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第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
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インターネットが沖縄を変える 厚生省国立医薬品食品衛生研究所 神沼 二真氏



沖縄の地政学的な特徴

 インターネットで代表される情報技術革命は、当然沖縄にも大きなインパクトを与えるだろうと思います。言い換えれば、情報技術革命が新しい機会、可能性を沖縄にもたらすだろうと考えることができます。
 分散した多くの島々からなる沖縄は、本土から地理的に離れています。それゆえ、例えば情報ネットワークの活用を考えるのは、ごく自然であります。また、言うまでもなく沖縄県は、先の大戦で甚大な被害を受けたうえに、戦後は長期にわたり米軍の占領統治下にありました。現在も、米軍基地のために土地が強制的に使用されています。地域の自立的な発展を妨げている要因があまりにも多く、他県との間に格差があり過ぎます。そこで、地域振興として、流行のマルチメディア産業を育成するというのも、誰もが考えつく方策の一つでしょう。
 しかし、情報技術を基盤とした沖縄県の振興を考えようとするなら、問題解決という消極的思考ではなく、沖縄の地政学的な意義を考慮にいれて機会を探すことが、大切ではないでしょうか。つまり、沖縄の「問題」に囚われるのではなく、むしろ「強み」を探してみるという思考です。
 まず、地図で南西諸島全体を見れば、沖縄県(と奄美大島など)によって、我が国が人口の割に領土権を主張できる広い海域を確保できていることが理解できます。しかも、この海域とその位置は地政学的に極めて重要であります。

 沖縄(本島)の軍事戦略的な重要さは、先の大戦に本土防衛の捨て石にされたことで証明されています。現在は、我が国だけでなく、アジア太平洋地域全体の安全保障から見て重要な場所になっています。このことは、ベトナム、フィリピンから撤収した米軍が沖縄に極東戦略のための基地機能を統合したことで証明されています。しかし、沖縄のわが国にとっての地政学的な重要性は軍事戦略的なものに限りません。とくに注目すべきは、東アジア諸国の急速な経済発展と中国、台湾、北朝鮮をめぐる外交的な緊張であります。
 東アジア諸国の経済成長は、この地域を世界の成長センターたらしめています(ジェームズ・アグレマン(山岡洋一訳)、東アジア巨大市場、TBSブリタニカ、1994年)。現在、これらの国々では、自然環境の破壊、汚染物質の排出、エネルギーと食料消費の増大が急激に進んでいます。その結果、我が国では、国境を越えてくる酸性雨や、沿岸海域の汚染、水産資源の減少、食糧輸入条件の悪化に脅かされるようになってきています。
 外交的な緊張要因としては、国家体制に不安のある北朝鮮と、中国の問題があります。もしかしたら、北朝鮮の問題は近未来になんらかの決着がつくかもしれません。しかし、増大する中国の影響力に起因する緊張は、着実に大きくなるような気がします。とくに、独立を模索する台湾、南沙諸島および尖閣諸島の領有権など、南シナ、東シナ海域あるいはその隣接地域で常に緊張があります。したがって、東アジアとの交易に関する限り、進貢貿易の昔と違って本土は沖縄地域をバイパスすることができます。しかし軍事、資源開発、環境問題に関しては、沖縄の地政学的な重要性を無視することはできません。すなわち、我が国にとって、沖縄は軍事的に重要なだけでなく、資源開発や環境問題、東南アジアとの外交においても重要な地域なのです(ガブリエル中森、日本が戦場になる日、KKベストセラーズ、1998年)。残念ながら軍事以外の地政学的な重要性は、これまであまり取り上げられてこなかったように思えます。

 例えば、沖縄地方の動植物の多様性は、自然の遺産の消失が全世界的に急速に進行しつつある現状を考えるなら、保全するに値する貴重な国の文化であり、人類共通の資産であります。さらに、沖縄県の文化的特異性は、マスメディアによる文化的な画一化が進んでいる我が国においては、とても貴重な存在です。
 以上のような沖縄県の地政学的な特徴と文化的特性を「強み」、あるいは「機会」と捉えて、情報技術を如何に活用するかを考えてみるのがよいのではないかと、私は思います。


地域振興政策としての情報基盤の整備

 インターネットを始めとする情報技術を活用するためには、なによりも情報基盤(インフラストラクチャー)の整備が必要となります。これにはハードウエアの整備と、それを使いこなして行く利用環境の整備が基本になります。
 まず、ハードウエアの整備としては、沖縄を経由した本土と東南アジア諸国との海底ケーブルの敷設、南西諸島の島々を結ぶ海底ケーブルの敷設に加えて、通信衛星を利用できる環境整備が望まれます。現在景気回復を狙った平成10年度の補正予算で、全国の学校や病院への光ファイバーの敷設が論議されています。沖縄および南西諸島でとくに重要な基盤整備は、通信衛星をつかったインターネット回線でしょう。これに関しては、衛星から受信するだけならコストも安く、広く普及させられるのではないでしょうか。衛星へ送信する装置はもっと高価ですが、商業ベースのサービスもすでに始まっているので、ぜひ考慮してみるべきでしょう。

 つぎに、利用環境の整備としては、非営利の研究情報ネットワークの利用環境の整備が重要です。具体的には、文部省の学術情報ネットワークと科学技術庁の省際ネットワークの利用環境づくりです。とくに、後者はまだ沖縄まで専用線が伸びていませんので、南西諸島にある公的な試験研究機関はその実現を要請する必要があります。大学の整備と同じで、一般にこうした基盤整備においては、沖縄を九州にくくってしまう傾向があります。同様な思想は、先に発表された国土整備計画(全総)にも見られます。沖縄を九州地域にくくる発想は間違っています。むしろ南西諸島を全体として捉えるべきでしょう。インターネットなら、こうした現在の行政区分に捉われず、台湾から九州に到る南西諸島全域を一つの社会圏、文化圏として情報交換することができます。
 いづれにしても、非営利のネットワークの整備が基盤整備としては非常に重要です。なぜならこうした利用料金をあまり気にしなくても良い情報通信基盤が一度整備されれば、研究、教育、健康、医療などの実験プロジェクトを一気に進めることができるからです。

 この他にインターネットや情報技術として世間で話題となるのは、ビジネス応用、マルチメディアによる娯楽などです。しかし、そうした分野は放っておいても民間会社が積極的に取り組んで行くでしょう。実際FTZなどとの関係でそうした可能性を説く人は少なくありません(例えば、大川功、予兆、東洋経済新報社、1996年)。したがって、私がとくに言及するまでもないでしょう。そこで私は、情報技術によって形成される国境を越えたネットワークについて考えたいと思います。




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