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「環境紛争処理北京WS」(4)

 ル ポ


公害被害者法律援助センター
<ミニレポ>1) 中国政府、CLAPVの活動を高く評価

2) フォード環境保護賞の「環境教育プログラム」で1等賞に輝く

3) 中国政法大学 公害被害者法律援助センター




 

公害被害者法律援助センター

今回のワークショップの主役・王燦発さんが主宰する「公害被害者法律援助センター(CLAPV)」は中国政法大学に隣接する民間の集合住宅の一角で、日本的イメージで言えば古いタイプの公団住宅という感じだ。バスを大学入口で降り、全員がそぞろ歩いてセンターのある建物に着いた時、王さん「中に全員入れそうもないから、ここで説明します」と言って、やおら"青空レクチャー"が始まった。もしこれが近代的で、広々としたビルであったら、参加者に地に足がついている活動ぶりであることを印象付けなかったに違いない。                           

【司 加人】


【WS第4日】 2001年9月18日

地に足が付いた活動を象徴する質素な事務所

■16:30 
全員が入れないのでセンターの入口で王さんから説明が・・・
予定時刻を大幅に遅れたものの、中国政法大学の正門に着き、バスを降りる。そして、校内から隣接する「センター」のある建物へ。とくに境界線らしきものはなく、いつのまにか着いてしまった。失礼ながら、決して立派とは言えない、むしろ北京市内どこにでもある感じの外見の4階建てのアパート。入り口を入ろうとしたら、王さんが愛嬌のある目をくりくりさせながら「全員が中に入ったら身動きできなくなるから、ここで概況説明をしましょう。そして、2グループに分かれて中に入りましょう」と言い、思わぬ"青空レクチャー"が。近くの人が寄って来たり、通り掛かりの人が立ち止まったり、木々にはもずのような鳥の鳴き声が聞こえる。 そこでの王さんの説明は、この建物は本来、住宅用で個人所有であり、大学のものではないこと、センターはNGOであるので、大学の中には部屋を持てないし、かと言ってきれいなビルを借りるお金はないことなど。

■16:40
 
ぞろぞろと、結局喫煙組を除くほぼ全員が室内に入る。普通のドアの隣りに金地のプレートがかかっている。なかったら、まさに個人の家だ。部屋は3DKという感じ。まず左側の資料室的な部屋で、ふたたび王さんの説明が行われる。その概要をまとめると―

  • 相談は毎日のように持ち込まれる。(分厚いファイルを示しながら)このファイルは汚染被害者に支援を与えるだけでなく、内外の研究者にも研究の良い材料を与えられる。 政府には記録はあってもほとんどが秘密だ。ここでは誰でも見ることができる。ここに、その生きた見本がいる。相川泰さんだ(と言い、本人が訳し渋っているのを「君は通訳役じゃないか」と、笑いながら促す)。
  • 私たちが社会にサービスをするにあたり厳格な規則を作った。相談をする者と、受ける者の立場を明確にしたものだ(と言い、いわば会社の社是のようなものを書いた額を示す。
  • (壁一面のボード板に張られた内外のマスメディアのコピーを指差して)我々の行動は内外のマスコミの注目するところとなり、ご覧のようなにいろいろなメディアが報じてくれた。これらはその一部だ。『ニューヨーク。タイムス』も、さっき我々が見てきた懐柔県の事件を取り上げてくれた。



センターの活動を報道する内外プレス


王さん(右)の説明を熱心に聞く


狭い部屋に熱気が溢れる

狭い部屋に、おそらく10人以上が入り、王さんの尻上がりに高いトーンになっていく説明もあって熱気が充満してくる。許さんが部屋の換気に細かい気配りをしてくれる。 3人の大学生の瞳が輝いてくる。寺西先生と盛んにやり取りをしている。



□ □ □

被害者が貧しければ裁判費用を持つことも…

王さんが説明に一区切りつけて、質問を促す。待ち切れない感じで質問が出る。

Q:この相談票のファイルは貴重なデータと思うが、電子化してあるのか?
A:まだできていない。パソコンの容量が小さいことと記録をまとめる人的余裕がない。 もっと大きなパソコンが入り、ボランティアメンバーが増えればやりたい。
Q:被害者からの手紙は中国全土にわたっているか?
A:30の省があるが、おそらくチベット、青海省と台湾など以外からはほとんどきているのでは…(笑い)。
Q:北京以外の所に支部などを設置する必要があるのではないか?
A:必要はある。やりたい。全人大の環境部門の責任者の曲格平さんもこのようなセンターが もっと多く欲しい、と言っているが、現実には他の所に作るのは難しい。まず資金面の問題がある。 日本と違って中国には企業が汚染被害者を助けるために金を出すことをしない。 もう一つは環境法の理論と実践を理解して、的確に答えを出せる専門家は多くない。環境法を全面的に掌握していないと的確な答えはできない。
Q:弁護士さんは何人くらい?
A:常時10人くらいいる。
Q:実際にはどのような対応をしているのか?
A:いくつかのパターンがあるが、多くは相談してくる人は誰に訴えたら良いかと言うことが分からない。 行政機関が処理できそうなことで、窓口が分からない場合はそこを 教えてあげる。ある場合は、マスコミに暴露したいというニーズもある。それには記者を紹介する。我々は何人かの記者とのパイプを持っている。また、直接、裁判を起 したいという時は環境法を良く分かっている弁護士を紹介する。
Q:被害者が貧しくて費用を払えない時などはどうする?
A:これもいくつかのケースがある。弁護士費用をセンターが立替えて、裁判を起す場合。 勝って損害賠償金を獲得したら、そこから弁護士費用を支払うので、そこから返してもらう場合。 裁判費用も被害者が貧しくて払えない場合は、センターが支払うこともある。
Q:もし、裁判で敗訴したら?
A:いらない(笑い)。
□ □ □

現在の財政基盤はもっぱら外国に…

財政基盤についての質問もいくつか出たが、王さんの説明は淀みがない。ほとんどをフォード財団とか、カナダ大使館とかのこの種の問題に熱心な外国のファンドからプロジェクトの形で資金援助を得ているという。残念ながら中国国内にはまだスポンサーはいないらしい。とくに、大学との関係は「人も仕事も施設供与も、もちろん資金援助もない」と、NGOとしての矜持(きょうじ)を保っていることをむしろ誇りにしている感じだ。政府の扶助も「制度としてはあるが、実際には少額で援助にはならない」と言い切る。

各地の被害者たちから感謝の言葉を織り込んだ大きなペナントが
気になる年間経費については、「まだスタートして1年だし、確定的な数字は言えないが、大体30万元(約360万円)くらい」とのことだったが、定かではない。

説明と共に、別の部屋へ移動するが、そこにはやはり壁いっぱいに被害者からの感謝の言葉を織り込んだ大きな中国風のペナントが貼ってあり、また先に名前が出た曲格平さんの"センターの同志に敬意を表す"旨の書も飾ってあった。

■17:30
 センターを辞去。公式日程をすべてこなした安堵感と共に、ホテルへ戻った。



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●後日談
《ミニレポート》で紹介したようにごく最近、王さんのセンターについて、中国政府の評価がさらに高まっているという情報が寄せられた。『中国環境法』の報道だが、なんと言っても北京WSの成果・効果であることは間違いない。ご同慶の至りではあるが、これは一方で、同センターが政府の体制認可につながる意味も含まれていると考えられ、これがNGOとしてのスタンスとどう両立していくか注目されよう。
そして、さらに“吉報”が続いた。センターの活動が米フォード自動車から「環境教育プログラム」で1等賞をもらったという。




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