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| ――― あるところに、ご自身のことを海屋であり、地震屋であり、火山屋であるとお書きになっています。そのへんから伺いたいのですが。 | |||||||||
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木 村 確かに、諺には"二兎を追うもの一兎をも得ず"というのがありますが、私は逆に二兎でも三兎でも追えばそのうち一兎くらいは捕まるかもしれないと思うんですよ(笑い)。まあ、専門は海洋地質学ですが。
――― ただ、それぞれがつながっているというか、関連性はありますよね。 木 村 日本ではごく限られた対象をやるのが学問であり、実用的なものあるいは実用に近いものは学問としてあまり高く見られない傾向がある。しかし、誰も分からないことが分かるようになったとか、 誰も知らない法則が隠されていたとかいうことがあれば対象はどんなことでもいいんじゃないかと思いますけどね。本当に日常的な中にあってもいいし、非日常のものであってもいいし…。 | |||||||||
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ヨットで海底移動説を検証したかった
――― 東大に残られてもおかしくなかったのではありませんか? 木 村 その点ではいまだに恩師にお叱りを受けています。今にして思えば汗顔の至りなんですが、実は東大に残れた可能性はあったんです。しかし、なんとかして世界をヨットで一周して、 潜って、たとえばプレート・テクトニクスの研究を自分でやりたい。イースター島なんかはもしかしたら海底都市が見られるかもしれないなどということにはまりすぎてしまったのです。そして目的は太平洋の島の中にはある火山島の岩石をとって年代測定する。 太平洋の西の方ほど古い石があり、東の方へ行くと若くなってくる。それを調べたい。当時、東大海洋研究所に「白鳳丸」という3000トンの立派な船がありまして、それで岩石を採って、海底移動説を検証したいと奈須紀幸先生にお話したら、油代が高くて君のために(船を)出すわけにはいかないと…。 それで思いついたのがヨットでして、それで就職はちょっと待って下さいということにしたのですが、1年経ってもその計画がうまくいかなくて、結局、計画は"中断"ということにして、また奈須先生にお願いして地質調査所へとなったわけです。 ただ、その間は土・日は大体葉山の方へ出まして、土曜日はスキューバダイビング、日曜日はヨットの訓練をしました。自分は訓練のつもりでしたが、はたから見たら遊んでばかりと…(笑い)。金がありませんでしたから、アルバイトしながら苦労してやりました。 それが自分で潜ってサンプル採取するなどのトレーニングになり、今それが役立っています。この点では、恩師の奈須紀幸先生に「ようやく西欧型の学者が現れたな」と言われたのを覚えています。余談ですが、近くに石原裕次郎さんや森繁久弥さんの立派なヨットがありました。 | |||||||||
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―― まず、総論的に先生の中で「環境」という言葉からどういうことをお感じになっていますか。
木 村 私流に言わせていただきますと、環境問題については昨今いろいろ言われていますが、空気から上のことは注目されているものの、それから下のことはまだほとんど知られていないというか、関心がないように思いますね。 空気や炭酸ガスとか水とか、さらにはオゾンホールとかいろいろ言われていますが、 我々の地質学とか海洋学とかの立場から言いますと、水から下というか、足元から下ですね。大事なのに、ともすると、各々の専門家は別として、一般の人たちは普段気がついていないんじゃないですか、というのが一つ。 たとえば、足元から下の話は、一つは土ですね。地面から10メートル足らずの地表でできる土で生命を保っているわけですが、それがとくにここ沖縄ではどんどん赤土として海へ流されてしまっているという状態が憂えられるんです。 | |||||||||
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自然が百数十万年かかって作ったさんごを人間が数十年で壊わしている
海の中の話になると、沖縄へ来て20年過ぎましたが、来た当初と比べると、海の中の汚染はかなり進んでいるといわざるを得ませんね。海水の透明度は悪くなり、さんごの生育も明らかに悪くなったりしています。もちろん、いろんな要素があるのでしょうが…。 これは、海水浴場とかダイビングで潜れる範囲の話ですが、1000メートルから2000メートルくらい下でも割合と汚染されています。どういうふうに感じるかと言いますと、たとえばさんごの問題も、沖縄はさんごの島だといわれますが、ところがそれが地球の歴史から見ると、 ほんとのごくわずか、つい100万年前から後の話で、地表から言うと せいぜい10メートルから20メートルの厚さにあるだけで、それ以前にはさんご礁はなかったんです。1億年か2億年かの地層がそこに見られるんですけどね。それからずーとなくて、そして最近になってきれいな海に成長した。それはなぜかと言いますと、中国大陸からここまで浅い海だったんです。 そこから土砂が流れてきていた。ところが、百数十万年前から琉球列島の西がへっこんで沖縄トラフというへこみができるんです。そうすると、そこに土砂が埋まってしまい、きれいな水だけが琉球列島に入ってくる。それでさんごができたんですね。それが今言ってる琉球石灰岩というわけです。 ですから、さんごというのはまず土砂に弱いんです。100万年かかってできた石灰石が、こんどは人間が赤土を流しはじめた。長期的にはこういう問題がありますね。 ―― 地球温暖化関連はどうでしょう?
