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 学生参加者メール座談会
「APNEC6に参加して」




APNEC6には日・台の大学生がボランティア兼聴講者・発表者として参加した。専攻は様々だが、学生の視点から今回のAPNEC6や台湾見たままを出し合ってもらった。帰国後、メールにより共通質問へのコメントを寄せてもらい、構成した。

*進行・構成・文責:司 加人




《出席者》
 =発言順、敬称略

関 耕平 (一橋大学大学院経済学研究科博士課程)
左から関、林、桑原、照沼、橋澤、瀬戸、安田、村上のみなさん
【2002年11月3日、高雄「中信大飯店」で】
林 公則 (一橋大学大学院経済学研究科修士1年)
桑原 亜希子 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士1年)
照沼 麻衣子 (立教大学大学院文学研究科日本文学専攻前期2年)
橋澤 裕也 (東京経済大学経済学部4年)
瀬戸 和佳子 (一橋大学大学院経済学研究科修士課程)
安田 加世 (一橋大学大学院経済学研究科修士課程)
村上 理映 (九州大学大学院比較社会文化研究科博士後期課程)
【注】所属は2003年1月現在のもの。






●APNEC6に参加して―


― みなさんから、APNEC6に参加して感じたことを率直に総論・各論含めて伺いたいと思います。まず、集合写真の左の関君に口火を切ってもらい、順次右回りに伺いましょうか。



運動側から政策立案側へ転進した人たちの実績に注目したい ≪ 関

反グローバル運動との繋がり見たかった:関君
:APNEC参加について事前に思ったことがあります。

普段から意識していないとうっかり落としかねない視点、「環境政策と政治過程」の視点を再認識することがこの会議でできるのだと思いました。

私自身、環境政策を少しかじっていると、どうしても観念的に考えてしまうことがあります。ここで「観念的に」というのは、政策導入で必ず通らなければならない政治過程を抜かしてしまうことです。社会工学的に、「この政策のこの部分をこう変えてやって、その結果としてアウトプットは、環境保全型に切り替わる。」と考えてしまうことを意味します。政策科学という言葉がありますが、政策の実現に向けた政治過程が抜けていると感じるときが多々あります。少し立ち止まって考えなければならないと思うのです。

こうしたことを考えるならば、APNECの意義を痛いほど感じるのです。

APECなんかでも環境政策の情報交換が行われているようですが、その中身といえば電源立地三法のような原発立地(CO2排出削減という意味で「環境政策」なのでしょう)促進のための仕組みを途上国政府に伝授する、らしいです。真の意味での環境政策は常に住民運動などの草の根の力から生まれてきています。だからこそAPNECのようなNGOレベルでの情報交流というのは意義があるのだと思います。寺西先生の受け売りですが…(笑)。

実効性ある環境政策の導入の背景には常に運動があり、政府等の圧力を受けて変容しながら、当初の政策から見たら踏み込めない面も孕みつつ、政策としてのぼってくる。そうした環境政策が成立していくリアリティーを再確認する上で、運動をするNGOが会するこの会議というのは、重要なんだと思います。

私自身が日常の研究のなかで、気をつけないと抜かしてしまうこと、「政治過程」を認識しながら環境政策を考えることの重要性についても再認識する、そういう意義があったのではないかと思います。

報告の中には完全に「学会」的なものもあって少し辟易したこともありましたが、概してNGOや住民の立場に立った報告、アジアという空間的広がりにはっとさせられる報告があったと思います。とはいえ、自分は英語力がないこともあって(笑)なかなか会議の内容をトレイスできなかったので、他の参加者の皆さんからいろいろとお聞きできればと思っています。

他には、台湾の方々を見ていて、はじめは運動側であった人々が、今では政策の中心にいて、日本でのパートナーシップとは比べ物にならないくらい政策への影響力をもっていることに驚きました。果たしてその結果としてスムーズな政策導入が行われているのか、そして、政治過程として政策決定していく際の批判的勢力はどこなのか、産業界だけでなく、もっとラジカルな勢力はいないのか。少なくともあの会議の場にはいなかったようですが……。

いろいろ知りたいことがありつつも会議の中ではなかなか知ることができませんでした。それでも、いろいろな人脈ができました。これが一番私にとっては今回の会議での「成果」ですので、今後も台湾を注視していこうと思います。

また、今回の会議では反グローバル運動とのつながりがあまり見られなかった印象がありました。私自身はこの反グローバル運動を環境運動の中で重要であろうと漠然と考えていますので、この点をどう考えるか、どう印象を持ったのかということを他の参加者にも聞いてみたいです。



気になった日本のマスメディアのマイナーな取上げ方 ≪ 林

― 林君はどうでしたか?

:いろいろな国の方々が参加なされていてすごいと感じる反面、アジアの国であるにもかかわらずAPNECに参加をしていない国も多くあり、より一層ネットワークを拡大していくべきであると感じたのが一点です。

それと、台湾ではかなり大きな記事で取り上げられていたにもかかわらず、日本でほとんど報道されていなことも気になりました。



"議論の少ない会議"のあり方は見直すべきでは? ≪ 桑原

― 桑原さんは?

