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《 21世紀の環境管理−PRTRの日本における進展 》 三菱化学 監査役 樋口 敬一氏



本日の私の話は、主として化学物質の管理をどうしていったらいいだろうということに着目して、 PRTRという、いってみれば汚染物質を大気や水や土壌や、外に移す場合、登録をする、そしてそれを 公表するということを制度化しようという機運が高まり、かつ議論が具体的に行われつつありますが、 そういうことを踏まえて化学物質の管理がどういう方向になっていくのかということを中心にお話 させていただこうと思っております。 産業界がいま化学物質の総合管理についてどんなことをやろうと しているかをご理解いただき、少しでも皆さんのお仕事の参考になれば幸いに存じます。

=なぜ化学物質の総合管理が重要なのか=

最初に、化学物質の総合管理の重要性についてご理解いただきたいと思います。
率直に申し上げて、過去、有害物質の事故がありました。そういう事例に学んで、国際的にも国内的にも取り組みが変化してきました。その事例として、OECDがPRTRの実施勧告というものを出し、各国政府は99年2月までに自分の国のPRTRのやりかたについて報告する義務を課せられておりまして、そういう状況と欧米の状況について後段で触れたいと思います。
そこで、化学物質の総合管理ということですが、全ての化学物質にはなんらかのハザード(有害性)があります。ただ、それにはまだ未解明のものが多いのも事実です。したがって、全ての化学物質は、適正に管理されることが必要なのです。人間の胃袋以下は見事な化学工場です。しかし、化学物質が入ってくればなんらかの影響が生じます。しかも未解明な部分が多い。しかし、それじゃ全ての化学物質をなくしたのでは私たちの生活は成り立ちません。いかに安全に付き合っていくかが肝要であり、そのためには適正に管理されることが必要だということを申し上げたいのです。そして、化学物質は広範囲の産業分野で用いられる基礎素材ですから、研究開発→製造→加工→消費→廃棄のライフスタイル全般にわたってそのリスクを管理することが重要なのです。ただ、化学物質は5万から10万という膨大な数です。個々の化学物質に着目した管理対策には限界があり、場合によっては不適切でもあります。

=化学物質にも光と影がある=

ところで、化学物質と我々の関係においては昨今かなりの誤解があります。一例をあげましょう。まず砂糖です。昔は健康食品といわれ、ケーキやジャムにどんどん入れました。ところが1960年代にはいろいろな病気の犯人にされた。72年には「純粋で純白の悪魔」という本が出て、すぐにも使用禁止すべきだという主張も出された。その後83年にはロンドンの王立医大が国民の砂糖摂取量を半分にすべきと勧告、しかし、86年にはアメリカのFDAが砂糖の作用を徹底的に調査した結果、砂糖がいろいろな病気の主犯だと考える根拠はないと断じています。要は、世の中何事にも光と影があるように、化学物質にも光があり、影があるのです。すなわち、砂糖の場合、甘味料としての光と、採り過ぎはカロリー過多になり、肥満→高血圧・心臓病・虫歯の元になるという影があるということです。

=アスピリン、いま申請したら認可されず?=

アスピリンにも同じようなことがいえます。この薬は、みなさまご存知のようにドイツのバイエルという会社が100年以上前に開発していますが、鎮痛作用をはじめかなり広範囲に効果があるとして広く使われてきました。が、最近ではウィルス感染症の子供が飲むとレイ症候群(重い脳障害)になったり、胃炎になったりするともいわれています。最近の医薬安全性審査は厳しいので、いまアスピリンを認可申請したら副作用(胃炎)が強いということでおそらく認可されないだろうといわれています。



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