木 村 海面変動の問題ですね。要するに、炭酸ガスの温室効果で地球が温まってしまって、表面的には海面が1メートルくらい上がることになるのではないか。そうしたら世界の主要な都市のほとんどがやられちゃうという騒ぎをしていますが、
だけどたかだか2万年前には今の海面が100メートル下がってたんですよ。
それからうんと上がってきて現在になってるんですが、琉球列島の場合は一部ですが、2万年前の海岸が今1000メートル下に沈んでるんですよ。
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―― なるほど、説得力あるお話ですね。ところで、先生の著書を拝見して感じたことの一つに、これまで体制との軋轢と言いますか、齟齬のようなものを感じるのですが…。
木 村 そんな大それたことでなく、要するに真実を知りたい。そして、真実をできるだけ分かってもらいたいというのが私の基本です。しかし、その姿勢を保とうとすると、周辺の抵抗が生ずることがあるのは事実です。ある先輩から言われたことがあります。"真実と事実は違うよ"と。 しばらくの間は理解できなかったんですが、最近、こういうことかと思うようになりました。事実そのものが真実を表わしているわけではない。ですから、事実−我々でいうとデータということになりますが−データがどういう真実を示しているのかということが大事なんだということです。 つまり、真実と思われると自分が確信したものについて述べることに勇気がいるということだと思います。 ―― 20年以上前、なぜ沖縄にこられたのですか? 経歴を拝見すると、東京でおやりになることもあったと思うんですが。 木 村 きわめて簡単な理由です。琉球大学に日本の国立大学でたった一つの海洋学科というのができたんです。まだ海洋地質を専門にやっている人がいないからきてくれというお誘いがあった、招かれたということです。 ―― それは事実ですね、真実でなく(笑い)。 木 村 事実です(笑い)。ただ、来た理由についての自分の心の動きを見れば、海の中の研究ですので、沖縄というのは自分の研究の場に適している面があるということですね。 | |||||||||
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―― 在沖20年。振り返ってどうですか。
木 村 変わってきているのは事実だと思いますね。ただ、自分のテーマ、関心のあることから見ると、その頃から現在まで二つくらいに大きく分けられました。一つは、地震とか火山活動の問題。しかも単なる活動というより予知理論を理論だけでなく、現実にまで持って行きたい。 地震予知ということですね。 もう一つは、沖縄トラフというか海底地質の問題。西側に沖縄トラフというへこみがプレート・テクトニクスにも関係するのですが、どうも大陸が裂けているらしい。そういうことを長くやってきて、最近では地震活動の方は若手の教官も入りましたので、 計測学的に実際の地震計を海底に置いたりして計測データが入りはじめています。ところが最近、もう一つ海底遺跡調査が入ってきます。 ―― 待ってましたという感じですが、海底遺跡はミステリアスの部分とロマンの部分が多分にあり、その神秘性を知りたいという人間の潜在的な欲望をくすぐる面もあるので同じ学問でも非常に楽しいのでなないかと思いますが…。 木 村 そうですね、地震予知よりは楽しいですね(笑い)。ただ、地震にしても海底遺跡にしても経済的にはペイしないという点では似たところがあって、そういう意味では変に汚染されません。研究費も出ません(笑い)。 金を出そうという人もいませんので、純粋に研究ができるという点はありますね。地震という問題は、政府ベースで言えば各省庁で担当をしたり、すぐ予算に絡まってきますね。ですから、行政官庁にいると、どうしても予算を取る方向への研究ということに力が入ってしまって、 真実が曲がってしまう場合がありますね。そういうことからは関係なくこれたわけです。それと、私の場合は一人、木村個人で学説を出すことが多く、団体に依存していませんし、そういうことをバックにしていません。そのため、どちらが真剣かというと、個人の方が真剣にならざるを得ないわけです。 間違ったら「木村がだめだ」ということになりますし、あちらは「○○会がだめだ」で済むわけです。いわばオール・オア・ナッシングですので、こりゃあもう真剣にならざるを得ないわけです。 で、おっしゃるように、来た当時は今より20年若かったわけですし、外面はまったく変わらないつもりですが、内面はますます最近の方がファイトを燃やしているつもりです(笑い)。年をとればとるほど意欲が出てくるというか…。 | |||||||||
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―― 最近、先生少しおとなしいのでは?と申し上げたかったのですが(笑い)。
