"このままでは環境NGO、NPO活動は立ち行かない"―行政改革本部が打出した特殊法人改革案では地球環境基金が全廃されるとの危機感を募らせた環境NGO15グループが10月2日、環境省に対しアピールするとともに、意見交換を行った。事務局を買って出た「あおぞら財団」の傘木宏夫研究主任が懇談会のやりとり、懇談会後の打ち合せなどについて寄稿してくれた。
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| 地球環境基金制度の存廃をめぐって熱心な意見交換が行われた(環境省会議室で) |
特殊法人改革は、小泉行革の目玉のひとつです。今、「原則、廃止または民営化」を旗頭に、政治と行政のかけひきが続けられています。
行政の無駄や利権をなくすことになんら異論はありません。しかし、中曽根行革の際には、国鉄や電電の解体に国民の注目を集めながら、その陰で、国民の財産が切り売りされたり、公害・環境対策や福祉などが切り捨てられた苦い教訓があります。
今回の特殊法人改革においても、公害健康被害補償予防制度や育英会奨学金制度など、いくつかの国民生活にかかわる事業が廃止・民営化のあおりを受けようとしています。
そのひとつに、環境事業団が所管する地球環境基金制度があります。環境事業団の存廃について論じる立場にはありませんが、地球環境基金制度については、発足から8年、年間8億円の助成金と1億円の振興事業(市民大学校など)によって、わが国の環境NGO活動を広げ、強化する上で大きな役割を果たしてきました。行革本部の意見は、国庫の追加補助をやめて、これまでに積み立てた基金(130億円)のみで運営するようにというものです。しかしこれでは、超低金利の下、助成事業は実質不可能になってしまいます。
このような事態を知るに及び、このような環境NGO育成策のリストラをやめさせるための運動を起こさなければと考え、有志の方々のご協力を得て、政府や国会議員などに要請を行ってきました。この要請に基づいて、今回の懇談会が開催されることとなりました。
この日、出席したNGOグループは別記の通りですが、15団体の代表が集まり、環境省側からは総合政策局総務課・青山課長、環境教育推進室・浅野室長ほか、環境事業団地球環境基金部・樋口部長ほかが出席しました。
懇談会は環境市民21の癘{育生さん、クリーンアップ全国事務局の小島あずささんの司会で進められ、
初めに傘木宏夫(あおぞら財団)がこれまでの経過を報告しました。
《経過報告》
公害健康被害救済制度の関係もあって特殊法人改革問題に注視していたところ、地球環境基金も見直しの対象になっていることを知り、平成10年度助成団体報告書に掲載されている団体に情報発信した。その後、有志と相談しながら、要請書(下記参照)をまとめ、70団体の賛同を添えて、首相、行革担当大臣、環境大臣、与野党関係議員に働きかけを行った。そこでは、地球環境基金の存続とともにその改善を訴え、そのための対話を申し入れているが、環境省がその話し合いに応じ、本日の懇談会となった。
続いて、癘{さんから要望事項について概要次のような説明が行われました。
《要望事項》
| * | 各団体からのアンケートと主な要望事項を整理したものが別紙にあるので詳細はそちらを参考に(省略)。 |
| * | 国の責任において行っている助成制度の役割は大きい。これがどうなるのか説明を。 |
| * | 存続だけではなく、よりよいものへの改革が必要。(例:小さいプロジェクト立ち上げへの支援、人件費等) |
| * | 助成金制度がもっと知られる工夫(例:振興事業との連携、国民へのアピール等) |
| * | 評価システムも、NGOとの意見交換をしながら、柔軟なものに。 |
これを受けて環境省、環境事業団から次のような説明がありました。
《環境省側の説明》
〈存続について〉=青山総務課長
*行革本部への回答(別紙=省略)
- 国庫の追加補助はどうしても必要(支援策は不可欠。超低金利下では補助は必須)。
- 外部評価は必要であり、指摘を踏まえて適切に対応する。
*廃止・民営化への回答(別紙=省略)
- 廃止は無理、基金の性格上、公的な主体が責任を持つ必要がある
- 民営化による運営はありえない(国への移管ないし公的法人への移管)。
* 今はまだ観念的な論争にとどまっている。
* 環境省としてはパートナーシップを重視しており、基金は重要な政策手段と認識。
〈改善について〉=浅野環境教育推進室長
| * | 人件費を含めた助成については従来から要望がある。資金確保に苦労されているのも承知している。しかし、基本的には民間団体の活動に着目して、活動費を助成するもの。これを人件費など運営に助成するとなると、団体自体の選別をしなければならなくなり、各団体の自主性・自立性を確保する意味から難しい。
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| * | 小口助成について、助成事業と振興事業をやっているが、情報の提供や研修等を通じてやっている。組織そのものへの助成ではない。振興事業の拡充を図りながら小さな団体の育成に寄与したい。
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| * | NGOを育てていくポリシーについて、パートナーシップは重点課題としている。
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| * | 今後も意見交換の場を設けることについては、1月以降、タウンミーティングや提言フォーラムなどの施策をやっているように、意見交換は重要と考えており、本日のような場は重要なことだと思っており、必要に応じて持つのはやぶさかではない。
