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○日中とも紛争処理解決へ向けて連携の余地大いにある○
加藤久和=日本環境会議理事/名古屋大学大学院法学研究科教授=
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| 加藤久和さん |
- 2日間、しかも幅広く、濃密な報告と議論の結果を10分間でまとめろという極めて難しい注文だが(笑い)、個人の感想ということでまとめてみたい。
- まず冒頭に申し上げたいのは、このワークショップが中日両国における環境紛争処理をめぐる情報と経験の交流を促し、今後のより良い環境紛争処理あるいは被害者救済システムのあり方について所期の目的を果たし、大きな成果をあげたということだ。
- 冒頭の王先生、淡路先生によるそれぞれの国における環境紛争処理の歴史と現状の基調報告に続いて数多くの報告が行われたが、もっとも強調されたのは環境紛争処理にあたっては被害者の権利の擁護を基本に置くということが何より重要であるということと、そのためには法学者、弁護士のみならず、医学、社会学、経済学、その他数多くの専門家、研究者と被害者との間の連帯と協力が極めて重要だと確認された。
- それはこういった連帯と協力というものが環境紛争を引き起こす原因や社会的な背景、構造を明らかにするということが極めて重要であるということに止まらず、具体的な訴訟あるいは紛争の解決にあって、たとえば因果関係とか医学的な見地からの病像あるいは被害の程度の認定等にあたってこういった人たちが重要な役割を果たすからだ。
- もちろん、具体的な訴訟案件の弁護士のみなさんの活躍も極めて重要で、いくつかの報告にあったように、日本の弁護士たちの重要な活動も紹介された。
- そして、ここ中国においても王先生のイニシアティブで環境紛争支援のための法律センターが発足し、活動しているということに深い敬意を表したい。このような輪が全国的に広がり、他の分野の人たちとも連帯、協力が進めていかれることを期待したい。
- こういった環境紛争の存在、その背景、よって来る原因等を社会に知らしめ、国民、世論の支持を受けて支援活動を続けるには報道機関等マスコミの果たす役割も極めて重要である。しかしながら、中国側の報告でも指摘されたが、中国では情報の公開が進みつつあるものの、まだまだ全国的にセンターの存在をはじめ広く知られているとは言えないようで、今後この点でのマスコミ等へのアプローチを図るという方策も大いに展開する必要があるのではないかと考える。
- とくに具体的な環境問題をめぐって争われている紛争や被害者が置かれている状況については法曹関係者の間でも十分には知られていないのではないかという印象をうけた。この点は中国における司法制度のみならず、情報の公開のあり方とか、公衆の参加のあり方とかと深く関わることなので、単純に勝手な提案をするということは許されないが、この面での更なる努力を行政当局あるいはマスコミにも期待したいところだ。
- 具体的な訴訟の案件においては故意過失の認定や因果関係の立証、挙証責任の緩和、実質的な転換、無過失責任制度の導入等については裁判所の果たす役割が極めて重要であったという歴史を日本の場合持っているが、とくに4大公害裁判と言われるものによって初めて画期的な法理論的な展開が行われ、これが新たな立法にまでつながったという経緯を持っており、これが中国における今後の環境紛争処理においても参考になるのではないかと思われる。
- 排出基準に適合していれば被害、損害があったとは認定されないのか、認定されるとしたらどういう基準に基づいてされるのかということについても両者の間でもっともっと議論すべきではないかと思う。
- 一方、日本ではこういう経験あるいはシステムを取っているからと言ってすべての環境問題、環境紛争の芽になるようなものを摘んでしまうことに抵抗しているわけではない。最大の環境紛争の例にもあげられる水俣事件は全貌がいまだに掴めていないという問題を抱えている。
- さらには環境紛争の形が変化してきて、とくに民間企業とか私人によって起される環境損害よりは行政行為が関わる問題が非常に大きくなっているが、少なくてもこれまでの裁判例では行政行為の差し止め、危害を及ぼすための差し止めを認めるというケースは極めてまれだ。これに関連しては行政機関に関するシステムが日本側から出され、議論された。
- 中国側からは、環境紛争処理の現状における問題点が多々指摘されたが、これに関しては司法の独立性や裁判官の資質の問題、行政と司法との間の関係のあり方について率直な現状と問題点の指摘があった。日本でも現在司法制度の改革に向けて活発な論議が行われているが、環境紛争の特殊性に鑑みて、時代に合った司法制度あるいは訴訟手続き等を検討する必要があるのではないか。中国においても更なる司法制度の確立と裁判に携わる人々の資質の向上に向けての努力をお願いしたい。
- 最後に、王先生を初めとする中国側の努力に敬意を払うと共に、今後も交流の機会と場が継続することを期待して私の総括としたい。
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