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=木野茂著編『新版 環境と人間』=

薬害エイズなど加え6年ぶりにリニューアル
「公害問題」を系統的に知るための格好の書

関西方面ではつとに知られている大阪市立大学の全学共通科目 「公害と科学」 を主宰する木野茂講師の編による『環境と人間―公害に学ぶ』が6年ぶりに新版として発行された。





 近年、「公害問題」を「環境問題」と言い換えることによって、公害問題は終わったという一種のすり替え的発想が顕在化している。それについて、真っ向からNo!と訴えているのが本書だ。
 全体の編集を担当し、自らも執筆した木野茂は「あとがき」で記している。"環境問題と公害問題は切り離せない"、"公害は終わっていない"と。そして、"四大公害事件のように深刻で大規模な人間破壊はもう起こることはなく、地球規模の環境汚染を考えようという意味で「環境問題」をキーワードにしているならそれは大誤解だ"と。さらに、公害研究のほとんどの先駆者たちがそうであったように"公害は現場と被害者から学ぶことが第一"とも。
 このあたりに、新版『環境と人間―公害に学ぶ』の発想が凝縮されている。初版は95年に、編者が大阪市立大学で開講した「公害と科学」のオムニバス講義をもとにまとめたが、新版では初版の6人の著者に改めて書き下ろしてもらったこと、新たに「薬害エイズは今…」と題する花井十伍(大阪HIV訴訟原告団代表)の話しと、原田正純(熊本学園大学教授)の「三池炭じん爆発」を加えた点に新味がある。
 そして、最大の特徴は「水俣病」、「公害と労災」、「公害と行政」、「薬害エイズ」、「プルトニウム」など本書を構成している各章のアイテムやキーワードがいずれも"終わっていない問題"であり、まさに"20世紀の負の遺産"である点だ。本書が発行された4月以降の出来事を追っても、水俣病関西訴訟に対する大阪高裁の「国・県に責任あり」とする判決が出たものの、国と熊本県は上告を決め、決着にはさらに数年かかる状況となっている。
しかし、次から次へと起こる諸々の社会現象は人々の目をこれらの継続問題からそらし、風化させることにつながっていく。そういうことに対する警告がオムニバス形式ではあるが、木野の木目細かい目配りで共通テーマとして底流になっている。
 中でも評者の印象にもっとも強く残ったのは「公害と専門家の責任」(第11章)である。水俣病事件はどのような詭弁を弄しようとも明らかに人為的なミスと極言できる事実経過を淡々と記述している。たとえ「環境問題」にすり替えても専門家の責任は益々重さを増してくる。21世紀を担う若い人たちが「公害問題」について系統的に知り得る格好の書である。著者の一人、原田正純の「(本書を)教科書にしている」という言葉を最後に紹介しておきたい。

【司 加人】



* 発行所:東京教学社
〒101−0061 東京都千代田区三崎町2−10−5  Tel 03−3263−0673      
B5版 236ページ 2000円(本体)