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〈その他〉=樋口環境事業団基金部長
| * | 振興事業として「市民のつどい」を取り組んでいる。その場をNGOの活動交流の場として進めていきたい。たとえば、従来包括的にやっていたものを、分野別に開催すなどの工夫について、いくつかのNGO関係者と相談している。
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| * | 助成金の運用改善については、いくつかのチャンネルを持った形で運用の改善を論議していきたい。
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| * | 評価については、行革本部からの意見もあるところ。ある程度の評価案ができているので、この秋にもNGO関係者の意見をいただき、来春から試行していきたい。
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| * | 評価手法も活動分野や形態などのバリエーションを踏まえて展開したい。
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これらを踏まえて以下のような意見交換が行われました。
《意見交換》
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| 意見を述べる環境NGO側代表 |
- 癘{: 事業そのものの評価とともに、それによってどれだけパワーアップしたかを評価することも大事。そういうNGOが増えていくことが大切では。
- 藤村: 人件費に対する助成は管理費に対してではなく、活動に係るものであることの認識を。活動助成というものの一発物への助成が多く、蓄積が考えられていない。何のための助成かというと、持続可能な社会を築く上で、どのようなNGOを育てていこうというポリシーが必要。基金の持つ意義や背景が制度発足当初とだいぶ変っている。
- 畑: 行革本部に出している意見はNGOと共有できるもの。助成内容については、活動助成に限ってみても、活動に必要な事務所経費や人件費がなければできないし、その確保が難しいことがNGO活動にとって重大な障害になっている。例えば、一定割合(例えば10%以内)の人件費等を認めるなどの工夫も必要では。
- 佐藤: 地球環境基金制度はとてもユニークだと思っている。新しい時代のネットワー クを率先してくれたことに敬意を表している。ぜひやめないで欲しいし、世界に誇れるものだと思っている。大臣や首相と話し合う場も設けて欲しい。
- 癘{: はたして小泉首相はこういう制度の存在を知っているのかと思う。知っていれば、こんな方針は出てこないはずだ。
- 小池: 環境省は、国民は何を求めているのか、という立場から胸を張ってやってほしい。そのためにもNGOがどれだけ力を持っているのか、それが国際的な評価基準になるのではないか。それはNGO側の責任が第一だが、政府の姿勢も問われている。これからの政治は、いかに参加型にしていくか、そして参画型にしていくか、そのためにNGOの役割が大きい。行事をやるための人件費はなんとかならないかと思っている。ある程度の弾力性のある運用を。
- 浅野: 事務所経費や人件費の件、事業内の賃金や謝金は対象になっており、上手に生かしてほしい。
- 樋口: そのへんの使い方は皆さんわかっていて、ご意見の趣旨は当該事業にかかる常勤スタッフの人件費であることは理解している。しかし、いくつかの助成金を積み重ねると、その団体の人件費全体をみてしまうことになるのかと、そうすると自発性・自主性の点で問題が生じるのではないか。福祉分野の助成金制度を経験してきたが、恒常化すると、それをあてにした団体運営になる。畑氏の一定枠内の人件費助成という提案はありうるとは思う。
- 藤村: 人件費助成がつくとどうして変質するのかがわからない。NGO、NPOは公益性の誇りをもって活動している。この問題は、NGO活動を付随的なものにするのかどうかの分かれ目だと。もし問題が派生するなら、きちんと評価し、改善すればいい。
- 畑: 世界の助成財団ではすでに終わっている議論であり、前に進む必要がある。
- 樋口: 日本の社会においてはまだ結論がついている問題ではない。
- 青山: 昨今の財政事情という制約もある。これからも議論をしていきたい。
- 畑: 何年も議論してきた。
- 癘{: 各国の助成制度も見てきたが、中には人件費のみを助成しているものもあり事例や実態を紹介しながら、議論していきたい。これからの行革の議論はどうなるのか。
- 青山: まだよく見えない。当初のスケジュールから遅れているが、行革本部の頭の中は8月10日の廃止・民営化の考えが支配的なのだと思う。当面は平成12年度の予算確保が焦点だと思っている(基金の積み上げより)。行革本部は年内に決めると言っている。しかしその方向性は与党内でも見えていない、だれにも予測がつかない。まずは来年度、助成金が確保されることが重要だと考えている。ご支援をお願いしたい。
- 畑: われわれも応援したいと思っている。行革本部にも出していきたい。]
- 癘{: 独自に出していくとともに、情報交換しながら、協働でできることはしていくべき。
- 青山: 単なる行革だけではなく、日本のNGOをどうするという対話をしていきたい。しかし、われわれの側には明確なビジョンがあるわけでない。
