感想で食事や歓迎会が豪華すぎてNGO会議にふさわしくない事や肉を食べる事ができず野菜だけ食べている人がおり、配慮に欠いた食事だったなどの同じ回答がありました。これらの反省点を真摯に受け止めて、次回のAPNEC7に生かして欲しいと思います。


―― ところで、台湾にもいわゆる環境破壊問題が続々と顕在化していますね。APNEC6の最終日の現地視察の際にも台南でダイオキシン問題が表面化したり……。急速な経済成長のつけが回って来た感じもしますが、日常、台湾で生活していてどうですか

宮城:台湾ではごみは回収車の来る時間に直接手渡しで出さなくてはいけません。袋の中に資源ごみが入っているとその場で分別させられます。また今年の1月からはレジ袋が禁止になりました。もうコンビニで買い物をしても袋にいれてくれません。日常の生活で感じるのは新しい試みをどんどん取り入れていく台湾のフットワークの良さです。

ただ、ご指摘のように台湾は戦後、経済優先の開発や下水道の整備など長期的視野に立った環境対策はあまり行われていませんでした。そのつけはこれからだんだんと明らかに なってくると思います。しかしそれが議論される事が環境への意識が高まっている証拠であると考えているので、全体的に台湾の環境は、改善の方向に向かっていると言えるのではないでしょうか。

今後は台湾が他の国と比較した環境データを整備する事が必要であると思います。台湾には中国との政治的な理由から国際機関に所属しておらず、海外と比較したデータがあまり多くありません。ほとんどのデータが以前よりは綺麗になったなどの時間軸での比較か、もしくは台北の空気は高雄より綺麗などの国内比較に留まっています。海外と比較できる環境データを整備し、その上で今までのフットワークの良さを生かす事がこれからの課題だと思います。



3月に開催するクロツラヘラサギの国際シンポジウムに参加を


―― 年末以降には一転してクロツラへラサギの死亡事件に取組み、沖縄の新聞に寄稿したりしていますが、この事件の顛末はどうなったのですか?

  宮城:去年12月に台湾の台南県で台湾では国鳥のような存在で環境保護の象徴であるクロツラヘラサギがボツリヌス菌に感染して48羽死亡する事件が起きました。クロツラヘラサギは生息数が1000羽以下の絶滅危惧種に指定されている渡り鳥で、私はその原因究明の為に台湾を訪問した大阪府立大学の小崎先生の通訳として同行しました。

死亡事件が起きた当初は、何とかクロツラヘラサギを救おうと地方政府と中央政府がスクラムを組んでいました。しかし原因が明らかになり、再発を防ぐ対策の話になった時には中央政府の対応が次第に悪くなりました。それは台湾でも日本の縦割り行政と同じ問題があったのですよね。農業委員会や環境保護署など複数の機関が関わってくるとうまく横の連携が取れなくなったのです。また原因が養殖池からボツリヌス菌が発生した事から、クロツラヘラサギの保護の為には漁業を止めなくてはいけないという声もあって、台南県としても何とかしたいけれどどうしていいか解らず手詰まりというのが現状です。

しかし台南県は自ら主催して今回の事件を世界にしっかり伝える目的でクロツラヘラサギの国際シンポジウムを3月に開催することを予定しています。クロツラヘラサギの飛来している世界各国の地方政府に参加を呼びかけて、その中から解決の糸口を探そうとしています。これからは、このような地方レベルの国際交流が大切になってくるのではないでしょうか。日本にもクロツラヘラサギが飛来してきます。シンポジウムには日本からも多くの自治体に参加して欲しいと思います。

―― その他、台湾にいて、日本、なかんづく沖縄を見ると、別の姿が見れるのではないかと思うのですが……。

台湾の大学生(右側3人)にヒアリングする宮城君(左端)
宮城:台湾にいて感じる事は、良くも悪くも日本の存在の大きさです。日本にいると世界の中であまり目立ってないのでは? という気がしていましたがとても注目されています。テレビやドラマなどは、ほぼリアルタイムに情報が入ってくる程です。

台湾では日本の制度がよく真似されます。政策決定で「日本がそうやっているから」という理由で決まる事があるそうです。「日本が必ずしも正しいとは限らないよ」と言うと、「心配要らない。失敗したときは、その言い訳も日本の真似をすればいいから」と話していました。台湾は日本の事を熱心に研究しています。単に政策だけではなく、その社会構造まで真似されているのです。

それに比べて、日本はあまりにも台湾の問題を知らない。台湾がよく日本の事を知っているので日本側はそれで台湾の事を知ったつもりに錯覚するのです。それが公害輸出の要因になり、環境破壊に加担している事があります。

ここにいるとアジアの中で日本が果たすべき役割がはっきりと見えてきます。まず日本が注目されている自覚を持ち、その見本となるような環境行政を確立する事です。そして過去の環境問題の歴史、被害者の声を積極的にアジアの国に届けていく事が求められています。そういう意味では多くの問題を抱える沖縄は重要な場所ですね。将来はこの日本の役割を意識して仕事がしたいです。

 



●クロツラヘラサギ死亡事件
絶滅危惧種に指定されている渡り鳥のクロツラヘラサギ48羽が昨年末、世界最大の越冬地と言われる台湾・台南県の七股潟湖の保護区域でボツリス菌によって死亡した事件。 日本の研究者、環境NGOなどの協力により原因究明と今後の対応策が一応確立された。2003年3月、台南県がクロツラヘラサギの国際ワークショップを開催する。