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「国・県は上告を取り下げよ!」

水俣病関西訴訟・101万人署名運動がスタート
【寄稿(写真も):山中 由紀


水俣病関西訴訟高裁判決を不服として上告した国と熊本県に対して、上告取り下げを求める「101万人署名運動」が無事にスタートしました。最近の動きとあわせてご報告いたします。


=明るい雰囲気、だが原告の医療費問題では緊張感も=

【7月7日(土)】
 夕方から、大阪・天満橋のドーンセンターで、支える会主催の水俣病関西訴訟の決起集会が60人余の参加者を得て行われました。高裁判決の前日集会をやった思い出の場所です。シュプレヒコールこそありませんが、お決まりの献立で、原告団長と副団長の挨拶、弁護士からひとことずつ、医師団からの挨拶、ジャーナリストの宮澤信雄さんの講演、水俣の患者互助会(一次訴訟の時の原告により構成)から連帯の挨拶、支える会から101万人署名ご協力のお願い。高裁判決の前日集会の時と違って、今回は時間が押して押して、最後はとても慌ただしいものでした。

 国と熊本県が上告したとは言え、高裁判決は国と県の責任を認めるものであったため、弁護士の発言は、ひとことずつの割に饒舌で、明るいものが多かったです。が、「原告の医療費がかさんでいるので、なんとかしてくれるように、国と熊本県とチッソに交渉するつもりである。判決でも患者と認められているのだから、当然の要求である。が、弁護団は非力であるから、どうか力を貸してほしい」と金子弁護士が訴えた時には、場内の雰囲気は引き締まりました。私は、自分が何かに巻き込まれた際は、この方に弁護団長を引き受けていただこうと思っています。

 また、高裁判決が定めた認定基準では、原告が提出した二点識別覚という検査を絶対視したため、2名の原告が逆転敗訴してしまったことに対し、医師団から「まさかそういう使い方をされるとは思わなかった」と述べられました。原告の主治医である阪南中央病院の医師団は、一審判決では「信用がおけない」と散々でしたが、高裁判決では「いかに信用できる病院か」という賛辞が判決文に載るほどに名誉を挽回しました。その喜びは、逆転敗訴した原告のことを考えると、複雑なものがあったことでしょう。

 この日の原告の参加者は8人と少なめでした。明日もありますし、前日には阪南中央病院でも集会があったらしく、松原市周辺の原告はこれにも参加していたようですから、まぁ無理もありません。 集会後は、署名活動についての会議をするということで、判決前日集会の時に行った天満橋駅の中華料理屋さんに行ったところ、「今日は閉店しました」とのこと。土日は閉まるのが早いのです。じゃあということで、今度はアイリーンを先頭に「とまり木」という飲み屋へ。20人ちょいで、ここの3階を占拠して、乾杯してからいざ会議。


=署名用紙の形式では様々な意見が…=

普通は謹厳実直な支える会が「なんでもありでいきます」と宣言しているため、「子供向けの署名用紙の趣意書部分は絵でもよい」「外国語版を作って世界の人に署名を求める」「趣意書の部分は各自でどうぞ」「代筆でも良い」と和気藹々。宮澤信雄さんや伊東紀美代さんもノリが良く、喜んでいました。私の近くにいた医師と弁護士は「せめて自分で書かないといけませんよね」とボソボソ言っておられましたが、別に法的有効性を問われるわけでもなく、ボツ。ボーゼンとしていたのは、東京から来ていた久保田さんと鎌田さん。統一書式でやりたかったようですが、彼らは彼らの書式でやればよいわけです。

 この時点で、署名用紙は、久保田さん作と木野さん作の2種類が出来ていました。さて、最終的には何種類出来るのでしょう(笑)。 この日に配布された熊本日日新聞の記事で、署名集めのための全国キャラバンに、水俣の大沢忠夫さんが、反農連の営業を兼ねて、7月5日に折畳み自転車で水俣を出発したことを知りました。7日の集会には大沢さんが来ておられましたから、もう大阪着です。7日は大阪城公園でテントを張って、8日のイベントに参加したあと、京都・滋賀を経て、日本海を北上するそうです。8月は北海道だそうで、「夏の北海道を、どう」と京都の小坂さんを誘っておられました。市大の「公害と科学」の今年の皆勤モグリの中島さんが、「ウチに使っていない折畳み転車があります」ということなので、あとは小坂さんの決断次第??