木 村 いや、昔も今もおとなしいですよ(笑い)。全部自分に向けているつもりですので、他人様には迷惑をかけたくないと思います。ですから、自分の場合、必ずしもお金に関係ないので、スポンサーの顔見ながらモノ言う必要がないので、それが最大の強味だとは言えますね。 どんな研究でもとは言えませんが、理論の裏付けということと関連した仕事にとって一番大事なのは金とかポストじゃなくて、時間じゃないかと思ってんです。 都会に、とくに東京にいたらなになにプロジェクトのリーダーにされるし、また各省庁との予算の折衝という仕事が時間的にかなりとられて忙しい。 オリジナルな研究をしている時間は非常に少なくなっているのではないでしょうか。予算をくれればくれるほど、それに見合った仕事をしなければならないし、消化しなければなりません。 出張にまだ行ってなければ行かなきゃならない。その点、こちらは気楽です。時々、東京へ行って発表してきて、沖縄へ帰ってきて泡盛でも飲みながら、またゆったりと考えると…(笑い)。 精神衛生上はいい。精神衛生上いいということは考える時間があるということです。そのへん、今の都会の先生方はそういう時間がもったいないですから、結果が出るものに対し焦点当てる。 訳の分からないものに対しては、ちょっと横目に見ておいて、訳が分かってからやるという格好になるから、その点、学問に対する喜びということからすると、どちらが嬉しいのか、これはそれぞれの立場にならないと分からないと思いますね。 もちろん、沖縄でも県の仕事とかやりだせばいろいろありますが…。 | |||||||||
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―― 地震は予知できる、とおっしゃってきているし、現にしてきています。
木 村 それは、なんて言いますか、できる方向に努めたい−というのが正確な表現だと思います。誰も予知できると必ずしも分かっていません。
ただ、長期・中期・短期で言うと、たとえば長期予知はある程度できると思います。火山噴火に関しては、三原山の場合は短期にもできました。
時間も予測しましたが、1時間遅れで大噴火となりました。ただ、これは非常にラッキーな場合です。
これからまだまだ中期予知にしても、世界の現状は出発点に踏みとどまっていますね。 これから、もう一度整理されてそこから出発しなければいけないんですが、むしろ地震は予知できないものだという雰囲気が強くなりましたからね。 そのスタート台で議論をしてどうするか。もちろん、できるものはやりたい。専門家の義務ですからね。それはみなさん思っているのですが、やはり予知は難しい。 ただ、みなさん、予知だ予知だというのは直前予知でして、これはやはり中期的・長期的予知がなされていなければ短期的予知も無理なんですよ。 今まではどちらかというと、長期はした、短期はある程度備えたが、その中間が欠けちゃっていたんですね。どうもつながらない。 そういうことで予知連の場合は、「東海」というたった1ヵ所だけで30年間ずっと見守ってきた。じゃあ、他に起こらないかというと、そんなことはなく、いろいろ起こった。 もちろん、東海以外で起こらないとは先生方は言ってません。ここなら予知できるから、まずここでテストケースとしてやってみようということでやっていますが、他で随分多くの犠牲者を出してしまった。 ただ、この間、私はもうここは危ないんじゃないかとは言ってきました。 ですから、そういう意味では「地震は予知できない」じゃなくて、「予知できる地震もある」ということだと思いますし、 予知できないものも「もう少し方策が分かってくればできる可能性もある」ということから考えれば「地震は予知できるものである」ということから出発しないとどうしようもないと考えてるんです。 | |||||||||
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絶対に自然が創造したものではない
――― しかし現に観光資源にしているではありませんか。 木 村 地元にも賛成、反対あるようですよ。いずれにしても、私としては学者として今後も真実に迫っていくだけです。 ――― ますますのご活躍を祈ります。 | |||||||||
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直近でもトルコの大地震とか、国内では神津島など大小の地震が続いている。我々人類は地球が生きている以上、地震との遭遇は避けられないのであろう。 それだけに、なんとか予知して、最低限の被害に押さえる方法はないものかと思わずにはいられない。木村さんの研究活動が"三兎"とも捕らえることを祈りたい。 | |||||||||
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写真提供:木村政昭氏 本ページ内に掲載の記事・写真等の無断転用は一切禁じます。 | |||||||||
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