swave logo (←home)
cover





=2つのダイオキシン被害者支援センター立ち上げる=





4月から6月にかけて、ダイオキシンを“元凶”とする被害にあった被害者を支援しようというセンターが相次いで立ち上げられた。一つは「ベトナム枯葉剤被害児支援基金」。もう一つは「カネミ油症被害者支援センター」だ。まとめてレポートする。
【司 加人】


◇             ◇



▼ ベトナム枯葉剤被害児支援基金


支援の第1弾 ビデオ販売に協力呼び掛ける


ベトナム戦争時にアメリカ軍によって撒かれた化学兵器による被害は戦争が終わって30年余りたった今も、枯葉剤に含まれていたダイオキシンによってベトナム全土で100万人を超す(ベトナム赤十字社調べ)人たちに外形的障害、ガン、神経障害、免疫機能障害、流産、遺伝的な変異など様々な疾患となって影響しており、とくに戦後に生まれた子供たち15万人にも深刻な後遺症をもたらしている。
厳しく生々しい現状を報告し、協力を訴える石澤さん

これに対し、ベトナム赤十字社は被害者救済を呼び掛けており、その活動を支援するため「ベトナム枯葉剤被害者支援の会」(俗称=こぶた基金)の設立集会が2002年4月27日午後6時から、東京・池袋のエポック10で開催された。この基金の呼掛け人は原田正純(熊本学園大学教授)、矢野忠義・トヨコ(油症医療恒久対策協議会)、藤井絢子(滋賀県環境生協理事長)らで、ほかに14の団体、10人の個人が賛同し、名を連ねている。

この日の設立集会は、呼掛け人の坂下栄さん(環境科学調査オフィス)の基金設立にあたってのあいさつに続いて、浅岡一雄さん(京都大学霊長類研究所分子生理部門教官)が「野生動物・飲料品に見るフタル酸エステル汚染」と題する記念講演を行なった後、基金活動の第一弾となるビデオ『ベトナム戦争枯葉剤被害 いまだ癒されない傷あと』(日本字スーパー・VHSビデオ・30分)が放映され、改
アメリカはいずれ責任を取らされようと語る谷さん
めて鮮烈な印象を参加者に与えた。さらに、石澤春美さん(ベトナム枯葉剤被害児支援の会・ゴムの木代表)がさきに現地を視察した報告を行ない、最後に 谷洋一さん(べトナム枯葉剤被害者に連帯する水俣メコンの会事務局長)がインドのポバール報告を行なった。

事務局では、ビデオ『いまだ癒されない傷あと』の購買を通じて被害児の医療費や生活の支援、自立のための資金に役立てたいとしており、ビデオ購入を呼掛けている。

*申込先:
  こぶた基金
  〒202−0004 東京都西東京市下保谷3−17−22 
  TEL& FAX 0424−22−5188
  価格(税込)=個人:3000円、団体:5000円(梱包送料:500円)
  口座名=こぶた基金/口座番号:00140−9−158669



◇             ◇



▼ カネミ油症被害者支援センター


ダイオキシンも原因と判明し国民的規模の救援を


2002年6月29日午後1時半から、東京・池袋のエポック10でカネミ油症の恒久的な救済を求めて「カネミ油症被害者支援センター」設立集会が開かれた。

この支援センターの立ち上げは、カネミ油症が1968年に西日本一帯の1万人以上に発症し、当時は健康食品と言われたカネミ倉庫製造の「ライスオイル(米ぬか油)」中にPCB(ポリ塩化ビフェニール)が混入したためと見られていたが、最近の研究でPCBが熱媒体として使用されている間に生成した強毒性のジベンゾフラン(PCDF)が主原因で、
事務局長として活動計画など説明する藤原さん
それに極微量のダイオキシン(PCDD)およびコプラナーPCBの毒性が加わった複合汚染による食中毒であったことが判明。この因果関係を認めてこなかった国も昨年12月、坂口力厚生労働大臣が国会答弁で公式に認めたことから、被害者の中に、いつまでも沈黙していて良いのか?−という声が高まったことと、カネミ油症被害はライスオイルの中毒患者だけの問題ではない、広くダイオキシン被害を根絶することにつながるとして、恒久的な救済が必要という支援者たちの思いが一つになり、支援センター設立へと発展。そして、前日の6月28日、油症被害者6名と厚生労働大臣との初めての面談が実現したことを皮切りに、35年目にして抜本的な解決への第一歩を踏み出した。

