swave logo (←home)
環境


TOP
第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
≪BACK NEXT≫


インターネットが沖縄を変える 厚生省国立医薬品食品衛生研究所 神沼 二真氏



どのような分野に投資すべきか

 情報基盤整備のつぎに重要なのは、情報技術の開発です。と言っても、いきなり先端的な情報技術の開発に取り組むというのは非現実的です。より現実的な方策は、まず戦略的に重要な先端技術のユーザーになることです。ここでも、シンガポールやフィリピンなど東南アジアの国々がよいお手本になります。

 わが国は半導体メモリーやテレビ、衛星通信技術において、これらの国々より明らかに先行しています。ところが、若者の携帯電話の使用やホテルで見られるテレビのチャンネルの数においては、少なくとも数年前までは明らかに劣っていました。優れたユーザーは、製品を生産しないまでも、少なくても製品によいアドバイスを与えることはできます。やがて、新しいビジネスチャンスも考え出すことでしょう。
 そういう意味でまず考えられるのは、衛星放送、衛星通信の利用です。これらの技術は、ホテルのテレビの多言語、多チャンネル化、離島などの教育、公衆衛生、医療にも役立ちます。衛星利用技術は、気象予報、資源探査、漁業、地図、地理環境など様々な分野とも深く関係しています。例えば、宇宙開発事業団(NASDA)には衛星データの利用に関して地域と連携する制度があります。こういう制度を積極的に活用するのがよいと思います。
 沖縄の地政を考えると衛星による広域観測データの利用と並んで重要なのは音響探査(ソーナー)などを用いた海洋の探査技術です。海洋探査は海面と海底だけでなく、海中にも必要です。さらに、これらの観測データは3次元的に処理されなければならないでしょう。
 以上の技術は、ソフトウェア技術の区分で言えば地図、地理情報、画像解析、グラフィックス、可視化技術などと関係しています。それらはデザイン、シミュレーションなど他の多くの応用技術と関係しています。技術レベルが高ければ、ビジネスとしてもやってゆけるでしょう。

 つぎに情報ネットワークの活用があります。例えばインターネットに接続された地域ネットワークの応用として、印刷物を各島や村で作成したり、教育、公衆衛生、医療サービス、農作物の流通などに応用することが考えられます。こうした地域ネットワークは、住民が直接利用するとういうより、住民へのサービス提供者が利用する方が効果が高いと言えるでしょう。例えば市町村の窓口、保健所、医師、看護婦、薬剤師、教師などです。
 教育と並んで健康や医療は多くの人々が関心を抱いていますから、情報ネットワークというと必ず健康、医療のネットワークが話題になります。しかし、健康、医療のネットワークは例えば学校教育用のネットワークより格段に難しいことが案外忘れられています。その理由は事業主体がいろいろだからです。また、インターネットと医療というと必ず引き合いに出されるのが画像伝送による遠隔診断です。しかし、先端医療よりも効果が大きいのが、保健、公衆衛生などもっと地味な予防医学に関連した応用です。
 もうひとつ、沖縄で有用なのは工芸や芸術に関連したコンピュータ技術です。これは織物、染め物、焼き物、漆器などと関連した模様のデザインや音楽などに関連した技術です。コンピュータ技術は伝統的な技術を深めるだけでなく、きっと新しい技術を生むヒントも与えてくれるでしょう。
 さらに、21世紀の沖縄を考えますと、ビジネスチャンスは先にあげたようなアジア諸国の経済発展とリンクして捉えることになります。したがって、どうしても多言語への対応を考えておかねばなりません。アジアで基軸となるのは英語と中国語でしょう。そのうちでも、やはり世界共通語としての英語が中心となるでしょう。そこで中国語、韓国語(朝鮮語)、日本語、タガログ語、マレー語、タイ語、インドネシア語、などアジアの言葉はすべてまず英語との互換を考えておかねばなりません。こうした言語の変換に関連した情報技術がこれから進歩することでしょう。沖縄としてはこうした情報技術に積極的に投資するのがよいと思います。

 以上あげたような技術は、沖縄にとって重要な技術です。しかしそれらの技術は地域に限定された技術でなく普遍性もあり、応用範囲も広く、ビジネスとしても大きな可能性を秘めています。私が沖縄の強みに投資すべきだと申し上げるのは、このような意味においてであります。


人材と働き方の重要性

 最後に、以上のシナリオを具体的に進める上で注意すべきことにふれておきましょう。まず、重要なのは、情報技術の振興をマルチメディアとか情報ネットワークというような個別の事業項目としてではなく、すべての地域振興事業とリンクして総合的に考えるという構想力でしょう。これによって、情報投資の無駄が省かれ、投資総額も大きくなり、さらにすべての事業の間に相乗効果が生まれてきます。
 つぎに重要なのは、人材の育成です。ヒトはチャンスが与えられて成長します。この意味で、沖縄の専門家と本土の専門家が計画段階から一緒に仕事をし、双方協力して事業を推進することが肝心です。しかし、そのように仕事を進めるためには、それが可能になる組織がなければなりません。こうした組織は、これまであまり存在していなかったように思われます。このような組織は、財団法人である研究組合、大学の外郭組織、リサーチパーク内の組織、学会的NGOなど、産官学が協力しやすい非営利団体がよいと思います。
 情報技術は猛烈なスピードで進歩しています。技術の進展に伴って当然権威ある専門家もどんどん入れ替わってゆきます。これに対して、情報技術を活用してゆく側の専門家はそれほどでもありません。ですから、できれば流行の技術については、その時々の専門家に聞くことにして、利用者の側に立った専門家の声をよく聞く必要があります。
 現在、科学技術分野では、科学技術基本法の制定、基本計画策定により、研究費が倍増する動きがあります。しかし、こうした研究費を誘導するには、本土の専門家と連携した方がよいでしょう。これは一例に過ぎません。沖縄が抱える多様かつ困難な問題は沖縄だけで解決はできません。とくに国の研究機関や県外の大学とも、うまく連携する必要があると思います。

沖縄における情報基盤の整備

高速通信網の整備
・沖縄を経由した日本、台湾、中国大陸、東南アジア通信線
・科技庁省際ネットワーク延長
・南西諸島への光ファイバー網
・沖縄本島の光ファイバー(CATV )網
・東シナ海域の放送衛星、南西諸島をカバーする通信衛星

高度情報ネットワーク社会の基盤整備
・学校のインターネット接続
・公的研究機関、非営利研究機関のインターネット接続
・M(メガ)ビット専用線による大学、保健、医療、機関、医師会、薬剤師会等のインターネット接続
・ホテル、学校での衛星放送受信
・情報技術に関連したビジネス拠点づくり
・行政の情報改革の推進

戦略的な技術開発課題
・情報(資源)学
  地域情報ネットワーク
  地理、地図システム、地域衛生情報、環境地理情報
  人工衛星による資源探査技術
・食品(流通)情報ネットワーク
・医療保健情報ネットワーク
・国際ネットワークを利用した大学教育、職業教育、生涯教育
・工芸芸術のための情報計算センター(Computing for Art)
・多言語対応技術の開発




TOP
第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
≪BACK NEXT≫