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「環境紛争処理北京WS」(4)

 〈総評〉
 北京WSを傍聴して―




「環境紛争処理中日国際ワークショップ」(北京WS)にオブザーバーとして参加し、全日程4日間をメンバーと共に消化させてもらって感じたことをまとめてみたい。
【司 加人】


⇒  ⇒



⇒ 日中関係者の努力にまず敬意を表したい ⇒

今回を含めて、4回にわたったレポートを通読していただくことでご理解いただけるはずだが、大塚健司さん、相川泰さんの事務局の方々と、 会場で受け付け業務をはじめ裏方としてサポートしてくれた 「北京環境ボランティアネットワーク」 のみなさんにまず最初に深甚なる謝意と敬意を表したい。この種の、とりわけ日本からすれば外国で開かれた会議には目に見えないことも含めて、 これらの人たちのボランティア・サポートは非常に大事である。


⇒ 杞憂に終わった開幕までの懸念 ⇒

このワークショップ、初めての試みであるだけに、日本側参加者には程度の差こそあれ、「実のあるWSになるだろうか?」という懸念、 心配があったことは事実だろう。中でも「情報の開示」というキーワードには、中国を1度でも訪問し、中国との接触経験のある人は ことごとく経験したと言っても過言ではない「中国側は本当に情報を開示してくれるのか?」という基本的なところでの疑問は拭い切れなかった はずだ。複数のインタビューで分かるように、日本側を代表する 淡路剛久さん、 寺西俊一さんですら直前までその懸念を持っていた。永井進さんは「それでも仕方がないと思って、北京に来た」と北京滞在中に述懐してくれたが、いわばこの思いは日本側共通のものであったことは間違いない。
しかし、幸いにして、と言うよりむしろ予想をはるかに上回るレベルの中国側の今回の対応であった。それは「逆に、こんなに我々に開示していいの? とすら思った」(相川さん)に集約される。この点に関しては「杞憂に終わった」の一言に尽きると言って良いのではないか。
報告者の確定についても、蓋をあければ中国側のメンバーのリストを見て「本当に出席してくれるのだろうか?」という人もあったらしい。しかし、逆に日本側の有力メンバーの先生が直前になって、アメリカでの同時多発テロの影響(現にUA機を予定していた人は変更を余儀なくされた)ではなく、「どうしても行けない」ことになり、開幕前夜に座長の組換えなどが行われたという皮肉な現象があった。


⇒ 象徴的だった被害者と現役裁判官の赤裸々な声 ⇒

杞憂をもっとも払拭し、払拭どころか感動させてくれたのが内蒙古から長時間かけて参加してくれた排気ガス汚染被害者の韓 祥さんと、河北省の現役裁判官の呂忠梅さんであった。
とりわけ、韓さんの心からのアピールには日本側参加者はこぞって感動させられたし、おそらく中国側の一部の関係者にも何らかのインパクトを与えたと考えられる。韓さんがセッション報告した第1日の夜の中国側歓迎宴での時だ。韓さんが日本側のテーブルに足を運んできて、言葉を交わし、乾杯した時の原田正純さんの涙を流さんばかりの表情がそれを如実に物語っていよう。
呂さんの報告や質疑の際の発言、インタビューにも日本側の多くのメンバーは衝撃さえ感じたはずだ。現役の裁判官が自国の司法の実態をあれほどまでに外国人に話して良いのかという素朴な驚きと、少し冷静になって考えると、そういうことができる中国になったのだというある種の感慨が重なっての衝撃と言って良いだろう。


⇒ 日本側被害者の"感想"も実感溢れていた⇒

今後、ともに携えていきたいと総括した太田さん

実は、制作上の都合で"手抜き"をした部分がある(その部分を除けば計4回のこのルポは北京WSの全容を記録していると言って良い)。 セッションの最後の段階でのやり取りの部分だが、ここでは座長の「フリーに話して欲しい」との求めに応じて何人かの人が手を上げたが、 この中で日本側の被害者代表が発言している。報告も行った 森脇君雄さんと、太田映知さん(全国公害患者の会連合会事務局長)の"感想"には実感が溢れていた。

