swave logo (←home)
環境


TOP
第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
≪BACK NEXT≫


インターネットが沖縄を変える 厚生省国立医薬品食品衛生研究所 神沼 二真氏



華人ネットワークと英語圏ネットワーク

 東南アジアの経済成長の原動力は、80年代までは日本でした。しかし、現在はアメリカ、ヨーロッパ、韓国、台湾の資本と技術、中国の労働力が台頭しています。さらに、主要なプレヤーとして、華人ネットワークが登場してきました。
 インターネットを始めとする通信ネットワークは、ヒトのネットワークを強化します。インターネットの普及でそれぞれの華人ネットワークは、それ自身強化されるでしょう。それだけでなく、華人ネットワークは欧米の人的ネットワークとの結びつきを強めるでしょうし、当然中国本土の人的ネットワークとも結びつきを強めるでしょう。こうした人のネットワークが、21世紀のアジアのダイナミックな経済発展の原動力となるでしょう (J. Naisbitt, Megatrends Asia, Simon and Shuster, 1996)。
 かつて、琉球王国の繁栄を支えたのは、海上を行く交易ネットワークでした。21世紀の沖縄が繁栄するかどうかは、世界規模の情報ネットワークに接続され、欧米および華人ネットワークと人的なネットワークを結べるかにかかっているのではないでしょうか。

 人的ネットワークということで、もうひとつ注目すべきことがあります。それは、東南アジアにおけるフィリピン、シンガポール、香港、マレーシアなど英語圏の存在と、欧米の留学経験者の活躍です。この地域の政治、経済、エンジニアリングの多くのリーダーは米国やヨーロッパへの留学経験者(学位収得者)です。それに較べると、わが国の場合、とくに政治の分野では米国、ヨーロッパへの留学者が少ないという特徴があげられます。これは、ジャパン・バッシング(アジアで日本の頭越しにコトが進む)の原因のひとつになりうるでしょう。
 沖縄の場合、本土復帰までは、留学制度がありました。占領政策の一環であったこの制度も今は廃止されている上に、海外に学びに行きたいと希望する若者も減っているようです。しかし、これでは21世紀に躍進する東南アジアの中で落後する恐れがあります。できれば若者を米国、ヨーロッパ、アジア諸国に積極的に留学させる制度が望まれます。つまり、世界のウチナンチューのネットワークづくりを、新たに構想しなければならないのではないでしょうか。情報ネットワークは、こうした目的で大いに役立つでしょう。(この原稿を最初に書いた翌日の新聞、朝日新聞11月12日の夕刊に、首相が知事に毎年10人程度の若者を大学院へ国費で留学させる計画を提案した、という記事が出ていました。私は官民協力して、もっと幅広く、もっと多くの人を大学に限らず派遣すべきだろうと考えます。)


シンガポールに学ぶ行政の情報改革

 現在、行政改革は時代精神となっています。しかし、行政改革と並んで重要なのは行政における情報改革でしょう。1992年2月、私はWHOの短期コンサルタントとして化学物質の安全な管理を目的とする情報ネットワークの構築を指導するためシンガポールに1週間ほど滞在しました。招いたのは環境庁でしたが、環境庁以外にも、労働省、中毒情報センター、消防庁、港湾局、国立シンガポール大学などを訪れました。その時、すでにシンガポール政府は行政目的のコンピュータ・ネットワークやインターネットを導入していました。
 こうした情報ネットワークの積極的な導入と英語を公用語とし、責任あるポストにいる官僚の若いことが、私に強い印象を与えました。日本の行政府も情報技術を活用する体制に積極的に転換していかなければならないと、その時強く感じました。これが後に「第3の開国、インターネットの衝撃(紀伊国屋書店、1994年)」という、インターネットによる日本の情報開国をテーマとした本を書く動機となりました。
 シンガポールもそのお隣のマレーシアも、かつては「日本に学べ」を合い言葉として、国づくりに努力してきました。しかし、いまや日本こそ情報基盤整備に積極的に取り組む姿勢をシンガポールやマレーシアに、学ばなければならなくなったのではないでしょうか。 

その他の国々:台湾とベトナム

 言うまでもなく、台湾は沖縄と最も近い「外国」であり、人々の往来はいつも活発でした。台湾の人々は、第2次世界大戦後の困難な政治状況をよく克服しながら、いまや着実に自立への道を歩んでいます。その原動力となっているのが米国への留学経験がある有能な人材です。彼らは政治、経済、技術開発などの分野でリーダーとして活躍しています。現在の台湾政府の先代である国民政府は対日戦略、続いて対共産戦略を背景とした米国との強い絆がありました。今は、シリコン技術を背景とした絆が強まっています。それが活力ある台湾経済を支えているように見えます。
 私は1971年にはじめて、沖縄本島に3日、台湾に1週間ほど立ち寄ったことがあります。当時と較べると2つの島とも、大変近代化されました。このうち物価が桁違いに上昇したのは、もちろん台湾の方です。それは経済発展の結果です。現在、東南アジアの国々は金融危機に見舞われていますが、台湾はそうした影響をほとんど受けていない、例外的な存在です。

 沖縄が、台湾の地理的な近さと、経済のダイナミズムに眼をつけるのは当然です。また台湾の人々が、香港返還後の中国への貿易の中継基地として、沖縄に注目するのも当然でしょう。そこにFTZ構想が重なり、マルチメディア振興策が重なるのも当然でしょう。台湾は沖縄のよいパートナーでしょう。
 ところで、私がいろいろな意味で日本の、とくに沖縄のよいパートナーとなるのではないかと考えているもう一つの国があります。それは、ベトナムです。その理由はいくつかあります。東南アジアの中でもベトナムは最近まで交流が難しい国の一つでした。この事情が変わったのはベトナムが開放政策に転じた80年代末からです。それ以後、日本との関係も急速に深くなっています。

 ベトナムも沖縄も激しい戦争を経験しており、その後遺症は今も続いております。また、地政学的に中国という大きな圧力に対峙せざるをえない位置にあります。亜熱帯としての気候にも植生にも共通性があります。南北に長いという地理的な特徴も共通しています。美しい海岸と照葉樹林をもっていること、沿岸海域に油田が発見されており、その資源開発には国際紛争を招く恐れがある点でも似ています。ベトナムの人々、とくに北ベトナムの人々、は大変勤勉であり、2000人の研究者を擁する17の優れた国の研究所群、頭脳集団を擁しています。したがって情報技術、環境健康問題、植物資源開発、海洋資源開発、環境観光(エコツーリズム)などに関して、沖縄とベトナムはよいパートナーになれるのではないでしょうか。




TOP
第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
≪BACK NEXT≫