桑原:私は、国内外含めて、国際会議自体初めての経験でしたので、何においても新鮮でしたね。総じて、会議そのものは盛会だったように思います。しかし、いま、関さんの"反グローバル運動"という言葉を聞いて、なるほどそういう見方もあるのかと思いましたね。そういえば、この夏に行われたヨハネスブルク・サミットの報告を政府・企業・NGOの視点からそれぞれ受けましたが、どのセクターもNGOのそうした動きがあったからこそ、会議全体を盛り立てることになったと言うし、その結果、今後の政府や企業の取り組みにも影響するだろうということでしたね。それに比べたら、今回の会議は、スピーカーに対する(言葉の)攻撃もなければ、ロビー活動らしきものはなく、どちらかといえば、日頃私たちが接している「会議」のイメージそのままのスタイルでしたよね。ただし、こうした結果は、アジアという地域性かなと勝手に解釈していました。それから反グローバリゼーションの動きは、やはり京都議定書の批准に拒否しているアメリカ・ブッシュ政権に対して、また労働搾取を行ってきたアメリカ企業に対して、などに向けられているのだろうということ、それから南米やアフリカに比べた場合、アジアの国は、経済的にもグローバリゼーションによって獲たものが大きいので、"反グローバル運動"的な試みはないのだろうということ、こうした背景を考えると今回の参加国では、温和に平穏無事に、ことが済んだのかなと思うのです。

しかし、何事も起こらなかったから会議は成功した、といえるわけではないですよね。そういう意味では、今回の会議はものすごく静かで、閉じられた空間で淡々と3日間が過ぎたかもしれません。それは、そうしたグローバリズムの話とは別に、先ほど申し上げた「会議スタイル」に、やや問題があるかなと思います。こうした会議スタイルだと、どうしてもみんな「お客様」「聴衆者」になってしまうがちですよね。スピーカーに対する質疑応答の時間が設けられていても、議論が活発に行われない。私は、その「議論」こそ、こうした場において重要性を感じているのですが、なかなかそう簡単には議論に発展しえないものですね。時代の変容と共に、こうした「場」のあり方についても見直せるところがあるように感じます。この点については、提案したいことも色々とありますが、とにかく今回の参加は、いい刺激になりましたし、勉強になりました。


 ― 続いて、照沼さんどうぞ。



コストがかかるが同時通訳の配備が会議の対象広げるのでは ≪ 照沼

食事の際の繋がりを今後に生かしたい:照沼さん
照沼:初めて環境国際会議に参加いたしましたので、様々な国の方が活発に主張をしている様子、聴衆がパネリストの真剣さを汲み取ってそのテーマに対峙している姿、また単純ではありますが、自分が認識している以上に多種多様の環境問題が放置されていること、など、私にとってはとても示唆的な会議でした。いくつかのプレゼンテーションを拝聴いたしましたが、英語の不得手な私には所々しか理解ができなかったことを残念に思います。多額の費用がかかってしまうでしょうが、同時通訳イヤフォンがあればありがたかったです。自分の英語能力の低さを棚に上げて申しますと、このことはAPNECがトップレベルのみを対象にしていたことを象徴しているように思います。

また、すべての食事を参加者と共にすることで、様々な方と親睦を深めることができましたことは、大変に嬉しく感じます。近い距離で拝聴したしましたお話は、直接に心に響きました。あの場で築きました繋がりを立教大学の東アジア地域環境問題研究所全体でも大切にしてゆくつもりです。

― さりげないPRですね。東アジア地域環境問題研究所は最近、ホームページも立ち上げましたね。

照沼:はい、ありがとうございます。みなさんに見ていただき、ご意見を伺いたいです。

― ここではその辺で……(笑い)。橋澤君はAPNEC6の参加は確か2回目とか? 前回比較も含めていかがでしたか。



総統の出席など開催元・台湾の意気込みが印象的だった ≪ 橋澤

橋澤:はい、私は前回のインド会議に続いて、2回目でした。前回と比べて強く感じたことは、「台湾側の会議への意気込みというか、気合の入れ方が違う。」ということです。セレモニーが催されたり、陳水扁総統が開会式で挨拶をしに来るなど、国際会議として成功させようという熱意が伝わってきました。ここまで力を入れられると台湾の国際的に微妙な立場を少しでも向上させたいという熱意でもあるような気がしました。また事務方のボランティアとして、台湾の学生と共に仕事をし、学生の活発さと自己主張の強さを感じました。

そして会議での発表を聞き感じたことは、各国々深刻な環境問題を抱えていて、またそれぞれ原因・状況は一様ではないということです。環境問題は地球規模の問題ではありますが、解決に向けて個別に早急な対応が望まれると思います。



手法改善すればさらに大きな成果期待できる会議だ ≪ 瀬戸

― 瀬戸さんは随分、はつらつと動いていましたが……。

瀬戸:今回が初めての参加でしたが、次のような点について特に強い印象をもちました。

まず、良かった点についてですが、やはり多くの人との出会いが一番に挙げられます。普段の研究生活の中で、たとえ自分の研究テーマに関わることでも、どのような人やグループがどのような研究・活動をしているのかを包括的に知ることは難しいと思います。この会議は規模も大きいことから、普段ではなかなか知り合う機会のない人々と出会えるという大きなメリットがありました。様々な取り組みの中で自分がしていること、今後していくことが、どういった位置にあるのか、改めて見直す機会にもなりますし、足りないことや、良い意味で「盗めるもの」を見つけられた人が多ければ、この会の意義を十分に活かしたことになるのではないでしょうか。

また、私にとって特に興味深かったのは、最終日にあった現地視察です。その土地の人や何らかの活動に携わっている人が、汚染地帯や自然保護地区について説明してくださって、生の空気を感じること、そこから伝わる問題の深刻さや難しさを感じる事が出来て、本当に感激しました。私には現段階では分からなかったことも、今後いろいろな意味を帯びて多くのことを教えてくれる気がします。

次に、APNECが改善できるのではないかと感じた点をいくつか挙げてみたいと思います。まず、会議の内容全体を通して、表題にある「NGO会議」であることを感じる事が少なかったのは残念でした。まだ6回目の会議ですし、これだけ大きな国際会議になってしまうと、内容についてコンセンサスをとるのは非常に難しいのだと思いますが、この会議が持っているであろう理念や方向性が参加者には曖昧にしか通じなかったのではないかというのが率直な感想です。報告内容が多様であることは、この会議のメリットでもあると思いますが、雑多な感が否めませんでした。私自身が不勉強なために、知識の不足を訴えても意味がないかもしれませんが、これだけのネットワークと『アジア環境白書』という素晴らしい成果を活かしたプログラム編成が可能だったのではないかと思います。例えば、一つのテーマについて包括的に捉え、NGOや行政などの活動の現状について簡単な見取り図を示してから、それぞれの報告がある、という順番でプログラムを組むというのはどうでしょうか。さらに、それぞれのテーマが、最終的にどのように位置付けられるのかを全体で確認しあう場や、資料があり、それぞれのNGO活動の紹介があれば、全ての報告を見られない参加者にとっても、とても納得のいくものになるだろうと思います。