森脇さんは「2日間で大まかなことが分かった。もし自分なら何ができるかを考えた時、王先生の率いるセンター(CLAPV)の役割はものすごく大きいと感じた。同時に、日本で我々がやってきたことが生かされるかどうかが今後の(このWSの)課題だと思った。 患者として、来て本当に良かったと、松光子さんとともに真実そう思っている」。 そして、太田さんは「被害者から考えれば、我々が受けた被害は経済発展により生じた被害であり、被害者であると考えている。それは急速な成長と急激な工場の集積が被害をもたらしたものである。これからは"再生"の問題に取組んでいくが、加害者は結局は国ではないかと考える。再生の際に経済成長・経済発展を考えて再生をやると、また被害が出る。 これは絶対許してはいけない。そういう方向でともに頑張っていきたいと強く感じたワークショップだった」と、短いが中味の濃いコメントを述べられた。

以上は、今ワークショップの「評価したい点」である。折角の機会なので、オブザーバーという立場を省みず、「気になった点」にも触れさせてもらおう。


⇒ 事前スタディ徹底すればより高いレベルの議論可能だったのでは? ⇒

やや辛口過ぎるかもしれないが、中国側の参加者は日本の事情については、実は相当程度スタディしており、本当はその理解の仕方が正しいかどうかを、日本側参加者に評価して欲しかったというのが本意ではなかったのか?ということである。別の言い方をすれば、日本のプレゼンテーションなり、セッション報告がもしかしたら「日本のことをあまり知らないだろう」という思い込みで行われたきらいがあり、そのへんを事前にキャッチし、スタディしておけば初回であってもより高レベルの議論や相互理解ができたのではないか、ということである。


⇒ あまり格好良くない"時間の綱引き" ⇒

もう一点は報告時間に関して。ほとんどの日本側報告者は連日、講義や学会発表で、人前での発表には慣れている職業におつきのはずだが、その一人一人の報告時間がことごとくオーバーし、結局、プログラム毎の後半に押せ押せとなった点だ。座長と再三にわたり時間の綱引きをしている様は初めのうちは笑っていたが、各報告者とも同じ繰り返しとなると、不快感さえ感じた。そして、最終報告者が常に割を食っていたのは気の毒だったし、今回のレポートは"実報告記録"なので、結果的にこの程度の報告だったのか、という見方をされたら、その人たちは犠牲者・被害者としか言い様がない。用意したものはすべて吐露したいというのは人情だが、あらかじめ時間は決められているのだから、その枠にきちっと収めるのが真の"プロ"フェッサーではないのか…。


⇒ 2年後の次回以降は具体的・専門的な議論を期待 ⇒

最後に、「今後」について。
日中双方は2年後に、日本で次回WSを開催することで会期中に基本的に合意し、日本側はその資金的裏付けなどのアフターケアを行っている。多分、よほどのことがない限り開催されようが、それまでに2年という歳月を経るわけで、双方とも"ネタ"(不謹慎な表現だが、材料の意)は積み重ねられるはずで、次回はより具体的かつ専門的な、レベルアップされた議論に結びつけてほしいと考える。
もう一点は、とくに日本側の諸先生方への希望だが、研究歴40年、30年の積層は確かに尊敬に値するが、その蓄積をどう次世代に繋げるか、伝えるかということをより真剣に考えていただきたいということだ。残念ながら、それを反映したメンバー構成ではなかった。
「環境問題」はますます多岐にわたり、複雑化し、高度化する。求められる知見も並みではなくなる。若い頭脳と意欲と行動を持った人たちを育成するのも諸先生方の責務と考えるがいかがであろうか。


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ともあれ、初の「北京WS」は成功したことは間違いない。「80点」の総合点がつけらても良いのではないだろうか。
そして、最後にルポをまとめるにあたって多くの方にご指導・ご協力をいただいたことに感謝申し上げる。





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