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第4回「環境ホルモン」国際シンポジウムに参加して


第4回の内分泌撹乱化学物質問題(環境ホルモン)に関する国際シンポジウムが、2001年12月15日から17日まで茨城県のつくば国際会議場で開かれたが、参加した2人の専門家から寄稿を得た。異なるジャンルからの両氏の感想は興味深い。




【寄稿1】 研究費増に比例? 発表件数25%も増える
三菱化学環境安全部部長 西川洋三



あいさつをする橋本昌・茨城県知事(壇上)
 2001年12月15日(土)から17日(月)まで、つくば国際会議場で頭書のシンポジウムが行われた。また、これに併せて14日、15日の両日に環境ホルモン学会の研究発表会も行われた。

 もともと関心が薄れているところに、アフガン問題、狂牛病、不景気などビッグなテーマがあるためか、シンポジウムに対するマスコミの関心度は極端に低かった。しかし、研究のために多額の予算がついているため、研究者の関心は更に高くなっている。学会発表の件数は昨年度より25%増しとなった。参加者約500人の大半は研究者と思われた。

 発表内容の新しい傾向は、毒性の解析手法としてDNAチップ、毒性の研究対象として甲状腺への影響が注目を集めるようになってきたことである。



◇ ◇ ◇



DNAチップ(毒性解析のための新しい手段)

 遺伝子解析を毒性問題に役立てることをトキシコゲノミックスという。遺伝子解析自体は第2回シンポジウムから主要テーマの一つになっている。新しい傾向というのは、遺伝子解析の具体的手法として、DNAチップ(DNAマイクロアレイともいう)が登場してきたことである。チップに例えば1万の遺伝子をのせて置いて、その発現状況をコンピューターを使って解析することで毒性の特徴を知るという手法である。分子生物学などの進歩を駆使した手法で期待をいだかせる。この1年の間に爆発的に注目を集めるようになった。新しいDNAチップを開発したとか企業化したとかのニュースも新聞によくでている。

 毒性のメカニズムを解析するのには役立つだろう。しかし、動物を使った試験が必要なくなるかのように言うのは期待しすぎと、私は考えている。しかし、私がどう考えようと、DNAチップという言葉を見ることはますます多くなることであろう。


子供の健康問題

 米国では、環境ホルモン問題はほぼ終わって、子供の健康問題の方に関心が移行しつつあるらしい。日本では、環境ホルモン問題の一部として、子供の発達障害―学習障害(LD)や注意欠陥多動症(ADHD)―と化学物質の関連が問題になるのではないかと私は予想している。そして1年半前からこの方面の勉強をしている。生殖への影響の主役は女性ホルモンであるが、子供の発達障害では甲状腺ホルモンが主役となる。

 シンポジウムでは、はじめて「脳神経系機能発達への影響と作用メカニズム」というセッションが設けられた。また、環境ホルモン学会のポスターセッションでもこれに関連した発表が目に付いた。この分野への関心が少しずつ高くなってきている。


野生生物への影響

 環境ホルモンに関する研究は、「研究のための研究」だと思う。現実に問題が起こっていない、起こりそうにないのだから、成果が上がるはずがないと私は考えている。研究手法の進歩には役立っているかもしれないが。 実際、日本では毎年100億円近い税金を使いながら何も成果はないように思える。

 唯一の例外は「野生生物への影響」のセッションであった。野生生物には(特に外国では)異常と思える現象が生じているからだ。この方面では地に着いた研究が行われている。
日本の研究者からも、和波(東京環境科学研究所)、藤井(瀬戸内水研)らの魚のメス化に関する優れたフィールドワークの発表があった。これらの研究結果を発展させる仕事を、他の研究者に望みたい。フィールド調査の結果からは、原因物質は尿由来の女性ホルモンであることを示している。それにも係わらず、ノニルフェノールやビスフェノールAを現実にはあり得ない高濃度で試験することしかしない。これでは成果が上がるはずはない。


行政の悩み?

 行政関係者の話は、型どおりで面白くないものだが、今回は私の注意を引いた。茨城県知事の挨拶の中に次の話があった。大阪の先生(注:宮田摂南大学教授)の分析では、某廃棄物焼却炉周辺の住民のダイオキシン濃度が100pgで非常に高いと騒ぎになった。それでより多くの住民について、日本とドイツの試験機関で分析した。その結果は10pgだった。この分析費用に5千万円かかった。私の故郷でも焼却炉周辺の住民が騒ぎ、住民のダイオキシン濃度を測定せざるを得なくなった。その分析に9百万円かかった。という話を聞いたことがある。宮田教授が精度の悪い分析結果を発表したために、全国ではどれだけ多くの税金が無駄に使われたことだろう。

 次は環境省の岩尾部長。平成13年度の環境ホルモン予算は96億円である。(そのうち環境省は18億円、文部科学省は20億円。)研究者の層の薄さが悩みである。一方では、省庁間の研究が重複しているのではないかと非難される。日本人は熱しやすく冷めやすい、狂牛病に関心が移ってしまった。8月に発表したノニルフェノールのリスクアセスメント結果に対して、精巣卵をベースにしたのはおかしいとの意見も届いている。

 環境ホルモン騒ぎが起こったおかげで、多額の予算が獲得できたと行政は内心喜んでいるのであろうと私は勘ぐっている。しかし、知事や岩尾部長の話を聞いていると、行政には行政の難しさがあることを知り親しみを感じる。


井上先生の座長はきびきびしていて良かった。

 井上先生(国立医薬品食品衛生研究所)は、座長を勤めたセッションで、発表者の持ち時間が10分から20分と短いこともあり、時間を効率よく使うため次の指示を行った。 そのため会場にピリッとした雰囲気ができた。

  • 座長は演者の略歴の紹介をやめる。略歴は要旨集に記載しているので読むこと。
  • 演者は「発表する機会をいただき有り難う」などは言わずに、すぐに本題に入ること。
  • 質問希望者は、指名されてからでなく、あらかじめマイクの前に立っておくこと。
一方、環境ホルモン学会で座長を勤められたときは、若い演者を励ますような適切なコメントをしていた。シンポで発表する一流の学者に対しては厳しく、学会で発表する若手には優しくと使い分ける。井上先生に座長賞をさしあげたい。