また、この問題に関連しますが、これだけ多くの参加者があったのですから、もっと上手く「出会いの場」を提供できたのではないかと思います。お食事が中国式で立食パーティーではなかったので、なかなか多くの人と知り合うのも難しかったと思います。ただ名札を付けて会場内を動くだけでなく、例えばワークショップとしてNGO団体や学生、研究者がそれぞれの活動を紹介しあうような、人と人が知り合える時間を設けるというのは、有効な方法ではないかと思います。実際、学生のワークショップに参加しましたが、英語が話せる人しか情報を得たり発信をしたりすることが出来ませんでしたし、あまり上手いマネージメントではなかったので、とても中途半端な内容で終わってしまいました。面白い活動をしている人もいたのですが、良いディスカッションは出来ないで終わってしまいました。ネットワーキングを意識して、メールアドレスの交換などもありましたが、お互いを知り合う事ができなかったのでネットでの対話に参加するインセンティブもなく、このネットワークも活かされずに放っておかれているのが現状です。

以上が率直に私が「もったいない」と思った点です。特に大きな変更が必要だというわけではないのです。箱が出来ているのだから、中身をもう少し考えれば、全体がとても良いものになるだろうと思うので、あえて提案させていただきました。



中国からの参加者が少なかったのは残念だった ≪ 安田

― 安田さんは、スタッフ活動が多くてあまりセッションそのものに顔を出せなかったようでしたが………。

安田:そうですね。正直なところ会議中はずっと裏方で台湾のスタッフと一緒に受付と会計をしていたので、会議自体には殆ど参加できませんでした。具体的な会議の内容などに言及することはできませんので、漠然とした話になって申し訳ありません。今回の会議ではNGOとしての研究者や弁護士という生き方に魅力を感じました。環境問題の解決というような、公益的な活動に、専門家はどんどん踏み込んでいくべきです。やはり個人プレーだけで進むよりも、多様な専門家が手を組んでより大きな能力を発揮することが必要だと思います。そういった意味で、APNEC6のような会議を開催し、多様な専門家の協力を促すことは非常に有意義だと感じました。

それから、中国からの参加者がもっと増えればいいなと、受付をしながら感じていました。私は去年、中国の北京で開催されたワークショップに参加したことで、中国の動向が気になっているということもあって、そう感じました。中国の方からのキャンセルも多かったようです。もしかしたら、政治的な面で台湾へ来ることに何らかの問題があったのでしょうか?



政府色強く、環境NGO少なく……会議のあり方に疑問 ≪ 村上

― 村上さんは開催中から、辛口のご感想をもらしていましたが……。

先進国は途上国の発展に待ったはかけられない:村上さん
村上:私にとって最もよかったのは、人的ネットワークを広げることができた点です。私の関心ある分野の報告がなかったことと、私の英語力不足もあってセッションそのものはあまり楽しむことができませんでしたが。でも、NGOとは何だろう?という疑問も、少し生まれました。

環境に関係するNGOに広く集ってもらうことを目的とするなら、まず日本国内の環境関連のNGOに、広くお知らせすると、もっとよかったかな、と思います。これは、まだ開催を始めて6回目、ということを考えると、今後の課題になるんでしょうね。

一言で環境NGOといっても、その活動は把握しにくいので、そのような連絡は難しいでしょうから、せめて、まず環境関連の学会での広報からはじめるのがよいかもしれませんね。そしたら、学生の参加者も、もっと多かったかもしれません。

私は、自動車リサイクル関係の本執筆に携わっている関係でお世話になっている寺西先生から、このような会議があることをたまたまお伺いしたから、参加することができましたが、『環境と公害』でしたか雑誌の裏に、申し訳程度に広報はしてありましたが、私の知る限り、環境関係の大きな学会である環境経済政策学会と、廃棄物学会の広報では、見ていません。

本当に開かれた国際会議となるには、まだまだ時間がかかりそうですね。でも、ここまでの人間を集める事ができたっていうことはすごくすばらしいことだとは思います。

― これはなかなかの辛口ですね。ただ、本質を突いていると思います。先生方にはちょっと耳が痛いかな?(笑い)。具体的かつ前向きの指摘であり、提案ですので、これらが次回以降に反映されるといいですね。




●日本は何をなすべきか―


― 総論・各論含めていろいろ出されましたが、次に、それらを通じて「日本」という国として、何をすべきか、あるいは何ができるかと思いましたか? それらについて意見を出してください。桑原さんもトーンは辛口タッチでしたが、このテーマについては桑原さんから……。



各国のNGOが連携し、政府組織と協働するシステム確立が先決 ≪ 桑原

日本の環境NGOは何をすべきかが先決:桑原さん
桑原:たとえば、「日本は」と言ったとき、みなさんはどうイメージするでしょうか。おそらく「政府機関」とか「ODA」を思い浮かべるのが一般的のように思います。しかしそこに問題があった。そのため環境NGOの存在も必要とされてきたし、活きてきたのだと思います。かといって、日本では、NGOのステータスがようやく認められてきたという段階で、アジア地域で"コレができる"といった壮大なスケールが描けている日本の環境NGOは、まだないように思います。各国のNGOが手をつなぎ、どのエリアの何が問題かのニーズを把握し、対応していくと共に、NGOと政府組織の協働によってアジア地域の環境への取り組みのためのシステムを確立することが第一義ではないでしょうか。

:初めに言ったことの繰り返しになりますが、やはり草の根での交流を図り、いかにして環境政策の前進を勝ち取るのか、勝ち取ってきたのか、もしくは場合によっては負けたのか、ということをアジアの「草の根」と共有し合うことが必要なのではないかと思います。日本はそれだけ経験があるわけですから共有することによってアジア各国が参考になることはたくさんあるのではないか。とはいえ、私は公害問題にそれほど明るくはないので、こうした面での貢献はできそうにもありませんが。

