swave logo (←home)
cover


「環境紛争処理北京WS」(1)

 ミニレポ


《中国における環境汚染と法的対応》


環境悪化止まらず新たな局面迎える

中国における環境汚染−いわゆる公害が全体的に悪化かつ深刻化していることは中国政府自身認めている。しかしながら、公害問題を直視し、それへの取組みのために制定された法律はまだ存在しない。それゆえ、環境問題の研究者や専門家はその成立を強く望んでおり、現実に動き始めているというのが最近の状況だ。
今回の北京ワークショップを通じて取り沙汰された中国における環境汚染関連の法体系を分かり易くするためにまとめてみた。 

〈法体系〉
中国における環境関連の法律制定の流れを概観すると、1978年に制定された「中華人民共和国憲法」に環境保護に関する条項が盛られており、これに源を発する。そして―

 ・ 1979年「環境保護法」(試行)
 ・ 1982年「海洋環境保護法」
 ・ 同  年「憲法」(改正)→環境保護法の規定増加
 ・ 1984年「水質汚染防止法」(中国語呼称は「防治法」。以下同じ)
 ・ 1986年「民法通則」→環境汚染民事責任を規定
 ・ 1987年「大気汚染防止法」
 ・ 1989年「環境保護法」→79年試行法の全面改定
 ・ 1995年「大気汚染防止法」(改正法)→87年法の一部改正
 ・ 同  年「固体廃棄物汚染環境防止法」
 ・ 1996年「水質汚染防止法」(改正法)→84年法の一部改正
 ・ 同  年「環境騒音汚染防止法」→89年に国務院が制定した条例に代わる法律
 ・ 1997年「刑法」→79年刑法を全面改正し、環境汚染関連の犯罪を規定

【この項、山口彦太編『中国の経済発展と法』(片岡直樹執筆)より引用】

―となっている。 したがって、中国の環境保護法体系は「憲法」、「環境法」、単行実施法(1996年末12点)、政令(1993年末23点)、省令(同26点)、国家環境基準(95年末364点)、地方法規(1000点以上)、国際条約(93年末29点)によって構成されている。
しかし、80年代に制定された環境保護関連の法律はほとんど見直し、改正が行われている。最近では「「海洋環境保護法」が1999年に、「大気汚染防止法」(改正法)が2000年に再改正、施行されている。
そして今、「環境保護法」の更なる改正も俎上に上り、新たに「環境損害賠償法」なども立法化しようという動きが高まっており、21世紀に入って中国の環境関連法体系は新たな局面を迎えていると言って良い。

〈環境行政組織〉
環境保護関連の明確な行政組織は、1974年の国務院環境保護指導小組の設置に端を発している。そして改組や機能の吸収を経て、84年に国務院が設置した国務院環境保護委員会が小組の後身となり、さらに98年からは国家環境保護総局を頂点とする国家局、省局、市局、県局、郷鎮・街道局の5階層の環境行政組織に整備されている。

〈主な環境対策〉
中国は「人口大爆発を抑制する」ことと、「環境保護を行う」の二つの国策を定めている。中国政府の環境保護への意気込みがうかがえるが、その具体的な対策は三つの環境政策(環境保護工作の原則)と九つの環境管理制度で構成されている。
三つの環境政策とは―

  1. 新たな汚染の未然防止を「主」とし、既存汚染の除去、処理を「従」とする。
  2. 汚染者は汚染を処理し、汚染した環境を回復させる責任と義務を持ち、開発者は環境を保護する責任・義務を持つ。
  3. 法律、法規、政策に従い、法的手段、行政手段、経済手段によって環境管理を強化する。
一方、九つの環境管理制度とは―
  1. あらゆる建設事業において、環境施設が主体工事と同時に設計、建設、操業されなければならない「三同時」制度
  2. 汚染物質排出費徴収制度
  3. 環境影響評価制度
  4. 環境保護目標責任制度
  5. 都市環境総合整備の定量審査制度
  6. 汚染物質排出登記、許可証制度
  7. 汚染源集中制御・処理制度
  8. 期限付き汚染処理制度
  9. 企業環境保護審査制度
である。

このように、"国を挙げて"環境保護に取組んでいる中国だが、実際には環境の悪化を食い止められていない−というのが自他共に認めるところである。その原因は、総論賛成・各論反対的、すなわち「経済優先、環境第2」という局面がとくに地方レベルで濃厚であることだ。これは今回のWSでも明らかにされたように、環境訴訟が起された際の公正な判断(裁判)がなされていないことなどにも反映されている。しかし、それ以上に総合的な環境保護システムが十分でないことに結論付けられそうだ。
中国の環境保護政策がもたらすものは結果的にひとり中国のものではない。黄砂や酸性雨などは朝鮮半島(南北朝鮮)や日本に"直撃"する。それだけに文字通り対岸の火ではないし、情報・技術の交流・交換は益々重要性を帯びてくると言って良いし、我々も常にアンテナを張り、高度の関心を維持していく必要があろう。

   *出典:『中国の経済発展と法』の「中国の公害問題に対する法制度」(片岡直樹)
       『アジアの環境問題』の「中国の環境問題と環境保護システム」(李志東)





↑戻る