- 藤村: ぜひ明確にしていってほしい。
- 小池: 活動をする上で、効果的な時期を教えて欲しい。たとえば予算編成や国会審議とか、動いて効果的なタイミングの情報提供を。
- 畑: 環境省だけではないということを行革本部に示してほしい。
- 佐藤: 超低金利を上げることも運動すればいい。
- 癘{: 今日は議論にならなかったが、振興事業についても、NGOに委託を出すなど、もっとNGOとの連携による事業展開を検討すべき。
- 樋口: 助成事業はNGOからの提案に受身的に対応しているが、振興事業はお願いすると人件費が出る。そこの違いを説明できるようにしながら議論をしていきたい。基金の業務も助成事業と振興事業を分けてやっているが、それも改良を考えている。先ほどから、だめだとばかり言っているようだが、皆さんと議論をしながら、改良させていきたい。
- 瘁@本: これからもこのような議論の場を持っていきたいのでよろしく。
以上のやりとりを行い、NGO側からはなお発言希望がありましたが、予定時間を超過したため、閉会しました。
"地球環境基金の存続求め、多方面へ働きかけよう" 持ちかえり今後の行動提起など確認
懇談会後、有志による打合せを行いましたが、概要次のような確認をしました。
- 短期的課題としての地球環境基金の存続を求める取組みに力を注ぎつつ、その改善についてもNGO間の話し合いを継続していく。
- 環境省としては存続方針においてNGOと同じ立場であることを確認したので、これを励ましつつ、首相や行革本部に対する働きかけを強める。
- 改善のあり方については、今回の懇談会の議論を各団体で持ちかえり、議論していただきながら、適宜行動を提起しあう形で進めていく。
- この取組みは、当面、暫定事務局(小島・癘{・傘木)をコアにしながら、メールなどを活用しながら、ゆるやかなネットワークで進めていく。その後、必要があれば体制づくりなどを議論する。各団体からの積極的な協力を期待する。
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《NGO側出席グループ》(順不同)
よこはま里山研究所/よこはま里山研究所、気候ネットワーク/畑 直之、東京23区とことん討論会/羽賀育子、環境文明21/藤村コノヱ、公害・地球環境問題懇談会/小池信太郎、神戸公害患者と家族の会/井上准、水島地域環境再生財団/塩飽敏史、太陽の会/北村克予、ASAP21/廣瀬稔也、A SEED JAPAN/鈴木亮、すぎのこ文化振興財団/三好幸秀、ICA文化事業協会/佐藤静代、環境市民/癘{育生、クリーンアップ全国事務局/小島あずさ、あおぞら財団/傘木宏夫
《要請先》(それぞれに意見募集コーナーあり)
首相官邸ホームページ http://www.kantei.go.jp
行革本部事務局ホームページ http://www.gyoukaku.go.jp
※なお、ここに行革本部事務局の意見と環境省の反論が掲載されています。
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●懇談会を傍聴して―
蓋を開ければ、NGO側が考え、望んでいることと、環境省の事務当局が考えている方向は基軸としては同一のものだった。
今年、環境省は『環境白書』で「NGOをカウンターパートとする」ことを3本柱の一つに掲げ、我が国の環境NGOを欧米並みに育成、環境NGOの活動を振興する重要性を強調した。その矢先の行革案で、特殊法人改革で環境事業団の地球環境基金制度も国庫追加補助金を全廃するという"衝撃的な案"で、環境省としてはまさに出鼻をくじかれ、「何考えてるの?」という感じを強く持っているはずだ。
近年、ようやく本来の環境NGO活動が顕著になり始めてきただけに、行革本部案がそのまま実行されたら、環境NGO、NPOにとって重要な活動基盤となっている助成金制度が存立しなくなり、これは許し難いというのがこの日のNGOグループの結集となったわけだ。
しかしながら、この日のやりとりを傍聴して感じたことを整理すると―
- その割には出席グループが少ない。
- 「人件費」の解釈にかなりの開きがある。
- お抱えNGOであってはならない。この際、環境NGOの真の自立ということを真剣に考える時期ではないのか。
- 総論賛成・各論反対の図柄がここにもある。
- 事務局活動支援の要請があったが、残念ながらサポーターは現われなかった。なぜ?
―などが、主なところだが、それぞれに事情はあろうが、このへんに今回浮き彫りにされた環境NGOのあり方というか、これからの方向が示唆されているように思われる。要望書への賛同署名は70(団体・個人)とか。この日の出席率は単純に計算すると出席率は21%である。"プレッシャー"としては迫力があるとは言えない。
そして、もっとも気になったのは、懇談会後の打合わせで、暫定事務局から(中央官庁との接触が多いので)東京近辺に拠点を置くグループからの事務局サポートの要請が出されたが、残念ながら積極的な申し出はそこではみられなかった。結局、今後はメール等で連絡を取り合うことで解散したが、厳しい状況の中で勝ち取っていく(この場合は守っていく)わけで、言葉が過ぎるかもしれないが他人任せでは事態は前進しないのではないだろうか。
そして、より大きな課題としては、この種の環境NGO全体にまたがる提言を行う環境NGOの存在が必要になってきているということを改めて感じた。
【司 加人】
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