 また、阪南中央病院の村田医師と大沢さんの間では「何かあったら院長の三浦に、村田を出張させろと電話してください。すぐ往診しますから」「それは安心です。美味しいお酒があるところで、お電話します」「ボクは、あまりお酒は」「じゃあ、美味しい食べ物があるところで。どこがいいですか?」という会話をしていました。


=歌あり相撲甚句あり…水俣病問題を"明るく勉強する集い"盛上がる=

【7月8日(日)】
「川」を熱唱する岩本章・原告団副団長。
伴奏はトゥーヌ・マーヌ楽団
 お昼過ぎから、大阪・芦原橋のリバティおおさかのホールで、「水俣素人の会」が80人余の参加者を得て行われました。歌って踊れる保母の森本さんによると、水俣病問題の素人向けに、原告の慰労を兼ねた歌舞音曲の会をやるという触れ込みでした。事前に綿密な打合せを繰り返し、当日は朝からリハーサルをやっていたようですが、出演者は、地下鉄に撥ねられて両腕を失った障害者歌手、新潟水俣病の未認定患者、関西訴訟の原告7人、奄美大島出身者の演奏、トゥーヌ・マーヌ楽団の河内音頭と、とても多彩。

 水俣病のことを勉強しようということで、宮澤信雄さんの講演と川上さんの話もまじっていました。宮澤さんは15分のところを20分以上話しておられました。川上さんも支える会の庄野さんとの対談のはずなのに、1人で自分の生い立ちを話し続け、提訴の話にたどりついたところで、「現在まで続いているわけです」と自発的に話が止まりました。考えてみれば、実に素人向けで、なんで裁判をしているのかがよく分かったのではないかと思います。話に割り込もうとして跳ねとばされ続けている庄野さんの姿は場内の笑いを誘いましたし、これまた立派な演出だったのかも。結局、庄野さんは署名活動の趣旨説明で熱弁をふるっておられました。

 また、水俣の杉本栄子さんからは「行きたかったけれど、福岡に用事があって行けない。でも魂は一緒にいます」とのメッセージが水俣の海産物と共に寄せられました。患者連合の佐々木会長からは逆転勝訴の祝辞とともに「患者連合も全員が和解の対象になったわけではないのです」と高裁判決で減額された原告を思うメッセージが届きました。当日はゼロになった原告が来ていましたから、ちょうど良かったです。メッセージを読んだ司会は「患者連合の佐々木きよ??」と名前が読めずに詰まっていたのですが、場内の原告が「きよとー」と教える場面がありました。

 新潟の安田大学古典民謡学部名誉教授の渡辺参治さんの歌上手は、今に始まったことではありませんが、つづいて舞台に立った副団長を初めとする関西の原告たちが皆、参治さんに憶する事無く歌ったのに、私は感動しました。伴奏のトゥーヌ・マーヌ楽団の気苦労は大変だったろうと思います。私の隣の川上さんは、最後に相撲甚句をやることになっていたのですが、「この後では、やりにくいなぁ」と言いながら、ニコニコ顔。結局、川上さんは、相撲甚句を二つ披露しました。一つは、控訴審開始を前に市大でやった「ガンバレ!控訴審」の時の「押せば芽が出る 花も咲く」、川上さんの決意をまとめたもの。最高裁でも原告団長を続投するそうなので、その決意を込めたようです。もう一つは、集会に対するお礼の甚句。どっちにしようかと隣で迷っていましたが、両方やるとは!!!