もっと運動にコミットしていく中で、そして英語力をつける中でこうしたことを私自身ができるようになりたいと思っています。



中国や東アジアのNGOの牽引が日本の役割ではないか ≪ 安田

日本はアジアの一員という認識が薄いのでは?:安田さん

安田:日本はどうしてもアジアの一員であるという意識が薄いように感じます。むしろ、意識は欧米の方に向いているようです。先のNGOの話ですと、日本では欧米のNGOと比べると、近隣のアジア諸国のNGO関係の話題を耳にしたり、実際に資料を目にすることは少ないように感じます。日本や韓国のように、NGOの活動が比較的活発な国を中心として、アジアのNGO間の情報交換や経験交流をもっと活性化させるべきだと感じています。特に日本は、公害裁判闘争において弁護士や研究者や労働組合や市民が手をつないで大きな成果を勝ち取るという古くからの経験があるわけです。こういった活動は今で言うNGOですよね。こうした優れた経験をアジアで共有できるなら、幸いだと思っています。特に、NGOの活動が弱い中国を初めとする東アジア地域を牽引する役割をになうべきです。









豪勢なもてなしには感謝するが違和感も……… ≪ 村上

村上:台湾の人々が、いつも豪勢を尽くして客人をもてなしてくれる、そのことは、すごく嬉しいことです。でも、毎回食べきれないほどのご飯が出てきて、ちょっともったいなかったと思います。確かに美味しいし、嬉しいんですけどね(笑い)。日本も以前は、とにかく客人を豪勢つくしてもてなす文化が強くて、「もったいない」なんていう言葉は、なかったような気がします。日本は東アジア諸国の中での先進国、という自負を持っているなら、今、日本が過去の「自分」を振り返ってみて間違っていたと思うようなことを、他の東アジア諸国がしていたら、同じ過ちを繰り返さないように助言する義務があると思います。

:APNECの創られた経緯に沿うようなNGOに属する方々やそのようなNGOにコミットしている研究者を発掘し、ネットワークを拡大していくことが必要だと思いましたね。またそれとともに、報告の質を今以上に上げるように努力すべきであるということも感じました。



APNEC限定でなくNGOや行政など各種情報網を活用すべし ≪ 瀬戸

瀬戸:情報がないため、それぞれの団体があまりにバラバラにそれぞれのことをしているので、ネットワークがあったらもっと効率的に多くの事ができるだろうと思われる場面が多くありました。日本があえてすべきことではないかも知れませんが、情報の発信は大切だと思います。以前ある企業の方からお聞きした印象的な言葉に、「情報は発信源に集まる」というものがありました。APNEC6を通じて、常にこの言葉が頭にありました。アジア諸国が集まるという、歴史的にも大変意義深いこうした会議を、もっと活かして大きな活動にしていくことが出来ると思います。そのためにはこれまでの蓄積を活かして、情報の収集と発信をどこかが担っていく義務があるだろうと思います。しかしこれは大変なことです。あくまでNGO活動の中で続けるには負担が大きすぎるだろうとも思います。

また、日本として何が出来るか、ということを実現させるためには、日本内外の多くの活発なNGOにもっと働きかける必要があると思います。APNECに限定することなく、既存の多くのNGOや行政によって行われている各種の情報網を一緒に活用していくことも、考えるべき課題ではないでしょうか。NGO会議としての意義を発展させるためにも、国内での呼びかけだけでも行うと良いと思います。



「環境問題に真摯に取り組むべき」と言いたい ≪ 照沼

南北問題に起因するが次元はより高い:橋澤君
照沼:当然のことではありますがまだ達成されていないと思いますので、「環境問題に真摯に取り組むべき」と敢えて発言させていただきます。そして、その際の取り組みの姿勢が重要なのだと思います。 これまでは、理数系や法律系などの専門家の方々が、環境問題についての提言者の大部分であったように思いますが、人文系などからのアプローチが活発になされる、またそれらが注目されるべき時期に来ているのでなかろうかと思います。 つまりは、排他的な位置に環境問題を留めておくでは善方への発展が望めないということです。また、あらゆる立場にいる人々が、専門家側の押し付けでない環境問題を身体の一部のようにして違和感無く認識することができたなら統合的な解決に向けての指標となるのではないでしょうか。まずは足元である生活地域から、日本へ、アジアへ、世界へ。着実に確実に………。

橋澤:日本は公害の面でも先進国であるのだから、公害を起こさないよう公害防止のための技術面での協力はもちろんのこと、その経験を伝え、もっと被害者救済のために協力すべきだと思います。こうしたハードとソフトの両面から協力していくことが重要ではないでしょうか。また日本の人々はアジアで起きている問題をもっとよく知り、その問題と日本との関連性をも知る必要があると思います。




●学生として出来る事は?―


― 具体論として、それでは学生だからこそ出来ること、あるいは学生としてすべきことという視点でご意見を聞かせてください。林君どうですか?



現地見てネットワークの重要性を体感すべきだ ≪ 林

アジアで何が起こっているかを見よう:林君

:日本を含めたアジアで起こっている環境問題の現場を訪ね、何が起こっているのかを自ら見るとともに、そこで活動を続けている人たちにAPNECの存在を知らせていく。自らなぜAPNECのようなネットワークが必要とされるのかを体感することも大切なことなのではないかと思います。


:まだ学生ですが、諸先輩の研究者の方々のように、さきに申し上げたことを実践していけたらいいなと思っています。

同時に、それだけの覚悟を今自分が持ち合わせているのか、常に問うていかなければなりません。果たして実践できるだけの覚悟はあるのか……。









自国を知った上で他国との相互理解深めたい ≪ 橋澤

橋澤:ここ数年のアジアブームによって若い人でアジアに興味を持つ人が増えてきたと思います。若いうちから近隣諸国について知ろうとすることは良いことだと思います。日本もアジアの一員であるという認識の下、ここからさらに環境問題や歴史の問題といったさまざまなことを知り、アジア諸国の人々と積極的に話をすることで、相互理解が深まり、また諸問題について協力することができるのではないかと思います。もちろんその際に、自分の国のことについて十分認識していることも重要なことだと思います。

