special report


=内分泌攪乱化学物質= 研究発表会の報告


 : 1998年8月25日、26日

 : 東京国際フォーラム

 : 環境庁国立環境研究所及び科学技術庁研究開発局
 : 三菱化学株式会社・環境安全部・西川洋三

 科学技術庁所管の予算による研究成果の中間発表が中心である。したがって、研究内容は基礎的なものが主体となっている。平成11年度の政府全体の環境ホルモン研究費は74億円、そのうち科技庁予算は19億円で1/4を占めている。日本全体では今回発表の4倍近い研究を行っていることになる。

 参加希望者が800人と多く、400人収容の会場に500人入れたが300人は断らざるを得なかったという。環境ホルモン問題がマスコミに取り上げられる回数は少なくなったが、環境ホルモン研究は盛り上がっている。参加者もレベルの高い人が多かったように思う。

 全体で59の発表があった。そのうち、私の関心を引いた4つの発表について内容と私の感想を紹介する。





(テーマ1) 17β-エストラジオールの分析方法
(発表者) 白石寛明(国立環境研究所)と郷田泰弘ら(武田薬品)の2者
(発表内容)  日本の河川でも、オスの魚にメスしか生成しないはずのビテロゲニン(卵黄になる蛋白)が検出されることがある。すなわち、オスがメス化しているという。その第一の原因は人畜由来の女性ホルモンである17β-エストラジオール(E2)である可能性が高いことが確認されつつある。
しかしながら、現在のE2の分析には次の問題があるという。現在使われているELISA法は感度は良いが、E2以外の女性ホルモンであるエストロンも含めた数値になっている可能性がある。 エストロンの女性ホルモン作用はE2より弱いので、人畜由来の女性ホルモンの寄与を実際より高く見積もっている可能性があるという。
(感想) 河川中の17β-エストラジオール(E2)とエストロン濃度を別々に測定する必要がある。また、E2だけでなくエストロンの魚への影響を試験することも必要である。魚のメス化の原因を確認するのにはまだ時間がかかりそうだ。




(テーマ2)東京湾底泥中の女性ホルモン、ダイオキシン活性評価
(発表者)宮崎章(資源環境技術総合研究所)
(発表内容) 東京湾中央部の底質をサンプリングし、総女性ホルモン活性とダイオキシン活性を測定した。深さ15cm付近で最大値を示し、表層では減少していた。すなわち、現在では減少傾向にあることがわかる。
(感想)化学物質による環境汚染は年々ひどくなっているかのようにメディアは報道している。しかし、実際は改善されているのである。ダイオキシンによる汚染も改善されてきていることをこの発表は示している。もう少し、サンプリング地点を増やしてその傾向を確認してほしいと思う。




(テーマ3)女性ホルモン作用の強さについてのデータ整理
(発表者)片瀬隆雄(日本大学)
(発表内容) 1930年代に英国の科学者である Doddsは、女性ホルモンの作用をもつ化学物質の開発を研究した。そして、合成女性ホルモンとして後に大量に使われることになるジエチルスチルベストロールを、1938年に発見した。 その過程で約40物質に女性ホルモン作用のあることを見いだし、発表している。ビスフェノールAもその一つである。
(感想)どの物質に女性ホルモン作用があるか、最も広く調べたのは 60年前の Dodds氏であろう。まずは Dodds氏の業績を勉強し、紹介することが大切だ。 そんな当然のことを片瀬氏が行うまで、誰もしなかったのは不思議だ。環境ホルモン騒ぎは、先人の研究成果を勉強することなしに、問題と騒いでいるところがある。




(テーマ4)海洋中のプラスティック汚染
(発表者)小城春雄(北海道大学)
(発表内容) 海洋表層を漂流するプラスティック粒子の量は10年ごとに10倍になっているという。最近はさらに増加の速度が速い。1970年代に問題視されるようになり、原材料(レジンペレット)については対策もとられた。しかし、製品破片については有効な対策はとられていない。 近年は東南アジア新興工業国の生産量の著しい増加がある。これらの国では環境対策がなおざりにされているという指摘もある。
(感想)プラスティックスは分解せずにいつまでも環境に残る、いままで海洋中に漏出した累積量が現存する量となるため、漂流プラスティック粒子が急増することになるのであろうか。私は化学物質による環境汚染は改善されていると主張しているので、こういうデータを示されるとつらい。  ただし、プラスティックから化学物質(環境ホルモンを含む)が溶出すると問題視するのはおかしい。溶出量はわずかだし、分解もする。分解しないプラスティック自体が問題なのだ。環境ホルモンと無理に関係つけると、研究全体がピンぼけになってしまう。

以上