 後ろの席では「こんなに上手いとは知らなんだ。でも、あんまり褒めるとまた調子に乗るから、褒めんとこ」とか「こんなに喜ぶんやったら、カラオケ大会やろうか。歌う?」などと、一審原告団長の長女の恵さんが言ってました。 訳アリだけど前向きに生きている人たちの「隠し芸大会」状態で、大変な盛り上がりを見せました。入場料500円は安過ぎです。なによりも、原告たちがイキイキとして、楽しんでおられました。舞台や場内に踊り子が登場すると、原告も飛び入りで踊り歩いているし(そういえば、支える会の古閑さんまで)、背筋をシャンと伸ばして聴いているし(いつもは、うつむいていることが多い)、十分、慰労になっています。こういう会なら「次は私が歌う」という出演希望者に事欠かないでしょう。

 二次会は、駅前の中華料理屋さん。ここは、「水俣'91 in 大阪」を1991年に今は亡き下田幸雄さんの音頭でやった時に交流会をした、由緒あるところです。今回の中心になった森本さんは、その頃からの知り合いで、地元の大阪市生野区ミニ集会をしていたのが、エネルギーを充填し続けて、今回の大爆発となりました。森本さんが出入りする「きじむなあ」という喫茶店を中心に、かなりの数の「被害者」が出た模様です(笑)。

 この場で、翌日の渡辺参治さんと旗野さんの予定がフリーであることが判明。飛行機は夕方だそうなので、急きょ、次のイベントが出来上がりました。


=木野先生の講義に新潟水俣病関係者が飛び入り"出演"=

【7月9日(月)】
 新潟水俣病の未認定患者である渡辺参治さん(85歳)と支援者の旗野秀人さんのスケジュールが空いているということだったので、私は早起きして宿舎の天王寺都ホテル新館にまでお迎えに行きました。そして、自宅近くの、生駒山の中腹にある、木野さんが非常勤講師に行っているキャンパスへご案内。駅は階段が多かったので、冷や冷やものでしたが、車内では座れたので良かったです。

 授業時間90分のうち、最初の60分は木野先生の講義。今回が最終日で、テーマは「公害と差別」、被害者である水俣病患者はどういう目にあったのかというような話を90分でやるのを縮小。次に旗野さんが、新潟水俣病と熊本水俣病の違い、患者だって24時間病気のことばかり考えているわけではない、我々は「患者はこうあるべき」だと思い込んではいないかと15分講演。残りの15分は渡辺さんが民謡を2曲、ダンボール箱を太鼓にして、自慢ののどを披露するという段取り。

 土曜日から来ていた東京の鎌田さんが、「追っかけ」として自力で大学と教室を捜し当て、遅れて教室に入ってこられましたが、歌声のおかげで迷うことはなかったとのこと。相当、響いていたようです。午前2コマの講義で、これを2回繰り返しましたが、意外に学生の受けがよく、涙が出たという学生や、握手や記念撮影を求めてくる学生まで現れました。上告取り下げを求める署名もたくさん集まりました。

 渡辺さんたちも、大学で歌うことはあっても、講義を聞いたのは初めての経験だそうで、渡辺さんは背筋をピンと伸ばして聴講を、旗野さんはデジタルビデオカメラで録画をされていました。私はデジタルビデオカメラを初めていじりましたが、どうやったら録画できるのか捜し当てるのに20分ほどかかりました。 8日のイベントも録画してたそうです。9日はホテルのロビーに9時半の待ち合わせで、15分前に行ったら、もうロビーに座っておられましたが、朝5時から起きて、昨日のビデオを見ていたとのこと。参治さんは、自分の歌の場面では一緒に歌ったそうです。こういうのも、合唱というのでしょうか?!!


◇   ◇   ◇


忘れてしまいそうですが、メインは上告取り下げを求める署名運動です。現在、署名用紙は、久保田さん作、木野さん作、折衷案のような支える会作があるようです。木野さん作を見てみたい方は、メールをいただければ、添付ファイルでお届けします。PDFファイルに出来れば良いのですが、ソフトはありますが、まだインストールしていませんので、いつになるか分かりません。 以上、激動の3日間のご報告でした。




 
山中由紀(YAMANAKA Yuki)
生命・環境系ドキュメンタリー番組放映情報の案内屋さん
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