村上:学生だから言えることがあると思います。政治には、どうせ学生の声など反映されません(笑い)。しかし、環境について学んでいる学生は、せめて学生に対しては、環境意識について語ることができると思います。現在の政治家に学生が何かを言上したところで、聞き入れてはもらえないでしょう。しかし、今の学生が政治家になりうる年齢になった時、環境について考えているかどうかは、大きな違いが出てきます。将来の政治家になりうる今の学生同士、語り合うことは可能でしょう。

箱モノはできたから、実態、つまり中身を埋めていくのは今の学生を初めとする、これからの世代かもしれませんね。

照沼:自分のスタンスをしっかり持つこと、そしてそこから長い触角を探らせ、散在する事象に敏感になることが大事なのだろうと思います。あらゆるテーマが互いにリンクし合って世界、あるいは社会を形成しているからです。環境問題についてのみには限りませんが、自分のスタンスを支点とし自由な発想を乱射できるのが学生の大きな特権であるのだと思います。また軽い足取りで動けることも学生の特権の一つです。特権を最大限に有効利用するべきだと思います。

桑原:学生はフットワークも軽く、想像力も型にはまらないユニークさがあると思います。今回のような会議などは、学生が主体となって創り上げることが出来ればいいですね。



フィールドワークで汚染現場見て強い印象受けた ≪ 安田

学部生も巻き込み学生の存在性高めたい:瀬戸さん
安田:私はまだ駆け出しの学生ですから、もっと現場に出て行って、見聞きして考えるという経験を積んでゆく必要があると考えています。今回の会議では、主に裏方のお手伝いをしていたのですが、最終日のフィールドワークにはしっかり参加することができたのは幸いでした。例えば、Taiwan Caustic An-Shun plantによる汚染地域を見学し、ずさんな対応を目の当たりにし、それによって道路を隔てた養殖池がいかに汚染の危険にさらされているかなどを知るだけでも興味深いですし、一緒に見学された諸先生方がどのようなところに眼をつけて現場を見ていらっしゃるのかを知ることも勉強になります。今は、様々な経験を学生のうちから少しずつ自分の肥やしにしていく段階だと思っています。

瀬戸:最初の設問で申し上げたことの延長という感じになりますが、やはり学生をもっと巻き込んでいくことが出来ると良いと思います。院生だけでなく、学部レベルの学生などが、ある程度の自主性と責任を引き受けて活動を進めていけると、可能性が開けると思います。例えばこの場合、この会議での学生ボランティアの位置が大変重要になり、より多くのステイクホルダーを形成できれば、面白い事が起きるのではないでしょうか。





●地球環境問題について―


― 視野を広げて伺います。今回のAPNEC6も広義の意味では地球環境問題が基本的なキーワードだと思います。ただ、この地球環境問題、言葉で言うのは簡単ですが、一筋縄でいかない広さと深さと複雑さを併せ持っています。先に開催されたヨハネスブルクでのサミットの結果を見てもそれは如実に現わしていると思います。議論のキッカケとして、地球環境問題は南北問題であるとする見方があります。ここではそう思うか、それともそういう時限を超えた問題だと思うかということと、それ以外のコメントがありましたら出して下さい。



「階層性」を抜きに地球環境問題は語れない ≪ 関

:地球環境問題が南北問題かと言われれば明らかにそうだと思います。その意味は、地球環境問題が階層的な構造を持っているという意味でです。宮本憲一先生(滋賀大学長)の言葉を出すまでもなく、環境問題の被害は階層的ですし、その対策を行うときも上の部分が救われることはすぐに実践されるが、被害者が社会的発言力をもっていないときは遅々として進まない。そうした「階層性」を抜きに環境問題、地球環境問題といえども語れないと考えます。

― 確認しておきましょう。今言われた「上の部分が救われる」とは具体的には何を指しますか?

:自分の認識では白人が影響を受けるオゾン層保全をイメージして申し上げました。

― 分かりました。村上さんはどうでしょう?



先進国の身勝手はもはや通用しない ≪ 村上

原田正純さん(右)と九州同士でツーショットの村上さん 【2002年11月3日、中信大飯店で】
村上:私には単に「問題」という簡単な言葉で片付けることはできません。先進国は、さんざん環境を汚染しながら成長し、豊かになった。途上国が今度は追従して成長しようとすれば、先進国は「それは環境に悪いからやめておけ」と待ったをかける。それは、先進国の身勝手な論理です。途上国の成長を止める権利は、先進国には全くありません。むしろ、現在の途上国を「食い物」にして成長してきた先進国は、途上国が先進国の犯してきた「間違った発展の仕方」ではない方法で、できる限りの手伝いをしてしかるべきです。無条件で途上国の先進化を助けるくらいの気負いがあってもよいと思います。

途上国が、何らかの方法で発展する。それは、今の先進国とは若干異なった新しい道での発展かもしれませんし、結局あまり変わらない方法で発展してくるかもしれません。そううなった場合、地球は破綻してしまうかもしれません。しかしそれは人類の選んだ道であり、破綻を憂いても致し方ないと思います。私が一番言いたいことは、地球の破綻が近づくとしても、途上国の発展に待ったをかける権利は、先進国にはない、ということです。先進国がすべきことは、途上国に対して、破綻が先送りできる方法で途上国が発展できるよう導くことです。

― とても正鵠を射た指摘ですが、具体論が聞きたいですね。例えば村上さんには「破綻が先送りできる方法」とはどういうアイデアがありますか?