この日は、まず支援センター事務局長に就任した藤原寿和さんが基調報告を行ない、これまでの経過、設立趣旨、活動方針と活動計画案を説明し、来年は国際シンポジウムを開催することも公表した。



● 原田正純さん講演 「50−60人でもでも良い。徹底した検診で病像つかもう」

苦しみを訴えた被害者(左側の3人の女性)を前に講演する原田さん

続いて、原田正純さん(熊本学園大学教授)が「カネミ油症被害者の現状から見えてくるもの」と題して、概要次のような記念講演を行なった。

  • 今、振り返ると、胎児性水俣病の研究に取組んでいたが、人類初の胎内中毒という事例との関係から胎児性油症に強い関心を持っていたが、簡単には症状がつかめなかった。そして、他のことにかまけて、ある時に矢野トヨコさんから連絡をもらうまで追跡をやめてしまった。その点に関して、医者として研究者として責任を感じている。

  • カネミ油症は一口で言えば“病気のデパート”だ。自律神経障害を中心とした全身症だ。

  • 90年に他の用事で韓国へ行った際、陸軍病院関係者から面会を求められた。話は「韓国の若者が36万人ベトナムへ行き、枯葉剤を浴びた。うち4万5000人が検診を受けたが7.4%に後遺症が認められ、50%が疑いあり、経過観察が必要である」ということだった。

  • 問題はこれからどうするかということだ。大きく言って2点ある。第1は、被害者救済には科学的な解明を進める事。しかし、100%できないからといって手をこまねいてはいけない。第2は、そのためには50人でも60人でもよいからきちんとした検診が必要だ。それによって、新たな病像がつかめるはずだ。7月にやるということだが、とにかく一から出直すべきだ。

    【注】その後、厚生労働省の全国油症治療研究班(班長=古江増隆九州大学教授)は7月23日、カネミ
       油症事件の被害者の血液中に含まれるダイオキシン類濃度を測る全国調査を長崎県で開始した。

  • カネミ油症はPCBだけが原因ではない。ダイオキシンも影響している。その意味では今がチャンスだ。行政が何をするかをみんなでチェックする必要がある。
全社会的に捉え、1日も早く解決すべきだと説く川田さん


● 川田龍平さん激励 「被害者だけの問題ではない。結集しよう」


続いて、自らエイズ患者であることを公表した川田龍平さん(人権アクティビストの会代表)が「薬害や公害に対する国の責任は常にあいまいにされてきた。これらは絶対に被害者だけの問題ではなく、みんなの問題として捉え、対応すべきだ。カネミ油症支援センターの立上げもその一つとして結集して欲しい」と激励のあいさつをした。



舌鋒鋭く行政の対応などを批判する矢野さん
来賓のあいさつの後、矢野忠義・トヨコ夫妻(油症医療恒久救済対策協議会)や松野尾由香里さん(胎児性油症被害者)、重本加名代さん(未認定被害者)ら患者が次々と壇上に立ち、これまでの苦しみ、悲しみ、国や行政の非情な対応への批判などをこもごも述べ、約100人の参加者に訴えた。


休憩の後、台湾の状況報告など原告1290人のうち829人が国から返還を求められている、いわゆる仮払金について、弁護士の保田行雄さんが「法的決着はついたが、社会的決着はついていない。国は時効(10年)になる1年前に“国の債権”として取り立ててきた。患者・被害者の苦しみを無視した法のみを振りかざした措置で、今後、東京地裁で2年をかけて調停に持ち込んでいきたい。この問題は患者さんからは言い出し難い。社会的問題として取組むべきだ」と述べた。




↑戻る