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第1回「沖縄」と「環境」を考えるセミナー講演録
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インターネットが沖縄を変える 厚生省国立医薬品食品衛生研究所 神沼 二真氏



第1部 沖縄の発展と情報技術

情報技術が世界を大きく変えようとしている

 今日の情報技術は、コンピュータと通信技術を基盤としています。コンピュータ技術は、シリコン半導体の集積技術を基盤としています。


 この技術は、大容量の記憶メモリーや高速の演算回路をチップと呼ばれる極めて小さな装置で実現することを可能にしました。これによって、文書だけでなく、画像や音もコンピュータで扱えるディジタル(マルチメディア)技術が急速に進歩しました。通信技術も、コンピュータ技術によって革新されています。また地上では光ファイバー、空では人工衛星を利用した大容量の信号伝達方式が普及しています。
 こうした技術の進歩によって、コンピュータとくにパソコンはますます高性能で安くなりました。またこれまで別々であった電信電話とコンピュータ間の通信が、すべてディジタル方式となり、区別がなくなりつつあり、ディジタル通信ネットワークに接続されるコンピュータが急激に増加しています。近い将来には、これに放送が融合すると予想されます。
 こうした情報技術は、職場に浸透して仕事のやり方を変え、家庭に進出してテレビを変え、テレビゲーム(ファミコン)やCDプレーヤーのような新しい娯楽機器をもたらし、医療のような社会サービスを変革しています。もちろん、行政も政治もNGOの活動も大きな影響を受けています。情報技術のこのような社会へのインパクトは、これまでは段階的なものでした。しかし、最近は革命的な様相を呈してきています。それは、インターネットが一般に解放されてからのことです。

情報革命の中核はインターネット

 インターネットについては、すでに皆様よくご存じかも知れません。ここではごく簡単に復習しておきましょう。インターネットはコンピュータを結ぶネットワークの1種です。コンピュータとコンピュータを結ぶ方式は沢山あります。インターネットが採用しているのはTCP/ IPと呼ばれる通信手順、すなわちプロトコルに基づく方式です。しかし、TCP/ IPに基づくネットワークも沢山存在しています。インターネットはそのうちのひとつですが、世界で唯一しかないネットワークでもあります。したがって、英語では定冠詞付きでザ・インターネットと呼ばれています。
 言ってみれば、インターネットは会員制のクラブのような存在です。クラブの会員は会員番号をもらいます。会員番号は、会員を識別する重要な情報です。同じように、インターネットに接続されているすべてのコンピュータにも、会員番号に相当する識別番号が与えられます。これがIPアドレスです。インターネットにつながっているすべてのコンピュータは、IPアドレスを手掛かりとして、お互いに情報を交換することができます。  
 さて、コンピュータには、さまざまな情報が記憶 できます。文書はもちろんですが、図形や写真、映像、音、音楽などディジタル化できる情報、つまり数字で表現できる情報は、すべてコンピュータに記憶しておくことができます。また、それらの情報は、ひとつのコンピュータから他のコンピュータに容易に転送することができます。
 もちろん、動画つまりアニメーションやビデオのような大量の情報を高速に送るには高速ハイウェーのような大容量の通信回線が必要です。しかし、こうした条件さえ整っていれば、例えばアメリカと日本というように遠くに離れていても一瞬の間に文書や絵などをコンピュータからコンピュータに送ることができます。
 問題は、それぞれのコンピュータが他の人にとっても有用な情報を載せているかどうかです。また、載せているとしても、誰もがそれを容易に利用できるようになっているかです。普通、コンピュータから情報を引き出すには、パスワードが必要です。けれども、インターネットのクラブでは、むしろパスワードなしで、どうぞお使い下さいとなっていることの方が多いのです。
 もともとインターネットは大学や国の研究機関の研究者や技術者達の仲良しクラブのような存在でしたから、こうした解放的な文化が育ったのです。

インターネットの普及は新しい社会をつくりだす

 1993年に米国に登場したクリントン政権は、大学や研究者のものだったインターネットを、民間にも解放しました。時を同じくして、ワールド・ワイド・ウェッブという技術が開発されました。ワールド・ワイド・ウェッブはWWW(ダブリュ・ダブリュ・ダブリュ)あるいは単にウェッブと呼ばれます。ウェッブとは互いに結びあったクモの巣の糸を意味します。WWWとそれを利用するためのパソコンのブラウザーと呼ばれるソフトウェアを使うと、インターネットに接続されたコンピュータの上に置かれている情報を、マウスのクリックというやさしい操作だけで、簡単に取り寄せることができます。WWWの登場によって、インターネットは、文字通り地球を覆う巨大なクモの巣のような、情報のネットワークに変身したのです。
 クリントンの解放政策とWWWの技術が同じ時期に登場したのは、全くの偶然でした。しかし、この偶然によってインターネットは爆発的に発展することになりました。インターネットは僅か1、2年の間に大変身して、世界中に爆発的に広がりました。
 重要な点は、いまやコンピュータだけでなく、電話、放送などあらゆる情報技術が、インターネットを意識して開発されるようなってきたことです。インターネットの急速な普及が社会に与えている影響は、まさに革命的です。
 インターネットが開く未来社会の特徴を一言で表現すれば、「情報と知識が解放された社会」となるでしょう(H.G.ウェルズ(浜野輝訳)、世界の頭脳(原著1932年)、思索社、1987年)。これまでの社会では、情報や知識は少数の限られた人のものでした。それらは、大学の研究室や図書館、研究機関のデーターベースや報告書、学術論文、役所のキャビネットなど、一般の人に近づきにくいところにしまわれていました。しかし、いまやこれらの情報や知識は誰にでも手にいれられるようになりました。ながらく縛られていた情報と知識は、いまや解放されたのです。
 こうした社会を人類はまだ経験したことがありません。この意味で、ことによると私達は、数百年に1度、あるいは数千年に1度というような、人類史的な大変革期に突入してると言っても過言ではないかも知れません。
 ただし、こういう見方はまだ少数派です。多くの人は、インターネットをマルチメディアやパソコン通信の延長あるいは類似技術と考えています。また、なにがビジネスになるか血眼になっており、そうした意味では電子マネー(ディジタル・キャシュ)に関心が集まっています。もちろん電子マネーが使われ、ネットワーク上で金融の取引や、買い物ができるようになるなど便利にはなるでしょう。当然、巨額のブラックマネーの浄化(ローンダリング)も国境を越えてネット上でおこなわれるようになるでしょう。
 こうした変化は、多くの新しいビジネスを生むでしょう。しかし、社会としては今とあまり違いがないような気がします。これに対して、情報と知識が解放された社会は、現在の日本の社会とは質的に違った社会になると思われます。どちらの見方が正しいかやがてはっきりするでしょうが、今はこの問題にこれ以上立ち入らないことにします。いずれにしても、大きな変化、大きなチャンスが押し寄せていることには変わりはありません。



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