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第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
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インターネットが沖縄を変える 厚生省国立医薬品食品衛生研究所 神沼 二真氏



第2部 環境問題と情報技術

 環境問題については現在私が関わっている仕事との関係で、とくに3つのことをお話ししたいと思います。その一つは、今日の環境問題については国際的な取り組みが不可避であるということです。もう一つは、ダイオキシンのような現在大きな関心を呼んでいる環境中の汚染物質についての取り組みです。これについては不安に駆り立てられるような事象は少なくないが、科学的な事実を明らかにすることは難しく、膨大なコストがかかるということです。そして最後が情報公開の重要性です。そしてこれらの課題はいずれも情報技術の進歩と深く関係しています。
 そこで以下の話でも主要なテーマは環境問題そのものというより、環境問題への取り組みにおける情報技術の重要性です。

環境問題に関する国際的な協力の枠組み

 御存知のように1992年ブラジルのリオ・デ・ジャネイロでUNCED(アンセド、国連環境開発会議)が開かれました。日本をのぞく、国連に参加しているほとんどの国のトップが出席したこの会議は、「環境サミット」とも呼ばれています。この会議で21世紀に向けての環境問題への行動目標を明らかにした報告書、アジェンダ(Agenda)21が採択されました ( http://www.nihs.go.jp/GINC/agenda21.html)。その後、各国政府は、国連機関を推進役、あるいは調整役として目標達成の具体的な推進策を作成し、これを実施し、その成果を国連総会に報告するという義務を負うことになりました。
 例えば私が関係している化学物質の安全性問題ですと、アジェンダ21の第19章に行動目標が書かれています。これに基づき、まずスウェーデンがイニシアチブをとって、1994年4月にストックホルムで国際会議を招聘しました。この会議は第1回の国際化学物質安全性フォーラム(IFCS)と呼ばれることになりました。その後各国持ち回りで、本会議が3−4年に一度、その間により規模の小さな中間会合(ISG)が開催されることになりました。本年11月末には、横浜で第3回の中間会合が開かれることになっています。この政府間会議の事務局はUNEP(国連環境計画)、ILO(国際労働機構)、WHO(世界保健機構)、FAO(世界食糧機構)、OECD(経済協力開発機構)、UNIDO(国連工業開発機関)という六つの国連および国際機関の合同調整委員会(IOMC)に支えられています。その事務局が置かれている実際の場所(オフィス)はWHO内にあります。
 すなわち、各国はIFCSという政府間の協議の場を利用して、共通の(国連としての)行動目標や達成目標を設定するとともに、国連および国際機関の調整機能(IOMC)を使って、各目標ごとに各国政府と専門機関が参加する具体的な協力事業を定め、その達成を国連総会でチェックして行くのです。
 第19章の行動目標は次の6つであり、それぞれに推進役(事務局)が定められています。

 A.化学物質によるリスクの国際的アセスメントの拡大と加速
 B.化学物質の分類と表示の調和
 C.有毒化学物質と化学物質によるリスクについての情報交換
 D.リスク削減プログラムの設立
 E.化学物質管理に対する国の能力と容量の強化
 F.有毒および危険製品の不法国際輸送の防止

 この6つの行動目標のうちでも、最も重点が置かれているのが行動計画Aの化学物質の安全性を評価する事業です。その中心となっているのが、国際化学物質安全性計画(IPCS)です。
 この計画の具体的な成果は環境保健クライテリア(Environmental Health Criteria 略してEHC)という科学物質についての評価文書です。これらの文章はすでに200冊近く慣行されています。実は私達の部もこれらの文書の作成に直接関わっています。これらの文書は化学物質の安全性に関する世界で最も信頼のおける文書と言われています。

 そこで私達は、EHCはICSCを日本語に抄訳あるいは翻訳しています。EHCの方は、「化学物質の安全生評価」として、ICSIの方は、「国際化学物質安全性カード」というタイトルで、それぞれすでに3冊が慣行されています。出版社は、どちらも化学工業日報です。
 実はIPCSの活動は、1980年から始まっていましたが、1980年に3つの国連機関すなわち、UNEP、ILO、WHOの共同事業とされましたが、実際に活動の中心になっているのはWHOです。つまり、アジェンダ21の第19章はIPCSの事業を拡大した国際協力であり、IFCSはその支援機構と言うことができます。
 IPCSを構想したり、アジェンダ21第19章の草案を書いたりして、「化学物質の安全な管理のための国勢的な枠組みづくり」を推進した人はスウェーデンのルネ・ロングンです(ルネ・ロングン(松崎早苗訳)、化学物質管理の国際的取り組み、STE、1996)。またWHOのIPCS事業の担当部長であり、IFCSの事務局の責任者を兼任することになったのがベルギーのミシェル・メルシェです。さらにIPCSと並んで今日化学物質安全性に関する最も活発な国際協力事業を進めているUECDの事務局を動かしているのがEU(ヨーロッパ連合)です。もちろん、人材、研究資源、情報資源とも豊富な米国も大きな影響力を発揮しています。

 現在、化学物質に関連した重要な問題は、ほとんどIFCSで話し合われています。例えば、環境中の難分解性の有機物(POPs)の規制やPRTRは1996年3月のキャンベラの中間会合で討議されました。引き続きダイオキシン規制に伴う焼却炉の改善などの問題は、それに続く6月のマニラでの会議で、環境中のホルモン類似物質(内分泌撹乱物質、俗に環境ホルモン)については1997年2月のオタワでの会議で、話題となっていました。これらの会議には、NGOも参加しています。会議の内容も秘密ではありません。ここで提出された資料をきちんとフォローすれば、この分野での国際的な動きや、各国の規制や動向を知ることができます。


自国の規制より国際マーケットでの競争

 もちろんIFCS以外でも、化学物質の安全な管理に関する国際的な話し合いの場があります。とくに海洋についてはアジェンダ21に別の章があります。いずれにしても最近、化学物質の安全性をめぐる国際集会がますます増えてきたように思われます。その裏にあるのは、やはり国経済活動が国境を越えて活発になってきたという事情があります。こうなると、世界市場を相手にしなければならない企業は、自国の規制は甘い方がよいというような考えをもたなくなってきたようです。なぜなら彼らの製品を選別するのは世界のマーケットであり、買い手となったからです。このようにして、行政も、企業も、さらに消費(生活)者も、国際社会の規範を無視することはできなくなってきています。
 このような状況になりますと、化学物質の安全性に関わっている国連機関、国際機関、政府関係者、専門機関、企業、地方自治体、NGO、研究者、市民生活者、消費者などを包括した、「情報提供と情報交換の仕組み」が必要になります。つぎに述べるGINCは、まさにそのための強力なインフラストラクチャーです。



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