村上:繰り返しになりますが、少なくとも、「発展するには環境負荷を高める道を通るから、途上国は発展してはいけない」という理論は理不尽です。途上国が発展を望むのをとめる権利は、先進国にはありません。これまで築き上げてきた技術や社会システムを参考にしながら、できるだけ環境負荷を低く、かつ発展を導くことが出来る方法を考え出し、それを途上国にも提供する、これが先進国のなすべきことであり、破綻の先送りには、これしかないと思います。

ただし私自身、人間が存在する限り、今の環境が永遠に保てるなんてことは考えていませんし、そのような理想論を掲げる気もありません。破綻は遅かれ早かれやってくるのでしょうし……。それをできるだけ遅らせる担い手となるべきなのは、先進国だと思います。なんか、勝手に感情で話しているので、漠然としたことしか言えなくて、すみません。

― 分かりました。照沼さんはいかがですか?

照沼:この問題に直面した時、「協力」という言葉が薄っぺらに聞こえてしまうほどにナイーブで難しい問題であると思います。理想論と現実論とが交錯します。現在の段階では、私はうまく答えられませんので、これを契機に考えてゆきたいと思います。



南北問題を利用して環境問題はより深刻になっている ≪ 瀬戸

瀬戸:南北問題は、環境問題と密接に関わっていますが、南北問題を解決すれば環境問題がなくなるわけではないので、環境問題は必ずしも南北問題に限定されないと思います。ただ、「そういう次元を超えた問題」かという質問の意図を解しかねますが、南北問題を利用して環境問題はより深刻になっている、というのがより適切ではないでしょうか。南北問題が、経済的な格差を利用して広がるのであれば、環境問題はコストのかからない、より安価な経済活動によって広がりうるものだという意味で、南北問題に関わってきます。問題が、責任の所在が明確でない経済活動だとすれば、そのような経済活動そのものを見直し、例えば「公正」なルールを築くことも、結果的に南北問題の解決を促す一つの方法だと思います。



欧州の酸性雨など地球環境問題は南北問題で捉えられない ≪ 林

:地球環境問題を南北問題だけで捉えると、捉えきれない問題も出てきてしまいます。欧州の酸性雨は先進国同士の問題です。

地球温暖化問題ではこれまでの責任の違いから、温室効果ガスの削減について南北に差を設けることになっています。現在の経済力の差を考えればそのような措置は必要だと思いますが、環境的な観点から見れば、南のすべての国々が現在の北と同じ経済力を持つことは不可能ですね。温室効果ガス削減の差や経済援助は南北問題に由来するものと考えずに、地球を全世界で維持するために必要なものだと先進国は考えるべきで、途上国は、先進国とは別の発展の可能性を考える必要があるのではないでしょうか。ゆえに地球環境問題は南北問題を超えた次元の問題だというのがボクの持論です。

桑原:問題と思う角度によって異なるのではないでしょうか。環境問題は○○(たとえば経済)の問題である、いくつか考えられそうなものですが、その中で最も注視しなければならない問題が、南北問題であると思います。残念ながら平和な日本では、まだその視点で環境問題を捉えるのは一般的ではなく、人権・人種・ジェンダー問題等の社会問題との関連づけは浅いような気がします。さきほどの「日本は何ができるか」の話しにもかかわることですが、環境問題をグローバルな視点で捉えられるかどうかによって、問題意識も、できることの範囲も、大きく変わってきます。日本においてもより多くの一般市民が、こうした相関関係を知り、関心が高まっていけばいいですね。



「地球市民としてどう共生するか」という次元だ ≪ 橋澤

橋澤:南北間の関わり合いの中で、経済格差が原因となって公害を引き起こすような質の悪い工場などが建設、移設されていることを考えると、地球環境問題は南北問題に起因する問題であると思います。しかし、地球環境問題には環境破壊が進めば、誰も地球で生きていくことができなくなるという深刻な問題であり、さらに経済格差という構造が問題解決を難しくしているという点で、地球環境問題と南北問題は「地球市民としてどう共生するか」という、より大きな次元の問題から投げかけられている問題であると思います。

安田:地球環境問題全般としてどうなのか、はっきりとは言えませんが、単純に南北問題として捉えることはできないと思います。「Sustainable Development」という概念を掲げるという点では、南北間の合意は取れているのではないでしょうか。問題は、これを実現する方策を議論する上で、意見の対立が見られる場合があるということだと思います。その点に関してはヨハネスブルグ・サミットでも表面化しましたし。しかしながら、最近の様子ですと、先進国と途上国の間というよりも、アメリカとEUの間で意見の対立が目立っている感がありますが。ちょっと、台湾と関係の無い受け答えで申し訳ありません(笑い)。




●台湾を訪問して―


― 環境問題にとらわれず、今回台湾を訪れての印象など聞かせてください。みなさんはとくに夜、町に出て行かれたようですが、一番元気だった?橋澤君から(笑い)、その時の印象も含めて。


食事中にハイ、ポーズの橋澤君 【2002年11月1日、中信大飯店で】

アジア的よりも日本的に感じた ≪ 橋澤

橋澤:台湾を訪れたのは今回が初めてですが、台湾のイメージとして、香港などアジア的な雰囲気を抱いていたのですが、実際に行ってみるとむしろ日本に近い雰囲気であることに驚きました。特に台北はきれいな地下鉄も走っていて、想像以上に近代化されていました。しかし、夜、街へくりだし、屋台が軒を連ねているところを歩いてみると、見慣れないお店が多く、やはり日本とは違う、どこか異国の情緒を感じました。

誤解のないように申し上げておきますが、一番若いから元気があるので、夜になると元気が出るという事ではありませんので、念の為……(笑い)。


― それは失礼しました(笑い)。林君も繰り出した方だと思いますが、どうでしたか?




