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難しい「子供の健康」と化学物質の関連付け = 第5回「環境ホルモン」国際シンポに出席して =
三菱化学株式会社 西川洋三
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環境省主催の第5回「環境ホルモン」国際シンポジウムが2002年11月26日〜28日、広島国際会議場で開催された。 西川洋三さん(三菱化学)が出席した感想を以下のように寄稿(写真も)してくれた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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主要テーマは「子供の健康」 今回のシンポジウムの主要テーマは「子供の健康」と「甲状腺・カエル」である。 この2つがテーマになったのは次の理由によるものであろう。 「環境ホルモン」の次は「子供の健康」が問題になるのであろうと予想する人が多い。私もその一人である。 子供にアトピー性皮膚炎が増えている。 落ち着きのない子供が増えている。これらのことに化学物質が関係しているかもしれないという問題である。 化学物質が関係しているとは、私は思わない。しかし、関係していないという証明も難しい。これからは難しい問題が多くなる。 オタマジャクシがカエルになることを変態という。この変態は甲状腺ホルモンの働きで起こる。 甲状腺ホルモン作用の検出にカエルの変態が使われることから、「甲状腺・カエル」とくくられる。 シンポジウムの開催地にある広島大学には著名な両生類研究所がある。「甲状腺・カエル」がテーマに選ばれたのは、 開催地が広島であったこと、甲状腺ホルモンは子供の健康にも関係していることが理由であろう。 テーマの選定は適切であったと思う。しかし、昨年にくらべて、この分野での新たな進展があったとは思えなかった。
進展があったからテーマに選定したというより、今後これらのテーマを問題にしますよ、
これらのテーマに予算をつけますよという予告であろう。
岩本教授からは日本での生殖機能調査結果の紹介があった。次の表は、妊婦の配偶者352名と若年男性335名についての平均値である。
若年者の方が精子濃度は低いのかと思ったが、岩本教授の説明によると、 これらは生データであり禁欲期間などの補正をしない比較はできないと慎重である。補正とは、たとえば次のことがあるそうだ。 正確な比較をするというのは難しいのですね。
「尿道下裂とビスフェノールA」 横浜市立大学教授・平原史樹 「尿道下裂児を生んだ母親の血中ビスフェノールA濃度は0.82 ng/mlで、 一般妊婦の血中ビスフェノールA濃度である0.40 ng/mlにくらべ約2倍高いことが明らかになった。」という内容である。 この発表が本シンポジウムの目玉として扱われプレスにも紹介された。11月29日朝刊各紙に掲載されたので、ご存知の方も多いと思う。 なお、尿道下裂は男性生殖器が十分完成せずに生まれる異常である。 しかし、この研究には基本的な欠陥がいくつもある。日本の環境ホルモン研究によくみられる欠陥である。
こういう研究が目玉となるのが本シンポジウムの特徴である。どういう欠陥か以下に説明する。
尿道下裂が生じる原因には、多くの要因が関係しているはずである。 ビスフェノールA(BPA)に的を絞るという科学的な理由はないにもかかわらず、BPAだけを測定している。 仮に、BPAが原因であるという作業仮説に立つとしても、他の要因についても調査しておかないと解析のしようがないであろう。 日本人の尿道下裂の発生率は西洋人の1/10である。私なら、なぜ発生率が10倍も違うのかを検討できるような調査を行なう。
PCBやダイオキシンは体内半減期が10年程度と長いから、1回の測定値を生涯の暴露状況の指標として使える。 しかし、BPAの血中半減期は6時間と短い。BPAの新たな摂取がなければ12時間後には1/4に、24時間後には1/16の濃度になってしまう。 1回測定しただけではその瞬間の濃度しかわからない。 おそらく、平原教授はビスフェノールAとダイオキシンの違いがお分かりになっていないのであろう。
数年前に尿道下裂児を生んだ母親は、数年前に正常児を生んだ女性と比較すべきである。妊娠中の女性と比較するのはおかしい。 比較すべきでないものを比較している。 尿道下裂児を生んだ母親には、16年前に生んだ母親も含まれている。現在の血中BPA濃度を測定しても、
16年前の血中濃度を推定したことにはならない。
この種の研究は、分析値が正しいことが命である。分析値が正しければ、データは何かの役に立つかもしれない。 しかし、分析値が間違っていれば害を撒き散らすだけである。 分析手法の正しさの検証がきわめて重要であるが、この研究には検証に力を入れた跡がみられない。そう考える理由を以下に示す。
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