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第4回「環境ホルモン」国際シンポジウムに参加して |
【寄稿2】 社会科学系など多層な分野とのリンク胎動 |
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青柳 優 (専門紙記者)
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シンポジウム初日の一般向けセッションで行われた特別講演でストックホルム大学のボーヤンセン教授は残留性・生体内蓄積性の高い物質については予防的措置の考えが取り入れられ始めていることを報告した。同教授は「POPs-残留性有機汚染物質」と題した講演で、化学物質の影響を見る視点としてP(残留性)、B(生体内蓄積性)、T(毒性)を上げ、とくにPとBの影響を重視した。「こうした物質への関心が高まり、ストックホルム条約(POPs条約)を初めとする複数の国家的プロトコルが確立されてきている」とし、さらに「PBのうち(最も影響度が高い)vPvBについては、現状では有害性が確認されていなくても制限すべきである」との考えを示した。予防的措置(予防原則)の考えに立っての取り組み・規制だが、その理由について教授は「こうした物質について毒性が全く無いことを証明することは不可能であり、これらの物質が環境中に拡散してしまったあとでは、その毒性が分かっても、すでにこうした物質を排除することが不可能であるため」だと説明した。欧州を中心に、すでにこうした予防原則に立った化学物質対策が進展していることが明らかにされた。 予防原則については、産業界からの批判的な見方がいまでも続いている。科学的な根拠がないのに過剰な規制を行うのは化学物質のベネフィット(有益性)を捨てることになるとするもので、そこまでやる必要はないとの考えだ。だが、教授が指摘するようなvPvBについては、すでに様々な影響が指摘されており、今後の対策では予防的措置の考え方は基本になっていくだろう。 日本における取組の現状では千葉大学大学院の森千里教授が「内分泌撹乱化学物質の日本におけるヒト胎児複合暴露の現状」で、「臍の緒や臍帯血などの調査から胎児が多くの化学物質に暴露していることが分かっている。胎児は自分でリスクを回避できない。リスクはとくに胎児で大きい。このリスクを減らすためには総量として暴露量を減らすことが重要で、そのためには新しいリスク評価の確立、効率的にリスクを削減するリスクコミュニケーションの手法確立が必要」と、新たな対策の方向性を示した。 また、残留農薬研究所の青山博昭生殖毒性研究室長は「内分泌撹乱作用が疑われる物質の低用量における影響評価の試み」で、同研究所が提唱しているトランスジェネレーションアッセイ試験法(改良型一世代生殖試験)の有効性を確認したことを報告するとともに、この試験法での低用量影響の確認では「遺伝子レベルでみると一番低い用量から反応が始まっており、その動きは直線的。(低用量で影響が現れ、用量が増えると一旦影響がなくなるという)逆U字現象は観察されなかった」と発表、さらに「この反応は生体的反応であり、影響ではないのではないか」とした。こうした逆U字現象については、今回は新たな知見などの報告は行われなかったが、実際の環境中に存在しているような濃度レベルである低用量での影響については、国立医薬品食品衛生研究所の菅野純毒性部室長も「内分泌かく乱化学物質問題におけるスクリーニング手法と先端科学・技術」で、「低用量問題で言われている用量域は内分泌学的には低いものではなく、現行の毒性試験法での観察可能用量域より『低用量』であるという意味」だとし、低用量での影響の有無を調べるには、これまでの毒性試験手法とは異なる手法が必要であるとしている。 パネルディスカッション「環境ホルモン21世紀・開かれたアプローチをめざして」では、東京大学大学院の合原一幸教授が「環境ホルモンと非線形科学」と題したプレゼンテーションで、複雑系科学からのアプローチの可能性についてコメントし、内分泌撹乱作用の有無の実験や研究などについても非線形科学からとらえることの興味深さを語った。こうしたアプローチも含めて、内分泌撹乱化学物質の問題には、自然科学系だけでなく社会科学系も含めた様々な分野からのアプローチが必要といえる。 「環境ホルモン問題」と言われるものが、すでに総体として社会問題であり、それに関心を持つ人々が多様な層に広がっていることをみれば、特定領域の科学だけで対処できるものではなくなっている。そのような意味において、千葉大学大学院の森教授が化学物質のリスク回避に向けた取り組みの一つとして、リスクコミュニケーションをベースとする対応システムの構築を提案したことは、多層な人々をこの問題にリンクさせる重要なカギとみることができるだろう。 今回のシンポジウムでは、このほか、「脳神経系機能発達への影響と作用メカニズム」「スクリーニング・試験法」「HTPS/QSAR(ハイスループットスクリーニング/構造活性相関」「トキシコジェノミクス」「野生生物への影響」「健康影響」「海外の取組の現状」のセッションで報告が行われた。 「脳神経系−」は胎内での化学物質暴露や出生後暴露が成長に影響を与えているのではないかとされるもので、児童の学習障害やADHD(注意欠陥多動性障害)などをその影響とするものだ。セッションでは米国EPAのデボラC.ライス上席毒物学者が「学習障害および行動障害における環境由来の神経毒性物質の役割を示す証拠」で、「ADHDに見られる行動や認知の発達に対する影響が、神経毒性物質である鉛やPCB類に発達期に暴露された結果の障害と一致する」と、様々なテスト結果を示し、環境中の神経毒性物質がこうした障害に関与している可能性を示唆した。
ただ、こうした脳神経系への化学物質の影響については、その作用を含めて未解明の部分が多く、また、化学物質以外の要因による影響が多いと見られることから、さらに幅広い領域、様々な分野にわたっての総合的な研究からのアプローチが必要だ。
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