夕食会で手拍子を取る左から林、橋澤、安田さん 【2002年11月2日、中山大学で】
街のごみは少なく、日本よりきれい ≪ 林

:気候は温暖ですごしやすく、治安も安全で良いところだと感じました。夜遅くに外を歩ける場所は海外では初めてだったので、非常に驚きました(笑い)。それから街のつくりや雰囲気が日本に似ている感じがしました。一方で大気汚染がひどく対策の必要を感じました。ただ、街はゴミがあまりなく日本よりもきれいではないでしょうか。







好きな所だが政治的な不安定さには懸念 ≪ 村上

村上:台湾は、台湾の廃棄物政策を研究している関係で、おそらく7回か8回目くらいです。台湾という国は、大好きです。台北も人が多すぎるのは一部分だけだし、高雄や台南は居心地がよく、適度に都会で好きです。前向きで元気な人々の気質も、私によく合っています。半年ほど住もうと思ったほどです。ただ、それは若者同士の話です。お世話になったオトナの人々は、ある程度社会的地位のある人しか知りません。確かに私に対しては、すごく親切な方々なんですが、その方々には、かなりの政治色が感じられます。激しい選挙活動にも見て取れるように、勢力を握ることに、かなりの思い入れが感じられます。

不安定な国家という性質がそうさせるのかもしれませんが、将来的に今の友達と思っている人たちも、おそらくエリート路線を歩む人たちなので、もしもそうなってしまうことを考えたら、ちょっと嫌です。



都市部と郊外で印象に大きな違いが ≪ 照沼

照沼:台湾は2度目です。前回は2年前になりますが、2週間ほどかけて台北・台南・高雄・小琉球を巡りました。今回はAPNECの会場であった高雄と茂林の多納を訪れました。印象としては、都市と郊外に分けられると思いますが……。

― それでは、都市から……。

発表を聞く桑原さん(手前)と照沼さん 【2002年11月1日、中信大飯店で】
照沼:都市部は大気汚染・河川汚染はやはり相変わらずに酷い状態ですが、徐々に改善に向かっていると聞いたので今後に期待したいと思います。街全体は投捨ゴミが減り、清潔になっていたように思います。また、台湾特有の情熱的な雰囲気は相変わらずでしたが、その源であろう料理屋台が減ったような気がしました。公が衛生を気遣って屋台の減少政策を行っているということを耳にしましたが、屋台の存在を廃止するのではなく、衛生的な屋台を心がけるということはできないのでしょうか。人々のパワーの根源であろう屋台がなくなってしまうことが、台湾、ひいてはアジアの独自性を失ってしまうことに繋がってしまうように残念に思います。

一方、郊外は台湾南東部の離島である小琉球と台湾アボリジニの住む茂林の多納しか存じておりませんが、原色の織り成す光景が眩しいまでに綺麗で自然の豊かな気持ちの良いところです。この2ヵ所では、多くの台湾の方々とお話しすることができました。どこの地域でも言えることでしょうが、やはり自然の多いところの人々は、心に余裕を持つことを体得しており、私は彼ら彼女らから勝手に生命力のようなものを吸収することができました。社会環境が人間環境と直ていることを痛いほどに感じました。

桑原:日本の高度成長期にもあった光景なのだろうと思いました。市内や湾岸あたりに高層ビルが立ち並び、立派なビルに目をやればほとんどがゼネコンのビル。地盤地下が激しく、スモッグはひどいし、何といっても川・下水の汚染、悪臭はひどいものでした。

― 桑原さんは、朝、ジョギングをされていましたね? ナマの空気はどうでしたか?



台湾がどの方向に向かうのかに強い関心 ≫ 桑原

立教大の恩師・渡辺教授(右)と岡田教授(左)とともに受付をすませた桑原さん 【2002年11月1日、中信大飯店で】
桑原:朝、愛河に沿ってジョギングをしましたが、皇居あたりのほうが、空気はよほど澄んでました(笑)。

一方で市民の生活には活気があり、台湾全体に生きる強さを感じさせられました。余談になりますが、街中には「美語」(英語)学校が多く、本屋ではフロアーの半分が英語学習コーナーで埋め尽くされるほど、台湾の語学教育が進んでいることもその一例です。 しかし、受験戦争でこぼれた子供の自殺が絶えないとのこと。どこかで見た光景ですね。 環境問題と欧米化、このような直接関係ないと思われるようなところでも、実は深刻な問題を抱えることになるのかもしれません。その欧米化も欧州と米国では、向いている方向が異なっていますから、今後、台湾がどちらの方向にベクトルを向けているかに関心があります。余談になりますが、いま、世界の共通語とも言える「持続可能な社会」も、米国では、「経済が持続可能であること」という解釈のようですが、欧州の考え方は、地球そのもの、そして人や自然が生きゆく尊さを重んじていると聞きます。台湾には、今回私も感じることができた人間のあたたかさと、自然の豊かさを将来に引き継いでもらいたいです。     



行政機関での若手活躍と光化学スモッグが印象的 ≫ 安田

― 安田さんたちは寺西先生とAPNEC6の前に台北などを回って来られたわけですが、そこで感じたことはどういうことでしたか?

台湾のアポロジニーの手編みのキャップを被る安田さん(右)と瀬戸さん 【2002年11月1日、中信大飯店で】
安田:台湾は小学生の頃に家族旅行で来たことがありますが、よく覚えていませんので、実質的には初めてのようなものです。

台北では台湾の環境保護省と、台北市の環境保護局のヒアリングを行ってきたのですが、行政機関で若手の方が活躍していらっしゃるのが印象的でした。政治戦略の一環として若手人材の起用が活発だという話を聞きました。日本の若手も負けていられませんね。

それから、空気が悪いなと感じました。台北に到着したときに、まずオートバイの多さとその排気ガスが気になりました。若い子たちは私たちが自転車に乗るような感覚でオートバイを利用しているようでしたが、みんな排気ガス対策としてカラフルなマスクをしていましたね。台北から移動して高雄へ近づくにつれて、視界がぼんやりしていくようで、光化学スモッグかなと思いました。以前はもっとひどかったというので、驚きました。



気になった「汚染」での日本の後追い ≪ 関

:会議以外の日程で台北の自動車リサイクル街とも言うべきところに行きました。宮城大洋さんに案内されたんです。ほんとうに面白かった。日本でも同じような自動車の中古部品なんかを専門に扱い、解体する業者が集積していた「たてかわ」という江戸川区の一角があったそうです。

たぶんその「たてかわ」というのはこういうところだたんだろうというのが分かりました。まさに、日本の「後追い」をしていると感じました。

もちろんそこでは廃液の垂れ流しをしているわけです。大企業が行う甚大な被害を引き起こすものとは違って、まだまだ、牧歌的な「汚染」ではありますが(笑い)。

そこでは日本から中古の部品やらエンジンが入ってくるわけで、日本とつながっているのです。単純な廃棄物輸出とは言えませんが、それをどう捉えたらいいのだろう? 単純に日本で使えなくなったものの「効率的」利用として捉えていいのか? もしそれが環境面から不備があるものであったら? それでも「ところ変われば財」と肯定してしまう?……

正直言って分からなくなってしまいました。



官僚に米国留学経験者が多く、日本との差感じた ≪ 瀬戸

カラオケに手拍子で盛り上げる左から廖さん、瀬戸さん、村上さん 【2002年11月2日、中山大学で】
瀬戸:台湾に行ったのは初めてでした。数年前に中国を旅行していたので、そのコントラストが面白かったです。やはり経済的に豊かであることを強く感じましたが、中国の文化に日本の足跡が混在しており、これにアメリカの強い影響があるのがとても印象的でした。会議中はホテルにいたので、あまり台湾を見てきた気はしないのですが、環境省を訪問した際、アメリカの教育を受けている方が多く、日本の官僚との差を感じました。





●将来の進路は?―


― いい機会ですので、みなさんのこれからの進路について聞かせてください。定めているか、いるとすればどのような方向に? 思案中とすれば、どのような仕事がしたいと考えているのでしょう?



現場に直接触れる生き方したい ≪ 安田

安田:もともと学部生の頃にNGOに参加していまして、そこでの活動を通して自分の未熟さを痛感したことが、大学院に進学するきっかけでもありました。ただ、将来研究者を目指すということと、NGOとして活動することは、目指す社会像は同じだとしても別々の進路だという感があったのですが、今はNGOとしての研究者や弁護士という生き方があるのだと思っていますし、そういった生き方に大変魅力を感じます。どんな道に進むにしろ、現場に直接触れるということを大事にしていきたいです。



研究者の道に進みたい ≪ 林

:一応、研究者になれるように努力しているつもりです。もし違う道に進むとしても自分の考えを持って、できるだけそれを貫けるような場所で仕事がしたいとは思っています。



研究者として運動にかかわりたい ≪ 関

:優秀な研究者として運動にかかわりたい。かといって運動の観点から批判してはダメで、学問的にも力量をつけていかねば、研究者と言えないし、なによりも運動する側にとても何の役にも立たない。なんとも、今の私の力量でははなはだ怪しいですが、頑張りたいと考えています。



桑原:目下思案中ですので、具体的にはノーコメントにさせてください(笑い)。



「沖縄」にかかわっていきたい ≪ 照沼

照沼:沖縄の文化、特に近世文学を中心に研究をしていますので、どういう形であれ沖縄にかかわってゆきたいと思っています。大きいのか小さいのか良く分からない枠の中で思案中です。



「環境に関する仕事」で思案中 ≪ 村上

村上:今、博士課程4年目で、非常に悩んでいます。研究者の道は厳しく、今のところどの大学の公募にも合格していませんが、研究を捨てる決心はついていません。現在、将来の選択肢を広げるために、学校を休学してシンクタンクでアルバイトをしています。研究者には向いていない、と言われ続け、何が向いているかもわからずに博士課程まで来てしまったので、自分を見つめ直しています。研究でもフィールドワークが多く、おかげで研究を楽しいもの、と思えたので、じっと机に座っている環境研究者ではなく、常に社会との交わりを大切にし、現実を見据えて環境を見ていくことができる仕事ならば、自分に向いているかもしれない、と少し考えています。

今までの知識を活かして、研究者、シンクタンク研究員、アドバイザー、ライターなど、環境に関することを見たり考えたりする仕事につきたいです。ただし、環境監査などの仕事は、金儲け以外の何者でもないと思うので、嫌です。



当面は院に進み、問題構造を学びたい ≪ 橋澤

橋澤:現在、大学4年生なのですが、卒業後は一橋大学大学院への進学が決まっています。そこで、さらに勉強を進めてゆくつもりです。今、卒論の執筆中ですが、日系資本が進出先のタイにおいて、情報公開も不十分で、住民の意思決定も考慮しない形で発電所の建設を進めている問題を取り上げる予定です。こうした問題は、単に企業のモラルとして片付けられるものではなく、構造的な問題があると考えています。それはたとえば、ODAやアジア開発銀行の融資にも存在するものです。こうした問題に対して、外側から監視するようなNGOにも興味がありますし、融資する側の政策転換に内部から発言するということにも魅力を感じています。問題構造について学び、修士課程を修了した後は、こういった問題の現場に直接関わっていけるような職業につきたいと思っています。



シンクタンクで環境問題の解決に貢献したい ≪ 瀬戸

瀬戸:シンクタンクに就職が決まっています。研究員という肩書きですが、仕事の内容は民間と行政、両者が実現できていないことを、新しいビジネスとして立ち上げていこうというものです。これにはもちろん環境問題も含まれてきます。大変大きな夢ですが、ここでの仕事を通じて、少しでも多くの主体を巻き込んで、環境問題を解決していける社会の仕組み作りに貢献できればと、今からとても楽しみにしています。今回のAPNECに参加できたことも、今後のお仕事の中に有形無形に活きてくる私の大きな財産だと考えています。

廖さん(右側立つ人)と宮城君(同・左)の"台湾勢"も加わっての記念撮影 【2002年11月3日、「中信大飯店」で】


― 広範囲にわたり、率直なご意見をありがとうございました。APNEC関連では、今後に反映されるように、そして、みなさんの今後の進路については思いが少しでも実現することを祈っています。














 
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